マルティン・ラミレス:アメリカの悲劇が幽閉される(アウトサイダー・アート)
マルティン・ラミレス:アメリカの悲劇が幽閉される(アウトサイダー・アート)
マルティン・ラミレス(マーティン・ラミレス/ Martin Ramirez,1885-1960/メキシコ・アメリカ)
1895年、ハリスコ州(メキシコ)で生まれ。
当初は、メキシコの洗濯工場に勤めていたが、1918年に結婚し、3人の子供を授けられ、その為もあり、カリフォルニアに出稼ぎに単身で移住するが、過酷な労働という事もあり、数年後には、完全に失業する。そして、ある意味カルチャーショック(英語が話せない)から、いわゆるアメリカの暮らしに馴染めず、幻覚に襲われて、精神を病んでしまう事になった。
ラミレスは、孤立してホームレス状態となり、警察に拘留された時には、統合失調症を患っていた。
その後、ストックトン州立病院、その後のデウィット州立病院の病棟で、マルティンは、画用紙のないときは、身近にある、紙袋、封筒、薬包紙・包装紙や検査用紙、不要な書籍などを、糊(初期はオートミール等だったが、茹でたジャガイモを練り水を加えたメディアム)で貼り合わせて、壁面一面のコラージュや、多くの絵画を制作した。
(c)Martin Ramirez
メキシコの伝統的なモチーフと、ラミレスが、カリフォルニアで働いていた鉄道などのアメリカン的なモチーフが入り混じり、精神の深淵を感じさせる作品だ。それは、メキシコとアメリカの文化の象徴を融合している。 紳士(Caballero)や動物、聖母像、女性等々がモチーフだ。 まとめる訳ではないが、そこには、阻害された世界のと悲惨と絶望、そして、具体的には、彼を拒んだアメリカ合衆国を象徴するイメージ等が、その絵画には幽閉されているのだ。
1963年、カリフォルニア(US)で亡くなったマルティンは、成人してからのそのほとんどの時間を精神病院で過ごしている。何とも言葉につまるが、ただ、そこで、残した作品は、観る人を強く惹きつける・・
Martin Ramirez
(註)シカゴの画家 ジム・ナット(Jim Nutt,1938- /US,画家-シュルレアリスム)が見出した作家だ。
そして、特筆すべきは、ブラザーズ・クエイ(Quay Brothers,1943- /映像作家)は、ラミレスの影響を受けていると言われていることだろう。
(追記)「マルティン・ラミレスが、統合失調症で洗練された芸術とも言える。」-マドリッド・ミュージアム
そして、不謹慎な言い方だが、辛い統合失調症が功を成したのかも知れないと言う視点もあるが、ラミレスの統合失調症があって、このアートの世界は成立しているのか?・・いや、そう考えると複雑な思いだ・・それは、Quay Brothersの世界も大きな影響下にあるからだ。残したものは大きい。
ただ、そう言うには、あまりに辛い話だ。いずれにしても、マルティン・ラミレスを語るには、その作品を観ていただきたい。
Martin Ramirez
(今後のお知らせ)
このコンテスト #2020年秋の美術・芸術 は、コンテストの形式として、3名の入選はございますが、ある意味、ドクメンタ(カッセル/ドイツ-一人のディレクターによるキュレーション)の展示会ように賞はございません。そして、主催者は、多くの企画をされている秋氏のデレクションと、私(artoday)のコメント(評)で構成されております。
それは、「そもそも美術エッセイは発表の場すらない」という視点や、小生(artoday)の、もっと、身近に気軽に、美術、芸術の裾野の広がりを願っての事でもございます。この間は、私のアート系コラムをランダムに、連載致しますが、入稿があり次第、応募作品にシフト致します。
どうぞ、気軽に日常のことで、思いつかれた事を応募なさって下さいませ。(註) #2020年秋の美術・芸術 は全角ですので、よろしくお願い致します。
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