糸杉に響く、とんからり。若き機織り職人の物語 続編。
以前に、トスカーナの田舎にアトリエを構える、若き機織り職人シモーネを紹介していました。
お世話になった方が4月にリタイアするので、寒がりのその方に、シモーネの作品をプレゼントしようと、最近アトリエへ再訪してきました。
彼のインスタグラムに紹介されていた、大きな機織り機がようやく完成したこと。現在は作品「エルザ」に取り掛かっていること。
本物を見たいと、うずうずしていたので、ちょうど良い機会に恵まれました。
大きな機織り機のメイキングオブは、『糸杉に響く、とんからり。若き機織り職人の物語』2回目で紹介しています。
去年は、木片の集まりと、何本もの糸がダラリと無造作に垂れていた、ただいま製作中の織り機。
アトリエに足を踏み入れたら、大きな機織り機がスペースの半分以上を占めていました。
綜絖を上げたり下げたり自動化するための、コマンドキーは、木の釘で調整するようになっており、その上には、手書きのプログラミング表が貼り付けてあります。
機織り機を作っているは知っていました。でも、実際にこの機織り機を目の当たりにした人たちが口を揃えて発する言葉。
「シモーネ、クレイジー」。
本人は、念願の織り機が完成して、すごく嬉しそう。
いままで使っていた機織り機が、まるでミニチュアのようです。
前回のインタビューでシモーネがこう話していました。
機織り機が完成したら、最初に織るものは、すでに決まっています。
そのときの記事から、一部抜粋してご紹介します。
ガチャン、ガタン、コトン。
小さな機織り機では、リズムのある軽快が音が、静かな空気のなかに心地よく響いていましたが、「エルザ」には、細い糸が使用され、糸と糸の間が狭く、模様も均一でないため、
ガチャン。と糸を引いたら、
シャッ、シャッ、シャッと手で起毛を取り除き、
ガタン、、、コトン。と、
倍以上の時間をかけて、織り上げています。
シモーネがエルザ川を連想し織られたストール。柔らかくて、軽くて、優しい手触り。
ベージュの色合いのストールも製作するらしく、完成が待ち遠しいです。1枚はわたしが売約済み。真夏の夜のコンサートに行くときに重宝しそうで、いまから夢想しています。
川、大地、森、花を表現するためにシモーネが選んだ、「エルザ」シリーズに使われる糸。
エルザ川と自然の調和の美しさをを表現したいと話していたシモーネ。そんな折にたまたま出会った、古今和歌集の一句。
シモーネが、雨でなく空気や風をたてぬきにし、そこにある自然を糸で紡いでいく姿が重なってみえました。
『糸杉に響く、とんからり。若き機織り職人の物語 n.1』にも動画を新しく挿入しましたが、本稿では、両方の機織り機の動画を投稿します。比較すると、大きさの違いがよくわかります。
今回の見出し画像にも登場した、機織り機の間で、のんびり毛繕いをする黒猫。外では黒鶏が闊歩し、トスカーナの田舎の風景が広がるテラスは、人間のくつろぎスペース。
この空間では、鳥のさえずりに、機織り機の音が加わり、時間が経つのを忘れてしまいそうです。
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今回は更新が遅れました。
4月に入り、フィレンツェに来てくださるお客様が多くなり嬉しいかぎりです。
コロナ以降、久しぶりの忙しさで、時間の使い方をすっかり忘れていました。時間のリハビリをしながら、noteを続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。
最後までお読みくださり、
ありがとうございます!