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2020年5月の記事一覧

インソムニアのともだち

身体が火照って眠れない夜
両側から顔の下へ手を入れて
一つ、二つ、三つ、四つ、冷たいつるりとした感触を弄ぶ

愛を知らない私の枕は
綿ではなく
羽でもなく
白い碁石がつめられている

碁石は清潔な硬さで
私の理想の死の姿

自分の歯の滑らかさを舌で確認しながら
碁石と碁石を噛み合わせ
朝になったら
私の身体は蒸発して
丸く研磨されていた歯は碁石と混ざり合い
明後日には質屋に売られて
いつか運が良け

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星の放流

こんばんは(こんばんは)
静かな夜ですね(月がいないんでね)
波も全然たっていないですしね(灯台守も今夜は熟睡しているでしょうね)
それはなんですか(これは星の子です)
獲りにきたの?(いえいえ、放しにきたのです)
お仕事ですか?(いえほんの道楽です)
ずいぶん数が減ってるみたいですものね(自然に消えたものも多いし、いまでは死ぬ人がほぼいないのでね)
死んだ人が星になるのですか?(人魚は違うのです

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人魚と水心

あなたの瞳の中で泳ぐ魚はなんですか
小さな波をたてて臆病そうに泳ぐそれは

故郷の海にそれは返せるものなのでしょうか
邪魔だといっているのではありません
そんな我儘は言いません

どうか目を伏せないでください
あなたの美しい虹彩のゆらめき

名前をつけているのですかそれに
誰にも発音できない名前を

故郷の家にはまだ電話は通じるのでしょうか
いえ何も用はないのですが
あなたと過ごしたテトラポッドの

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