サカナはあぶったイカでいい理由
代弁者だという自覚や覚悟があるからここまで歌ってこられた。
自分のことや自分のエゴを歌おうとしたら多分ここまで歌ってこられなかったでしょうね。
(八代亜紀)
八代亜紀が亡くなって、夕方、テレビで歌が流れて来て、つくづくこの人、うまい人だったんだなと思った。
生きている時はいつでも聞けると油断してたのかな。
そもそも演歌は嫌いなジャンルだし聞かないか。
いや、もうここに居ないと分かっているから、この1回性に耳をそばだてたんだろう。
ああ、、ほんとにうまい人だったんだ。
と、今更ながらうまいねと、かのじょに話してみると、いつかテレビで言っていたという。
「彼女はね、歌うとき想いを込めないと言ってたわ。
歌は聞き手毎に受け取り方が違うから、歌い手が想いを込めてしまってはいけないと言ってたの」
提供側が色をなるべく付けないようにして送り出し、みなさんで楽しんで欲しいという話をしてたという。
「それって、かなり歌う技量が無いと言えないよね。
歌唱力がイマイチだったら、なんとか想いを込めがんばる。リキムし、熱演してがんばっちゃうよ。」
かのじょ、コックリとうなずいた。
と、わたしの人生に何か苦いものを感じ始める・・。
そういえば、この手の話は前に聞いたような・・・と頭の中をグルリ見回した。
そうだ!、とても有名な書の人が言っていたんだっけ。
個性はどうしたら出せれるのかと聞かれこんなようなことを答えたんだ。
わたしは毎日毎日、ひたすら先人の手本をマネします。
半端な数じゃなくて、とんでもなくマネをする。
個性をできるだけ消して、ただマネてマネてマネます。
個性を落として落として行って、それでも消せずに残ってしまうのが個性というものだと思います。
だいたいそんな話だった。
八代亜紀も書の名人も、基本レベルは抜きん出ている。裏でする練習量はすごいでしょう。
そして、個性や想いを出さないようにして差し出す。
味わってもらうという謙虚さがすごいんだ。
名人に成り損ねる者は、抜きんでようとリキミ、演出してしまう・・。
机に戻って、ネットを見ていると、好まれる話し方みたいな本が出ましたとあって、その紹介欄にはこう書かれていた。
「自分語りをしない。あなたは?と聞かれでもしない限り、自分のことは絶対話さないことが大切です。」
たしかに、話していてなにかと「僕は」「僕は」と、僕のことばかり話したがる人はつらい。
そんな人と話すと、自分の番は永久に来そうも無いし、ようやく来たとしてもこちらの話を聞いてもらえそうもない。
相手を応援したり共感したりする気が完全に萎える。
確かになぁ・・と納得したまでは良かったのです。
突然、なぜ自分の文章が長くなるのかに気が付いて、愕然としてしまった。
引用もしますからね、5000文字になることもいっぱいある。
1つの塊を書いているうちに、次々と書きたいことが出て来て、塊を追加して行く。
あっという間に芋ずるクンが巨大な雪だるまクンになる。
ぱらぱらと書き続けることは苦にならなかったのです。
他者の文章を読む時は、もちろん長文は辛いと思うくせに、じぶんの文章は平気で長くしてしまってる。
読み手の気持ちを思い遣れないのは、長男に生まれたせいかもしれないとか思ってた。
あるいは、長くいろいろ書いてしまうというのは、きっとこれがわたしの会話に相当するんだろうと思ってた。
かなり一方的な会話なんだけれども、苦にせずずっとなぜか読んでくださる方もしるんだし。
わたしはあなたに聞いて欲しいのだと。
いや、これが会話だとすると、まさに先の話が当てはまってることに気が付いた!
ああ、、わたしはじぶん語りが大好きなんだ、あちゃぁ・・・!!!
世界のトップセールたちを一時期調べたことがあったことも想い出した。
ベンツを月に、数台じゃないんですね。30台、50台と売れて行く。
でも、セールスは自分のことどころか、車の話もしなかった。
量販店のトップセールスは、口下手な人で、自分のことどころか、聞かれないとまったく何も話さない。
にもかかわらず、日本一売れて行く。
彼らは顧客のこころを掴むことだけに集中していました。
お客さんがのびのびと心開けるようにと工夫していた。
売るのでも歌うのでも書道家も、演出や介入はできるだけ落としていたっけ・・・。
自分の考えや想いなんて親の仇以上に抹消してたんだ。
ひとえに、相手の為に。
ガーンと鐘が108つほど一度に頭に鳴り響いた感じと言えば伝わります?
わたしはもう記事が書けなくなった・・。
穴があったら入らねば。もうだめです。
と、すぐにこんなふうにちゃらちゃら書いているのだから、
嘘ではないのだけれど、しばらく旅に出てきます、みたいな気持ち。
かなりほんとに。
P.S.
2,3か月もしたら旅先から絵ハガキぐらいあなたに出せれるようになるかもしれません。
隠岐の辺りまでたどり着いて、そこの宿に泊まったらお酒いただくんです。
「お客さん、酒のつまみ、何がいいかね?」
で、わたしさらりと答える。
「ああ、あぶったイカでいいよ。」
ちょっと低めのしぶい声で哀愁利かせていう。
そしたら、宿のおかみが言うんですね。
「今年はねぇ不良でね、数が出回らないから、かなりお高くなっちゃうよ。」
で、わたしすぐに訂正する。
「あっ、すいません、アジの干物なんかありますか?」
テレビから流れて来る歌に合わせて91歳のお義母さんがふんふんと口ずさんだ。
お互い九州だもの。
おもえば遠くに来たのです。
ご冥福をお祈りいたします。