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【書籍】「1秒24コマのぼくの人生」りんたろう監督の自伝バンドデシネ

日本を代表するアニメーション監督りんたろうさんの自伝がバンドデシネ(漫画)としてフランスで出版され、その日本語訳版が昨年12月に出たので発売日早々に購入、年末に読んでいたのでその感想などを綴りたいと思います。


こちらの漫画まずサイズが大きい。また256ページでボリュームもすごい。

比較としてA6ノートとペンを置いてます。
うちの次男坊とぼぼ同じ大きさ


バンドデシネってアート本な扱いなので装丁も美麗で素敵なものも多いですが、日本語版も原書に近い感じで出版されたんですね。これはすごい。
しかも目の手術をして小さい字や絵が見えにくい私としてはとってもありがたい大きさです。
ただ重いので持ち歩いて外で読むとかは出来ないですねw

存じ上げなかったのですが、りんたろう監督ってこんなに漫画を描かれるんだ!という驚き。経歴から作画などはされていたのでしょうけれど改めてびっくりしました。

そして、内容的にりんたろう監督の人生が戦後日本のTVアニメ、そして劇場アニメの歴史そのものでこれは非常に貴重な伝記書になるのではないでしょうか。


そもそも何故フランスで日本人クリエイターのりんたろう監督の自伝本が出版されたのでしょうか?
もともとフランスとは過去にアニメーション制作で繋がりがあり、そしてフランスのプロダクションからりんたろう監督の自伝を3Dアニメ映画にしたいと発案があったそうなんです。
ところが長編アニメは非常に時間のかかる制作になりますし莫大な予算もかかります。そこで映画の内容をバンドデシネで描いてみないかと提案されたそうなんです。
しかし、りんたろう監督が子供の頃の記憶をたどりながら自身の半生を200ページ以上描いたのですからバンドデシネでも大変な作業です。実際のこちらの本も完成まで6年がかかっているそうです。
・・・ということは近い将来長編アニメ版も見られるのかしら(期待)


さてバンドデシネの内容ですが・・・
戦争の為に疎開した話からはじまり
父親の影響であこがれていた映画の世界
中学生の頃に手作りで幻燈機を作成し自作の紙フィルムで映画を制作
虫プロ入社から手塚治虫先生との出会い
モノクロからカラーの時代へTVアニメ制作を担ったのちに劇場アニメの999を監督
角川で初のアニメーション幻魔大戦を制作、監督
そして2001年のメトロポリスの公開まで
本の中で始終たばこの煙をくゆらせながら進んでいくりんたろう監督の人生は、読んでいて本当にワクワクしました。


本の中盤から後半は、私の子供の頃と完全にオーバーラップした時代背景です。
昔は全部作画を一枚一枚アナログで行っていたんですもんね。
そういえば小学生の頃、友達のお母さんが内職でセル画の彩色をしていてすごく興味があってよく見にいきました。

本の中で、虫プロがやっていたTVアニメを「電気紙芝居」と呼んで馬鹿にしてきた東映動画との確執が面白かったです。
当時では考えられなかったように、学歴がなくても才能のあるりんたろう監督を採用した手塚治虫先生は今考えても本当にすごいです。

それから驚いたのがTVのアニメ連載をしている当時から既に海外のアニメスタジオに業務委託していたんですね。知りませんでした。

あの頃から業界は超ブラックだったと思います。
りんたろう監督は漫画の中でその様子を描いていますけど、あの業界に限らず日本企業の70年代80年代のブラックぶりは今の若い人には想像つかないかもしれない。
あの時代、社会全体がバブルに向かっていたから仕事は忙しいけれどお金もちゃんと回っていて、なんだか夢や希望が溢れていたんですよね。

いいこともわるいこともあった時代でした。


「劇場版銀河鉄道999」を劇場で見たことも覚えてます。
「東映まんが祭り」も見ましたけど、999は子供心に映像の美しさに圧倒された記憶があります。TVアニメ版よりも哲郎やメーテルがきれいでしたしねw

それからなにより私は今も昔も「幻魔大戦」のアニメーション映画の大ファンなので、本の中で大好きな映画の制作の裏側を読めて本当に感動しました。
「アニメなんだからうんと可愛く描いて」と言われても、キャラクターデザインの大友克洋さんは「かわい子ちゃんなんておれ描けないな」といって女戦士にかわい子ちゃんは不似合いと切り捨てたという話がわらっちゃいました。
大友さんの作品も大好きです。年代としては「童夢」(これまた大好きな漫画)が出版されたころと同じなんですね。
今あの映画を観返してみると、え?こんな感じだった?と思ってしまうところはあるんですが(笑)それはもう今のアニメと比較してしまうと昔はCGなんてない時代、全て手描きと手作業であのファンタジックな映像を作ったと思うと製作スタッフの苦労が目に見えるようです。

そして
子供の頃の映画体験って、映画自体だけでなくあのころの自分の感動も一緒になって思い出させてくれるから尊いですね。
今となってはノスタルジーに浸り自己満足でしかないですが、私にとってはとっても大切な映画の一つが「幻魔大戦」なのです。

この本、是非私と同じ世代の方に絶対読んでもらいたいなあ。
共感する事間違いなしです。
私は普段あまり日本の漫画を読まないのですが、グラフィックノベル(アメコミ)やバンドデシネは好きで時折読みます。なので左開きで横書きの今回の本も違和感はありませんでしたが日本の漫画読んでいる方はどうなんでしょうか。
でもさすが映画監督といいますか、コマわりがドラマチックで作画のアングル(?)がとてもいい。線画はコントラストがはっきりしていて見やすくとてもきれいですよ。
大満足のバンドデシネでした!

最後に
大阪にある海外マンガ専門ブックカフェの「書肆喫茶mori」さんのYoutubeで今回の本を丁寧に紹介しておられる動画がありますので下記にリンクを貼っておきます。是非ご覧ください。




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