緩やかな時間が流れる、田舎の美しさ。 *Arcola アルコラ村*
近年脚光を浴びるようになった、岸壁に立つ5つの村、チンクエテッレ。トスカーナ州の上にあり、海に沿うように長細いリグーリア州の観光名所です。
いま海沿いの街にいて、チンクエテッレへも比較的近いので、先週の平日に行ってきました。人の多さにびっくり。
夏休み最後の週だったこともあり、家族連れや学生達も多く、小さな村がぎゅうぎゅうのすし詰め状態。
そこに、欧米人と思われる、団体旅行御一行が押し寄せ、車幅ほどの歩道は、人で埋め尽くされ、すぐそこに海が見えるのに、ぜんぜん進まない。
観光地化される前のチンクエテッレは、カラフルな家々が海岸沿いに立ち並ぶ漁村として、人々が普通に暮らしていたことでしょう。
かつてのチンクエテッレがそうであったように、風の音しか聞こえない、ボルゴと呼ばれる、リグーリア州の小さな村のいくつかを、今回から何度かに分けて案内します。
アルコラ Arcola
きっかけは、高速道路を走っていたとき。小高い山が連なり、その中腹や、頂上では、淡い色のピンク黄色オレンジの家々が小さな集落を形成しています。
グーグルマップでだいたい見当をつけたら、その村だと思われる名前を探して、行ってみることに。
人口約1万人の小高い山の頂上にある集落。アルコラの歴史は紀元前639年〜516年に遡ります。ラスペツィアという大きな港町まで約10キロ。
海沿いに暮らせば、魚も獲れて生活の糧になるのに、なぜ、わざわざ、山の中腹や頂上に集落があるのでしょう。
海の近くは、いつ敵に襲われるかわからないし、湿地帯には蚊がたくさんいてマラリアに罹る確率大。
海沿いに住む方が危険がいっぱいなのです。なので、上へ上へと移動し、要塞のような街づくりがされました。
アルコラは、古代ローマ時代は、近隣のルニジャーノ人が侵略するのを防ぐ要塞でした。
村に足を踏み入れると、まるで迷路。石畳の細い路地が上にも下にもあり、どこをどう歩いてよいのやら分からないので、心の赴くままに適当に歩いていきます。
山の上に建つので、階段もたくさん。
左右の建物が所々でアーチを掲げていて、お互いに支え、アーチ部分にも部屋があります。お家拝見してみたい。
階段を上っているときは、先が見えない。
テレビの音が聞こえるから、住民はいるはずなのに、誰にも会わない。非現実な空間に迷い込んだような感覚。
階段を上りきると、緑生い茂る鉢が美しく飾られていてる小さな路地。住民がこの村を愛しているのが伝わってきます。
美しい路地に遭遇するのは、村散策の醍醐味です。
傾斜がきつくなるので、かつてお城か要塞があった場所へ続くに違いないです。
村の一番上に到着。ということは、山の頂上でもあります。昔のお城は、現在は市役所になっています。
古代ローマ時代は軍事防衛拠点となり、900年代にオベルテンギ家が塔を建設します。いまもオベルテンギ塔と呼ばれている、奥にみえる塔がそれで、遠くからも良くみえます。
遠くから見えるのは当然のことで、昔は重要な見張り台でした。敵が侵入してこないかを見張り、時には狼煙を上げ、集落と集落が伝達するためにの役割も果たしていたのです。
得体の知れないものを発見。ワインを入れていた砂岩の容器だそうです。750mlのワインのボトルが150本ほど入る量らしい。1601年に作られたもの。
この地方は、Colli di Luni (コッリ・ディ・ルーニ)という、すっきりした飲み口に、ほんのりフルーティな甘みが残る白ワインが有名。下方の穴から、水のようにワインが溢れて、人々に提供したのかしら。
広場もあり、風がスーッと吹き付ける木陰のベンチからは、鳥目線の風景が広がります。右手遠くに見えるのはラスペッツィア港。
上を見上げたら、気持ちよさそうに投げ出しているお脚を発見。
知らない人が近づいているのに、微動だにせず。見晴らしはいいし、気持ち良い風が吹きぬけるし、静かだし、最高のお昼寝時間。
もうすこし村を散策してみましょう。きっと、ぜんぶは回ってないはず。ここにも、一匹。こちらは案内役。
陽の光をみただけで、どれだけ暑いかわかるけど、空気が乾燥しているので、日陰にいると、空気がひんやり肌に感じて涼しい。石造りだから、なおのこと。
トンネルのような通路に遭遇。おもしろい造りです。風が通って気持ち良い。
当然だけど、本当に階段が多い。石を切って運んで積んで、よくもまあ、これだけの集落を作ったものです。
どうしてアルコラという名前になったのか、諸説があり、Arcula(アルクラ)「小さな城塞」という意味からきていると言われています。
黄色と黄色。建物の黄色はきっと塗り替えたばかり。緑の鎧戸とのコントラストが美しい。白色を加えることで、黄色も緑も引き立っています。
人が住んでいることを思い出させてくれるのは、たまに聞こえるテレビの音。ほかは、風の音と、遠くを走る高速道路の音。
お昼時間を過ぎてから、ようやく村人達とも出会いましたが、そのひとりに「ちょっと待ってて!」と呼び止められ、街案内のパンフレットを頂き、アルコラの歴史をかいつまんで教えてくれました。
時を忘れたような、静かな村に住む人たちは、自分たちの村に誇りを持ち、慈しんでいるのが伝わってきます。
駐車場におまわりさんがいたので、アルコラのように可愛い街が、周辺にないか尋ねると、快く名前を挙げてくれたので、グーグルマップで当たりをつけて探さなくても、貴重な情報を得ることができました。
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最後までお読みくださり、
ありがとうございます!
次回も、
小さな村でお会いしましょう。
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