見出し画像

フェルディナン・シュヴァル:幻視の風景(アウトサイダー・アート)

ジョゼフ=フェルディナン・シュヴァル(Joseph Ferdinand Cheval, 1836-1924)フランスの郵便配達人であり、ランドアートを手掛ける。その表象は、幻視の風景(アウトサイダー・アート)と言われる。
手押しの一輪車を心の支えに33年間、石を運び、自分の庭に理想宮を作り上げたジョゼフ・フェルディナン・シュヴァル・・・
現在は、シュヴァルの理想宮 (Palais idéal) として知られる。
それは、アール・ブリュットアウトサイダー・アート)の代表格的な作家の1人として語られる。

1836年、シュヴァルは、シャルム=シュル=エルバス(フランスのオートリーブの南に位置する村)で生まれる。13歳で、パン屋へ奉公して、郵便配達の仕事についていた。それは、連日、30km以上も徒歩での配達したと言われてる。
そして、ジョゼフ・シュヴァルは、ある時から、空想を楽しむ事が常になった。それは「理想宮」だ、そして、段々と具体的な形になっていく。この妄想をシュヴァルは、だれにも話さなかったのだ。そんな彼が理想宮の建設を始めたのは1879年頃だ、43歳の時であった。仕事中、石を拾うと、その奇妙な形に魅了され、家に持ち帰った。翌日、同じ場所を通りかかると、さらにシュヴァルにとって、魅力的な石を見つけ持ち帰り、石の収集をするようになる。
このあたりから、シュヴァルは、仕事中に見つけた様々な石を当初はポケットに、そしてバスケットに、最後に至っては、なんと、台車を用い、仕事以外にさらに10kmも歩いて回収した。そして、それを夜間に積み上げ始めたのだ。

画像2


村の住人たちは一人で奇怪な建築を造り続けるシュヴァルを変人と称した。当然であるが、勤務先の郵便局長からも、その行動を問いただされたものの、シュヴァルはやめることはしなかった、そして、33年間経って、1912年にシュヴァルの理想宮 (Palais idéal) は出来上がった。

画像3

画像4

・シュヴァルの理想宮とシュヴァル霊廟について
建設を初めて20年間は外壁の建設だった。その城のデザインは様々なスタイルの折衷から構成されている。
そして、聖書やヒンドゥー教等の神話にも影響を受けているのだろう。その石と石とは石灰(せっかい)とワイヤー、セメントなどで接着、補強されている。その宮殿には、シュヴァル自身が手彫りした短い引用や詩が散りばめられる。
「一人の男の仕事」、「これは芸術でありエネルギーである」、「生命の神殿」、「想像力の宮殿」、そして、「1879-1912 10000日、93000時間、33年の闘争。もっとうまくやれると思う人に試してもらいましょう」と象徴的な締め括りだ。

また、1912年、33年間かかった理想宮の建設を終えるとつぎに彼は、自分と家族の霊廟の制作(作品だ)に取り掛かる。
当初の計画では理想宮に棺を納めるはずだった。しかしだ、フランスの法や教会の反対から不可能であることをしったからだ。このシュヴァル霊廟は村の共同墓地にあり、彼自身によって、「終りなき沈黙と休息の墓」と名づけられた。この最期の仕事に彼は、1914年から1922年までかけ、2年後の1924年に死去した。

画像3

Joseph Ferdinand Cheval

その後、「理想宮」の存在はフランスのマスコミに多く取り上げられており、シュヴァルの死の前にはアンドレ・ブルトン(André Breton, 1896-1966/仏-詩人)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso,1881-1973/スペイン-画家)にも、フェルディナン・シュヴァルの名が知れ渡り賞賛されている。
1969年にフランス政府の文化大臣アンドレ・マルロー(André Malraux, 1901-1976/仏-政治家・作家)により理想宮は文化財として登録された。そして、現在は、一般に公開されている。

そして、映画「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」(L'Incroyable histoire du Facteur Cheval/2018年製作,105分,フランス/日本では、2019.12.13 公開)としても著名だ。
映画「シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢」-Trailer

(今後のお知らせ)
このコンテスト #2020年秋の美術・芸術 は、コンテストの形式として、3名の入選はございますが、ある意味、ドクメンタ(カッセル/ドイツ-一人のディレクターによるキュレーション)の展示会ように賞はございません。そして、主催者は、多くの企画をされている秋氏のデレクションと、私(artoday)のコメント(評)で構成されております。         
それは、「そもそも美術エッセイは発表の場すらない」という視点や、小生(artoday)の、もっと、身近に気軽に、美術、芸術の裾野の広がりを願っての事でもございます。この間は、私のアート系コラムをランダムに、連載致しますが、入稿があり次第、応募作品にシフト致します。
どうぞ、気軽に日常のことで、思いつかれた事を応募なさって下さいませ。(註) #2020年秋の美術・芸術 は全角ですので、よろしくお願い致します。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?