箏未経験の箏曲部部長
高校の頃の部活は箏曲部を選んだ。
私が箏を目にしたのは高校に入学し、部活紹介で先輩が舞台の上で弾いている時だった。
あぁそんな楽器があるのか、私の大好きな和ものだしこれなら未経験者が多いはずだから見学に行ってみよう。でもほかに気になる部活もないしこのまま入部してしまおうかな。
こんな感じで軽ーく見学に行って、隣のクラスの子と顔見知りになって、先輩たちの雰囲気も同級生の入部者たちもいい人ばかりだったから入部した。
この時点では私が箏を見たのは人生で2回目だし、触ったこともなかったのによく入部を決めたなと今なら思う。
幸い小学校時代に軽くではあるが沖縄三線を経験していたことからリズム感、チューニングの感覚、音階については知識があったため一緒に入部した他の未経験者よりは少し呑み込みが早かったみたいだった。
そこから高校時代で私が箏曲部で得た経験は何にも代えがたく貴重なものだった。
ひとつひとつ、楽しかったことをあげたいくらいだけどいくらでも出てきてしまう。キリがないから自分が部長になってからのことにしよう。
なんと私は未経験で入部し、経験者の同級生がいたにもかかわらず合奏に意見をするような部長という大役を受けてしまった。
私は自分が演奏しながら全体の音を聞いて、ここが違う、これをこう直したらいいと判断しそれを伝えて改善するよう意見することができた。これができるのは同級生では私と経験者の子だけ、後輩ではのちに部長となった一人だけだった。
私の同級では6人の個性が強い女の子たち、後輩は大人しそうに見えて実は癖のある女の子5人。
慣れない後輩への指導、同級生へ意見する心苦しさ、週一回来てくださる先生とのコミュニケーション、今年から始めて顧問をする先生との兼ね合い。
特に合奏面では私はいっぱいみんなに言ったし、みんなもそんな私の言ったことに忠実に従ってくれて、誰も私のことを厭わず最後までついてきてくれた。
気を使うことはたくさんあった。でも、全部が全部楽しかった。
私の代では近畿音楽祭出場への切符、審査員からの高評価、先生に繋いでいただいたおかげでその時演奏した曲の作曲者さんからの直接指導、そして私の文化奨励賞と、様々なものを残せた。
もちろん私だけの力ではない。そもそも部員のみんなの演奏技術が高くて、練習もまじめに取り組んで、先生の指導が良くて、運が良くて。いろんなことが積み重なった結果だと思う。
でも私はあの曲者だらけの箏曲部メンバーをまとめ上げて、近畿大会出場の切符を手にしたことを誇りに思わざるを得ない。
あれは確かに、私の努力でもあったから。