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感謝の賞味期限は短い。だから私が気をつけていること。

ポワロの言葉


わたしは普段、クラシック音楽のブログを書いていますが、音楽を離れると、ミステリーが大好きです。

それもちょっと昔の海外のもの、ジェレミー・ブレット主演のシャーロック・ホームズやジョーン・ヒクソン主演のミス・マープル、それからデヴィット・スーシェ主演の名探偵ポワロのシリーズが大好きです。


その名探偵ポワロの作品のなかで、“ 感謝の賞味期限はとっても短い ”というセリフが出てきます。


この一言は、まさに至言だと思って、テレビで観たときにすぐノートに書きつけました。

わたしはよく人生に迷ってしまう人間なので、指針となるような言葉、心に残る言葉はメモするように心がけていて、言ってみれば『名言ノート』というようなものを、もう何年も前からつけています。



マザー・テレサの言葉


そう、たしかあのマザー・テレサも、そうしたことをシスターたちに話していたのをドキュメンタリーで見たことがあります。

「今日、みなさんがだれかの命を助けたとしましょう。その人は、その瞬間は、とっても感謝してくれるかもしれません。でも、次の日になったらどうでしょう?そんなことはすっかり忘れられてしまいます。やがて元気になれば、まるで何ごともなかったかのように、その人は何も言わず、どこかへ行ってしまうでしょう。でも、気にしないことです。毎日、良き行いをしていきましょう。」

そういった内容のことを若いシスターたちに、ユーモラスに伝えてらっしゃいました。


いのちを救うというレベルの感謝であっても、すぐに感謝されなくなるということ。

私たちの日常での感謝の賞味期限なんて、それこそ、あっという間でしょう。


デール・カーネギーの言葉


きっと同じルーツを持つと思われる話が、私が愛読している本、D・カーネギーの『道は開ける』のなかにもあります。


Amazon D・カーネギー『道は開ける』(創元社)

カーネギーは、キリストが10人の病を癒したときに、お礼を言ったのはたった1人でほかの9人は逃げ去っていたという『聖書』の話を引用しています。

カーネギーは、「一般の人間である私たちが、キリスト以上の感謝を他者に期待することなどできるだろうか」と述べ、他人に「感謝を期待する」のではなく、「与える喜び」そのものに満たされるようにと説いています。

これも至言だと思います。


私がぶつかったブログの壁


さて、冒頭にご紹介したとおり、私はふだんクラシック音楽にまつわるブログを書いていますが、ブログというのは、良くも悪くも、基本的には一方通行の媒体です。


以前、ファッション・インフルエンサーのMBさんが「インフルエンサーは皆やる気を失っている」というようなテーマで語ってらしたことがありました。

MBさんがおっしゃっていたのが、とにかく「人の顔が見えない仕事は難しい」ということ。

相手の顔が見えないところでずっと作業をしていると、だんだんと、自分は本当に人の役に立っているのか、何のために仕事をしているのか、よくわからなくなってきしまうというお話でした。

わたしはインフルエンサーではありませんが、ブログを1年やってみて、その話に通じる壁にぶつかりました。


5月に10,000PVという区切りの数字をこえて、見てくださる方がいるんだというのは頭ではわかったのですが、でも、「ちらっと見ても1pv」と考えると、果たして、どうなんだろうと。

「人間の集中力は90分」というのは今は昔で、SNSが発達した現在、スマートフォンやパソコンで何かしらのコンテンツを視聴者が目にするとき、興味を保てる時間は「3秒以下」なんだそうです。

次から次へとコンテンツを渡り歩いていくのが、現在の常識的な動きだそうです。


そうなると、クラシック音楽という渋い領域について私があれこれブログ記事を書いたとしても、ほとんど読まれてはいないんじゃないか、コンサート情報にしても、それを読んで実際にホールに足を運んでくださる方なんて実在するんだろうかという、ある種の無力感が湧くようになってきました。



1通の問い合わせメール


そうしたところへ、先日、ブログの読者の方から1通の問い合わせメールをいただきました。

そこには、私のある記事の年号がもしかしたら間違っているのではないかというご指摘と、私がブログで書いていることを参考に、実際にコンサートに足を運んでくださった旨が書かれていました。


まず驚いたのが、年号のことです。

年号のミスに気づくということは、本当に「読んでいる」方がいてくださったということ。

そして、さらに驚いたのが、私の記事を参考にしてくださって、実際にコンサートホールへ足を運んでくださったということ。

私が今いちばんお薦めしているジョナサン・ノット指揮する東京交響楽団の公演や、自身のブログにレビューも書いたプレトニョフ指揮する東京フィルの『白鳥の湖』の公演などに出かけてくださったそうです。

本当にコンサートホールへ足を運んでくださった方がいたわけです。


ブログの「壁」にぶつかって、無力感に苛まれていた私が、疑心暗鬼だった状態を抜け出すきっかけを与えていただきました。


私は自分の時間の都合で、気軽に双方向のやり取りができるツイッターやインスタグラムの類いをまだ始めていませんので、ブログにあるのは「お問い合わせ」欄だけ。

そうした、ちょっとハードルが高い「お問い合わせ」欄からメールをくださった、この方の行動力には、敬意を感じずにいられませんでした。

とても気遣いにみちた文面で、「返信は不要です」とまで書いてくださっていたのですが、これだけの励ましをいただいて何も言わないというのは無理で、勝手ながらお礼の返信を後日させていただきました。



友人への感謝


他人が自分の行為に対する感謝を忘れてしまうのは仕方のないことだとして、でも、せめて自分がだれかに感謝する側にいるときには、それをすぐに忘れないように気をつけていきたいと思っています。

そして、心掛けているだけでは難しいことなので、なるべく「行動」に落とし込むようにしています。


感謝を忘れないために、「行動」に落とし込もうという発想に至ったのは、もう何年も前、わたしの友人のことがきっかけでした。

その友人は、私が困っているといつも力になってくれるひとで、それこそ、お金に困っていた学生時代もそうでしたし、父が病気で亡くなったときも、さらには自宅に雷が落ちてたいへんな目にあったときも(雷って本当におちることがあるんです…)、とにかくいつも助けられています。


あるとき、ふと、それでも、自分はその友人への感謝の気持ちを、やがては忘れていくんじゃないかと思いました。

ポワロの「灰色の脳細胞」が言っているのですから、間違いないでしょう。


コンサート・サプライズ


そこで、そう不安に思った年から、その友人を年に一度、感謝の気持ちを込めて、サプライズでコンサートに連れていくというプレゼントをすることにしました。

何がサプライズかというと、友人には、誰が出演して、どんな曲が演奏されるかをいっさい伝えずに、コンサートに連れて行くというサプライズです。


最初のときは、フィンランドの名指揮者エサ・ペッカ・サロネンが指揮する、イギリスの名門フィルハーモニア管弦楽団のコンサートに招待しました。

サプライズの1回目だったので、あのときだけは「知人がアマチュア・オーケストラをやっていて、それを義理で見に行くから一緒に来てほしい」と嘘をついて誘い出しました。


その道すがら、何となくサロネンの活躍ぶりを色々と話して、彼が「なるほど。サロネンのコンサートも、いつか行ってみたいね」と言うように仕向けてから、会場へと足を運びました。

サロネンのコンサートだとわかったときには、彼は大笑いして、とっても喜んでくれました。


それ以来、ほぼ毎年、いろいろなコンサートに一緒に行っています。

良いものもあれば、予想が外れて、つまらないコンサートもありましたが。


だから、私が気をつけていること


ブログをはじめて1年とちょっと。

「10,000PVなんて大したことない」という記事もよく見かけますが、1年前は、「1日に3PV」でも驚き、喜んだものです。

「感謝の賞味期限は短い」、ほんとうに名言です。


今回、1通のお問い合わせメールをいただくことで、こうして励まされ、見失っていた色々なことに気づくきっかけまでいただきました。

あの1通のお問い合わせメールに心から感謝しています。


でも、ポワロもマザー・テレサもカーネギーも言っている通り、「感謝の賞味期限はとっても短い」わけです。

やがては、今のこの気持ちもまた、忘れてしまうのかもしれません。


と考えて、今回も、その感謝を忘れないために「行動」に落とし込もうと決めました。

それが実は、いま読んでいただいている、この記事ということになります。


その意味で、これはどちらかと言うと、私自身へ向けたメッセージであり、私のブログにおけるひとつのモニュメントです。

ただ、もしご自分で文章を書いて公開されたりして、同じような壁にぶつかっている方がいらしたら、何かの参考になればうれしいとも思っています。


以上、「感謝の賞味期限は短い。だから、私が気をつけていること」でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。




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