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ペーパーキルト作家_テツジ山下

【プロフィール】

「ペーパーキルト」と言う名の貼り絵作家として活動しているテツジ山下。
名古屋芸術大学を卒業し、2007年から作家活動を始める。
創作の大きなテーマは「生きる」。その核となるものをアフリカとし、
そこで得たインスピレーションを創作の糧としている。

【How I am here】

私の創作活動はアフリカを旅した事から始まりました。
1990年。大学4年生の春、卒業制作のテーマで「飛べない鳥と有袋類」を選んだ私は夏休みを使ってオーストラリア、ニュージーランドを旅する予定でいました。ある日、友人とひょんな事から旅の話になり、彼が「1年間休学してイギリスからインドまで歩いて建築を観に行く。」と打ち明けてくれました。私も「実は僕も夏休みにオーストラリア、ニュージーランドに行くつもりだ。」と打ち明けると、「え?アフリカじゃないの?アフリカに行ってみたいって言ってたじゃないか。一番行きたいところに行けよ!」そう言って彼は私の目をじっと見つめました。

当時はインターネットも携帯電話もなく、情報などほとんどありませんでした。まさにアフリカは未知の大陸。
そこに行くなど、とても想像も勇気も出ませんでした。

しかし、その日の帰り道ふと立ち寄った本屋で「アフリカ」という薄いガイドブックを買ったことが一気に私をアフリカへとかき立てました。
私はすぐ動物園へライオンをスケッチに行きました。

ところが、目の前のライオンはどうにもしっくりこない。
テレビで見知った姿ではなく、どことなく太っているし、生気が感じられない。「野生の眼が見たい!!」熱い想いが強烈に湧き上がったのです。

「親子の縁を切って行け!」
優しかった父が鬼の形相で私に言い放ちました。

正直ここまで強く反対されるとは思っていなかった私はかなりのショックを受けましたが、とにかく説得せねばと東京へ。
留学ができないかとケニア大使館をはじめ、いくつかの大使館を訪ね歩きました。残念ながらアフリカ諸国に留学できる大学は見つかりませんでしたが、ケニアにスワヒリ語留学を斡旋しているところがあると教えられました。すぐに問い合わせをしたところ「男性にのみ欠員がある」との返事をもらい、親を説得し、晴れて留学の道が開かれたのです。半年間のスワヒリ語留学の後、私は一人でアフリカ5カ国を旅しました。この旅の経験が後の私を作ったと言っても過言ではないでしょう。

帰国した私は大学に復学・卒業し、グラフィックデザイナーとして就職をしました。

社会人を20年ほど続けた後、大きな社会の変化により人生の決断を迫られる事となります。デザイナーという職業と会社に将来性を見いだせなかった私は2007年会社を辞することを決断します。

その後すぐ、初めて出したカンヌ国際展覧会で受賞の知らせが届き、しかもその授賞式が会社を辞めた1週間後。最初は躊躇したものの思い切って旅を決めると、驚くほどご縁がご縁を呼びます。

各国から集まったアーティスト達と交流した授賞式が終わり、パリに戻った私はルーブル美術館で出逢った絵画(グランド オダリスク)と彫刻(サモトラケのニケ)に背中を押され、アーティストとしての道に覚悟を決めました。
帰国後、これからの生き方を模索する中、新天地へと導いてくれたのは、なんとアフリカで知己を得た人でした。その時私は40歳。アーティストとしてはかなり遅い出発です。
しかし私はこの流れを「お導き」と捉え、周りの強い批判や心配をはねのけ自分に賭けてみることにしたのです。

【ご本人から皆様へのメッセージ】

芸術系大学や専門学校に通学していたかどうかを問わず、
もしあなたがアーティストになりたいと思う学生ならば、迷わず就職することをお勧めします。また、あなたがすでに社会人として、生活しているならばそれを続けてください。

なぜならば「芸術活動にはお金が必要」だからです。その活動費はたぶん貴方が思っている以上にかかり、かつ、どんなに時間があっても自分が思っているほど創作活動はできないと思うからです。
お金が全てとは言いませんが、全てにお金が必要なのは紛れもない事実です。それだけでなく、人に認めてもらい、芸術活動だけで食べていけるまでになるにはあまりにも先が見えない時間が潜んでいます。
人間は霞を食って生きていけません。もっと言えば生きているだけでお金がかかります。まず自分が生活できるだけの手段を確保し、その上で「積み重ねる」事が大切なのです。
働いている人にとって、まとまった時間を確保するのは至難の業です。しかしそこを工夫し、時間を生み出すのです。そしてそこに全力で自分をぶつけて作品を生み出してください。その積み重ねを継続し、機会を見つけ、あるいは作りだして発表すること。SNSに投稿するだけのような安易な発表の仕方だけではなく、必ず原画を世間という風に当てるのです。最初は身内や友人以外反応はないかも知れません。しかし続けるのです。必ず誰かがそれを見続けています。「継続は力なり」。これしかありません。
かくいう私はどうか。ハッキリ言って自分の芸術活動だけでは食べていけていません。アルバイトで最低限の生活費を稼ぐのがやっとです。同級生の収入と比べたらその10分の1さえ稼いでいないかも知れません。しかし、私はこの道に進んだことを後悔していません。なぜならば、私は「幸せ」だからです。数は少なくも展覧会を開けば遠方から観に来てくださり、「元気か」と声をかけてくれる人がたくさんいます。中には10年以上の時を経ても、わざわざ会いに来てくれる人もいます。継続しているからこそ繋がることができる友人がいる。こんな幸せなことはありません。
「心にあるものを描き、わかちあう。」
これは私がアーティストとしての信条として心に留めている言葉です。

もしあなたが「創作していくことが自分の幸せ」と感じるならば、それを続けられる環境を作ることから始め、それを貫いていけば自ずと道は開けていくと信じています。

テツジ山下

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― プロフィール ー
テツジ山下   Tetsuji Yamashita
静岡県浜松市生まれ。名古屋芸術大学美術学部デザイン科卒業後、グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所勤務。大学在学時に1年間休学し、ケニア渡航。ジンバブエなど5カ国を旅する。帰国後、旅の経験を元に貼り絵制作を始め、2007年カンヌ国際展覧会での受賞を機に作家として独立。他に類を見ないユニークな手法はオランダで「ペーパーキルト」と評され、個展・グループ展を通して国内外で発表されている。
アフリカを生涯のテーマとし、そこから得たインスピレーションや色使いをベースに「花」「動物」「音」など様々なテーマで制作をしている。

〜最後に:運営局より〜

テツジ山下さんはちょうど一年前に知人にご紹介いただき繋がりました。当時はコロナも流行っており中々お会いする機会がなかったのですが、先日初めてお会いすることができました。テツジさんを見ていると「ペーパーキルト」が本当に大好きなことが伝わってきます。今まであまり触れてこなかったペーパーキルトの世界の魅力に気づかせてくれます。テツジさんは「アフリカ」での経験をもとに、ペーパーキルト制作を始めたという珍しい背景をお持ちだったので是非皆さんに知っていただきたいと思い今回オファーさせていただきました!少しでも多くの方に届いたら嬉しいです。
テツジさんご協力していただき誠にありがとうございます!

アーティスト発信所_運営局より

※この記事にある写真に関してご本人の許可をいただいております。

以上になります。


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