完璧主義な私の子育て
昔から完璧主義だった。
間違いは許されない。
学校のテストや問題集は母が定期的にチェックした。
少しでも間違えていると怒られる、
「なんでこんなのも分からないの。」
「なんでこんなのもできないの。」
習い事のバレーボールでもミスした時、声が出ていなかった時、帰りの車の中で徹底的に詰められた。
私は間違えてはならない。
中学のテストであと1つで満点というところで間違えて教室で泣いた。
負けず嫌いで完璧主義。
勉強でも部活でも間違えないように、完璧であるように、何をするにも用意周到になった。
テスト前は1日10時間は勉強した。
周りの友達はすごいねと言いながら多分引いていた。
部活だって誰にも負けたくない。
休みの日も休まずに1人で練習した。
おかげで受験やテストは1度も失敗することなくストレートで受かってきた。
部活だって常に先生や周りの友達にはその努力を認めてもらえた。
時にはうまくいかない時ももちろんあったが、そんな時もなんとか立て直し、転ばないようにしてきた。
私は失敗することはない人生。
完璧。
そう思っていた。
それが覆された。
育児で。
育児は。
一筋縄ではいかなかった。
もちろん子どもが生まれる前も子育てがうまくいくように用意周到にした。
暇があれば本を読み、動画を見た。
臨月には大きなお腹で毎日ファミレスやカフェに行き、子育ての本を読みながらノートにまとめた。
授乳、おむつ替え、肌の管理、離乳食など付箋をたくさん貼った。
大丈夫。
初めての子育てだけど、これだけ準備していればなんとかなる。
なんとかならなかった。
寝かしつけについて勉強していたのに、調べたことを試しても一つも効かない。
明け方まで寝てくれない。
乳児湿疹が出ないように事前に調べていたのに、努力の甲斐もなく湿疹は出るし、しかも病院に行ってもなかなか治らない。
授乳についても調べていたのにまさかの母乳だけでは体重が増えない。
離乳食も初期から幼児食まで徹底的に本を読んだのに食べることが嫌いらしく作っても一口も食べてくれない。
あんっっっっっっっっっなに調べたのに?
何一つ教科書通りのことが起こらない。
基礎問題がない、応用問題だけの激ムズテスト。
日に日に疲れていった。というか衰弱した。
ずっと部活は体育会系で体力には自信があると思ったのに。
小さい体なのに赤ちゃんは体力とパワーが凄すぎてついていけない。
そうこうしているうちに下の子が生まれた。
これがさらに子育て鬼ハードモードへの入り口だった。
ミルクを飲まない。
赤ちゃんはミルクを飲む物ものだろ、調べる以前にそれが普通だと思っていたけど。
なのにこっちがどんなに頑張っても飲まない。
焦った。
このままじゃ死んじゃう!!
本気でそう思って泣いた。
いい加減にしてよ!!
新生児相手に怒鳴りつけた。
けど、それでも飲まない。
ノイローゼまっしぐらだった。
さらにさらに離乳食も食べない。
どんな味付けにしても、どんな形状にしても、誰があげてもとにかく食べない。
今まで数十冊と子育ての本を読んできた。
ミルク拒否、離乳食拒否について書いてある本は私の記憶には1つもなかった。
教科書にはないことが毎日起こる。
私は毎日、泣いているか怒っているか。
上の子にはとうとう「ママいつも怒ってる。」と言われるようになった。
子は飲むのが嫌いなのに無理やり哺乳瓶を突っ込んでミルクを飲ませる。
子は食べるのが嫌いなのに無理やり口をこじ開けて食べさせる。
無理やり飲んだり食べたりさせることで、ようやく本に書いてある1日の摂取カロリーや栄養が摂れる。
けど、これでいいのか?
確かに教科書通り。
教科書通り進めれば問題はない。
けど嫌がる子どもを押さえつけて黙らせてまで教科書通りに進めるのが正解なのか?
もう分からなかった。
自分を信じるのは怖い。
子どもを信じるのはもっと怖い。
間違えたくない、完璧でありたい。
なのに、それとは正反対のダメダメな自分。
それから1年が経ち、下の子は1歳になった。
上の子も3歳になり、よく喋るようになった。
上の子は口癖ができた。
「まちがえちゃった⭐︎」
とよく口にする。
「ご飯食べてる時に立ち歩かないよ。」
「まちがえちゃった⭐︎」
「野菜残さないでね。」
「まちがえちゃった⭐︎」
注意したらいつもコミカルに、「まちがえちゃった⭐︎」と言う。
それがなんとも可愛くて、癒されて、そして大事なことを私に教えてくれているような気がした。
ある時、私が保育園の着替えのパンツを入れ忘れたことがあった。
家に帰ってきてから娘に、
「ママまちがえちゃった?」
と聞かれた。
「・・・うん、まちがえちゃった⭐︎ごめんね!」
と初めて言えた。
その時はっとした。
こんなに抵抗なく自分の間違いを認めていいのか。
というか、間違えてもいいのか。
完璧でいなきゃ、間違えたらダメだと思っていたけれど。
完璧でいようとするより、あっさり間違いを認めて生きた方が何倍も楽に生きられる。
そう3歳の娘に気付かされた。
もしかしたら私の子育ては間違いばかりだったかもしれない。
子どもが嫌がることをして、拒否しているもの無視して、教科書通りに進めようとした。
まちがえちゃった⭐︎
と間違いを認めて修正することにした。
無理やり食べさせるのをやめた。
無理やり飲ませるのもやめた。
教科書に載っていないことをするのは怖い。
だけど、子どもを信じてみることにした。
するとびっくりすることが起きた。
無理やり食べさせるのをやめてから自ら食べたいという意思を示すようになった。
少しずつ食に興味が出てきた。
保育園の給食も少しだけど食べるようになってきた。
もちろん食べムラはあるから食べない日もあるけど、そういう日もイライラすることがなくなってきた。
怒ることも泣くことも無くなった。
そういう日もあるよね、そう言えるようになった。
完璧主義はやめること。
間違いはあっさり認めること。
子どもに教えられた、
そしてそれらは意外と簡単であることを知った。
今も日々の育児に苦戦はしている。
なかなか私の完璧主義を治すのは難しかった。
ただ以前より間違うことに寛容な自分もいる。
どんなに予習していても、努力していても、完璧にはこなせないどころか、予習したことがかすりもしないことも多い。
育児は、子どもは、変化球ばかり投げてくる。
きっと、だからこそ面白いものでもあるんだと思う。
よく「可愛い時期は一瞬で過ぎるから、今の可愛い時期を目一杯楽しんで。」と言うけど、正直楽しめるほどの余裕は全くない。
だけど後から見たら、あの時可愛かったな、あの時面白かったなということもたくさんある。
それでいいんだと思う。
それがいいんだと思う。
今は余裕がなくて必死な毎日を懸命に過ごしたいと思う。
時に「まちがえちゃった⭐︎」と言いながら。
負けず嫌いで完璧主義な私は人より生きづらい部分もあるけれど、ときに子どもに教えられながら生きていく。
子どもを信じて、子どもと共に前に進んでいこうと思う。