感想文第二弾「FACTFULNESS」
感想文。前回は演劇だったんで今回は本です!
とは言ったものの。書店の目立つ位置に置かれていたり、何かと紹介されていたりで、今更感のある本なのですが、著/ハンス・ロスリング「FACTFULNESS」について内容については最小限に、思ったことをまず書いていきたいと思います。
世界について、10の本能と戦うためのすべを教えてくれるこの本は、おそらく読んだ人の八割に新しい風を送ってくれる素晴らしい書籍です。
本題ですが、この本の一番の特徴。というか……押さえておかなければならい部分は、この本が一人の天才によって書かれたものではない。と言う事でしょう。
もちろんどんな書籍も一人の人間によって世に出ることはないのですが、FACTFULNESSは著者の名前が連名となっていて、一人では書ききれなかった。と言う事が強調されているような印象を受けました。
実際に、それぞれの強みと、経験から得られたデータを元に、世界の誤解と戦っていく様を描くような内容で、一つ一つの気づきを得ながら、そのストーリーにも感心することができます。
世界について、自分の住んでいる国について、社会について、そして周りのコミュニティーについて……
簡単な思考で、実際よりも複雑に考えている人も多いように見える今日この頃ではありますが……それについて、観測できるデータを元に成否を自分で判断しよう!と思ったことがいかほどあっただろうか?と僕は改めて考えさせられました。僕らの生きている世界について、もうちょっとだけしっかりと知ってそれから考えていこうと、読んだ人の誰もが思ったのではないかと思います。
あとは読み終えてから感じた他の学術本等との違いとしては、「今すぐ考えましょう」「明日から実践しましょう」と言う即時性を促す言葉があまり使われていないところです。
よく、読者へ即時行動を促す本は多いですが、そこがない。特に社会問題を取り上げたものは、常に即時性を求める傾向がある(『今』起きている問題を描いているわけなので当然なのだけど)。だけれどFACTFULNESSは明日から考え方を変えようとは言わない。思いついたとき、もう一度読み直して。また自分が何かのフィルターに覆われてきてしまったと感じたら、と人間が抱え込むバイアスを否定せずに、自然に向き合おうと、たまに立ち止まって考えようと、寄り添ってくれるような印象を受けた。
あくまでデータを元に現状と過去の比較、現在の世界各国の比率や傾向等から話を進めている為、思想に置き換えてしまうと、時にリベラルであり、時に保守的であったりと、どちらのバイアスで読み取っても納得できない!と感じる方もいるかもしれない。ただ、そういう人にこそ読んでほしい。
世界は思想ではなく、現実の事象によって動いていて、それこそが人類が共存していく為の第一歩になるかもしれないから。
最後に個人的には、まとまったデータで示されると一見矛盾しているように思うことも、細分化して適切に扱うことで一つの事実が見えてくるという部分に触れ、『タオイズム』の重要性についても改めて考えさせられました。
最近偏っているな?と思ったときに是非に読み返したい一冊です。