【映画】「ロボット・ドリームズ」 最後3分で号泣!時代や世代を超えて愛されるアニメーション
今年のオスカーで長編アニメーション映画賞にノミネートされていたスペインとフランス合作のアニメーション「ロボット・ドリームズ」を観てきたので感想を綴りたいと思います。
映画について/ネタバレなし
映画はアメリカの作家、サラ・バロンによるグラフィックノベルを原作として、スペインの鬼才パブロ・ベルヘルが初めてのアニメーションに取り組んだ作品になります。
パブロ・ベルヘル監督の日本公開作品は「ブランカニエベス」。どこかで聞いたことあるなと思ったら日本の配給会社さんと当時私が仕事で関連があったのでそれで知っていたのでした。現代版白雪姫が闘牛士になるというユニークなダークファンタジーになっています。
「ブランカニエベス」もサイレント映画でしたが、今回の「ロボット・ドリームズ」もセリフはなく音楽とNYCの生活音で構成されています。
セリフがないので、海外アニメーションを観るうえでネックになりそうな字幕を追いかける必要もなく映像に没入出来ます。また使われている音楽が舞台である80年代の音楽だったり軽快なジャズだったり、それだけで当時のNYCを体感できるような気がしました。
映像は、とてもシンプルな2Dアニメーションが基調となっています。
監督曰く、グラフィックノベルと映画「ロボット・ドリームズ」の視覚スタイルは「リーニュ・クレール」に由来しているそうです。「リーニュ・クレール(Ligne claire)」とはフランスやベルギーにルーツを持ち、「タンタンの冒険」の作者エルジュによって広く知れ渡るようになった漫画の描画スタイルです。太さが均一な輪郭線と、陰影を持たないフラットな色彩が特徴となります。
また、コミックがそのままアニメーションになったように意識してディープ・フォーカス(手前から奥まで広範囲にピントを合わせシーン全体をクリアにみせる手法)が取られているそうです。
それからなんと、ストーリーボードと非常に緻密なアニマティクス制作に一年以上をかけていてプリプロにこれだけの歳月をかけるのが本当にアートとしてのアニメーションだなと思いました。(下記メーキング動画参照)
監督が原作のグラフィックノベルにリスペクトしているのを感じつつ、アニメーションとして最高のクオリティ作品を観ることが出来て本当に幸せです。
サラ・バロンが一人で一年をかけてグラフィックノベルを描きあげた原作をパブロ・ベルヘル監督は60人以上のアニメーターと数十人のスタッフ、音楽家たちと共に5年を費やして「ロボット・ドリームズ」を完成させたそうです。
そ、そうだよね、年月もマンパワーもそのぐらいかかるよね 汗
映画館であっという間の1時間42分だったけど、こういう制作の裏側を知るとますます愛おしくなるのがアニメーションの良さなんですよね。
そして、ああ、わたしもいつかこんな素敵な、人も自分も感動できる作品が作れたらいいなと思いました。
あ、そうそう、公式さんから映画音楽のPlaylistが出てます。
オリジナルジャズも本当にステキ。途中のお花のタップダンスのところはまた聴きたくなりますね。
さて、後半はネタバレありのあらすじについてと感想です。
あらすじと感想/ネタバレあり
映画の舞台は80年代のニューヨークシティ(NYC)。
擬人化された動物たちが暮らす世界で、まだスマホもインターネットもない時代です。なので主人公のドッグはテレビショッピングを見て固定電話から注文をします。
一人暮らしで寂しかったドッグが注文した商品は組み立て式の友達ロボット。時代は古いけれどここだけは近未来なアイテムが出てきます。友達ロボットは単に遊び相手になるだけでなく頭で考え、リアルな他の動物(擬人化した動物)と変わりません。
ドッグとロボットがNYCのあちこちで楽しむ姿は見ていて本当に楽しいです。
80年代のニューヨークって当時の私にとっては憧れでした。テレビや映画でしか知ることが出来ませんでしたが、カルチャーもファッションもアートも全てが魅力的でした。実際ニューヨークの映像スクールに本気で留学したくて調べたりしていた時期もありました。(家庭の事情で夢はかないませんでしたが)
その反面、当時のNYCって治安が最悪だったんですよね。やっぱり海外って怖いなというイメージもありました。
ドッグがロボットとセントラルパークでローラースケートするところが素敵でした。アース&ウィンドファイヤーの「September」に合わせて二人が踊る姿は、映画のエンディングまで見た後このシーンを思い出すとこみ上げるものがありますね。
それからドッグの部屋の壁にネイサンズのホットドック早食いコンテストの写真があるんですが、ロボットはこの大会で優勝したんですね 笑
このコンテストと言えば日本人のフードファイター小林尊さんが有名ですよね、あちらでは日本人と言えば小林さんというぐらい有名人というのを聞いたことがあります。(今はどうか分かりませんが)
昔大食い早食い番組よく見てたなあ。。。
夏になり二人はオーシャンビーチ(コニーアイランドビーチがモデル)で海水浴を楽しみますが、なんと海水でロボットは錆びてしまい動けなくなってしまいます。ロボットの体は沢山の鉄部品で出来ていて小さなドッグは持ち上げることが出来ません。
ロボットは目配せで「僕を置いて帰っていいよ」と言います。
ドッグはしかたなくその日は一人で帰宅。次の日、修理部品やらを持ってビーチに行ったらなんと夏が終わりビーチは来年まで閉鎖されていました。
あの手この手を使ってビーチに侵入しようとしたドッグですが不法侵入で警察にまでつかまってしまい、悲しいけれど来年まで待つことにしました。
ビーチで錆びて置き去りになったロボットはドッグの元へ帰れる空想をします。これがタイトルになったドリームズです。
ロボットの夢はとてもハッピーなんですが、最後にはまた横たわる砂浜=現実に引き戻されてしまいます。
セリフがないし、ロボットの表情からも伺うことが出来ないですが夢の終わりがロボットの寂しさを表現していてとても悲しかったです。
ドッグはといえば、また一人になってしまった孤独感に耐えられません。
ダックという友達に出会いまたあちこち一緒に遊びにいきます。
公園で凧揚げをするシーンがあるんですが、すごいびっくりしたのがゲイラカイトが出てきたんです。
これ~、子供の頃持っててよくこれで凧揚げしに行きました。この目玉が特徴的だよね。
ある日突然ダックと連絡が取れなくなり心配していると、なんと活発なダックはヨーロッパに移住していなくなってしまいます。
ロボットは友情を裏切らないけれど、人間は裏切るんだよね。(ここでは人間=擬人化した動物です)
そうこうしているうちに置き去りロボットは鉄くず回収業者に浜辺から引き上げられ鉄くず工場に売られてしまいます。工場でロボットはバラバラにされてしまいます。
鉄くず工場にやってきたラスカル(アライグマ?)はバラバラのロボットの一部を買い取り自分で組み立てなおします。胴体はラジカセというちぐはぐな体でしたがロボットはふたたび息を吹き返し、ラスカルの友達ロボットになって楽しい日々を取り戻します。
翌夏、オープンの6月1日にドッグがビーチに行くとそこにロボットの姿はありませんでした。
またまた寂しくして仕方ないドッグは街でディスカウントされていた別の友達ロボット、ティンを買います。
ドッグとロボットはそれぞれ友達ができました。
そしてそれぞれ新たな楽しい日々を沢山過ごすようになりました。
ある日、住まいのアパートの屋上でラスカルとロボットがバーベキューをしているとき、ロボットは通りでドッグを発見しました。
嬉しくて駆け寄りたかったロボット。
ところがドッグのそばには新しいロボット(ティン)がいました。
それを見て動揺するロボット。でも振り返ると今優しくしてくれるラスカルが自分の分までバーベキューをしてくれています。
ロボットは選択に迫られたのです。
そのとき、ドッグとダンスした「September」がロボットの体から流れます。次の場面ではロボットがドッグに駆け寄り、ドッグとロボットが楽しそうに手を取り合ってくるくる回る姿が映ります。
ですが、これはまたしてもロボットの夢、でした。
実際はロボットは屋上にとどまり、ドッグの姿を目で追うだけでラスカルの元へ帰っていくのでした。
ドッグは思い出の音楽が聞こえた(のか空耳なのか?)ので辺りをきょろきょろしますがロボットの姿は見えず、心配そうなティンを見て気を取り直しまた二人で仲良く歩いて行ってしまいました。
この最後のシーン、ほんの3分ぐらいなんですがもう涙が止まりませんでした。
それぞれお互い違う人生を歩み出した二人。
あの頃に戻りたくても、もう自分の隣には違う存在があるんです。
ここ、音楽「September」の歌詞が浮かんじゃうよね。。。
「覚えてる?9月21日の夜のことを~、」ではじまる愛の歌でサビ部分が過去形なので昔を懐かしむ失恋の歌かなと思っちゃいますよね。(実際は失恋の歌ではありません)
このサビ部分が季節も違うし恋人と友達は違うんだけど、不思議と曲がヒットした時代背景と相まって映像とリンクするんですよね~。
あの頃に戻れたら
と誰しも思うことってありますよね
でも自分と大切にしてくれる人が今傍にいるなら「あの頃」はやっぱりもう過去でしかないんですよね。
いい思い出にすることが自分にとっても、そして離れてしまった相手に対しても「やさしさ」であるような気がします。
途中までドッグとロボットの友情と楽しい日々を描いたファンタジーアニメーションかと思いきや、最後の最後でかなり衝撃食らいました。
これ
子供向けじゃ全然ない
むしろ
傷ついた経験のある大人が見るべき映画だと思いました
NYCという大都会で孤独に生きているドッグやラスカルの生活も時代を超えてすごく共感を覚えるだろうし、そのうち本当にAI搭載の友達ロボットが人間と一緒に街を歩いたりする世界がやってきてもおかしくないですよね。
だって、人間は裏切るけどロボットは裏切らないから。
傷つきすぎた人間にこそ友達ロボットが必要になるかもしれません。
下記画像は映画館でいただいた先着プレゼントのカレンダー(右)と購入したパンフレット。
パンフはパブロ・ベルヘル監督のインタビューとプロダクションノートが豊富に掲載されているのと、映画に出てくる80年代のNYCを代表するアイテムのキーワード紹介やら、映画に出てくる動物ニューヨーカーのキャラクターが一人一人載っていたり、NYCマップが観音開きで印刷されていたりでかなり情報満載なので是非手に入れて欲しいです。
「ロボット・ドリームズ」是非沢山の方に観てもらいたいなあと思いました。
私的に「ロボット・ドリームズ」評価は★★★★★でした!