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中世時代の工房風景

工房は、イタリア語でボッテガ(Bottega)と呼びます。ボッテガベネタは「ベネト州(ベニスがあるところ)にある工房」という意味。ボッテガベネタの商品は、職人技が光るものが多く、ベネト州で設立した会社なので、まさに!というネーミング。

18世紀半ばから19世紀にかけて、イギリスで産業革命が興り、大量生産の道へと歩むようになるけど、それまでは、すべて手作り。職人が作る一点ものばかり。

産業革命が起こる前の「工房」は、モノをつくって、それを店頭で販売するスタイル。商業ベースなので街にあります。

父から息子へ引き継がれていく家族経営と、弟子入りをして技を学ぶ徒弟制度の、大きく2パターンがあり、中世時代の工房は後者がメイン。

繁盛している工房には、サンプルとなる素材、シルクロードから伝わった貴重な織物、額縁のサンプル、動物や植物のモチーフのオブジェ、ガラス、師匠のデッサンなどが、大切に保管されており、作品を作るときに役立っていたのです。

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当時のシルクの織物

レオナルドダヴィンチが弟子入りしたヴェロッキオ工房や、ミケランジェロが弟子入りしたギルランダイオ工房には、それらのサンプル素材の品揃えが豊富だったようです。

例えば、マリア様を描くとき、お召しになるものは、美しい文様を縫いこんだ貴重なシルク生地。シルクの光沢感、生地の光の陰影、刺繍の質感。絵画でも、彫刻でも、ここで織物のサンプルが役に立ちます。

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レオナルドダヴィンチのデッサン。
10代の頃に工房で描いたもの。
光の反射があり見づらくてすいません。

宗教絵画を鑑賞するとき、マリア様や聖人が羽織るもの、椅子の素材などにに注意してみてください。よく見るとエキゾチックな文様で表現されていますが、これは、シルクロードを渡り、中国や中近東から運び込まれた生地を描いています。

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マリア様の椅子に掛けられたシルクの生地。
金糸が刺繍されています。

のちにイタリアでも、織りの技術を学び、生産するようになりますが、それまでは、輸入モノに頼っていたので、とても貴重で高価なものでした。

絵の具はには、鉱物を砕いたものが使われていましたが、ちょっとでも量が異なると、色が変わってしまう。色ののびが悪い。うまく色がつかない。

あそこの工房の色は、
どうしてあんなに綺麗なんだろう。

あそこの工房の色は、
どうしてあんなに透明なんだろう。

あそこの工房に任せれば、
美しい色で描いてくれる。

そんな評判があれば、工房も繁盛するもの。だから、絵の具の配合は、極秘中の極秘。絶対に書物などに残さず、すべて師匠から弟子に口移しで伝えらたのです。

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美術館や博物館で目にする、美しい芸術品や美術品は、すべては、工房から生み出されたもの。

そして、いまも、親から子に継承されて、何世紀からも続くモノづくりが行われているということは、歴史や文化も継承しているというのと同意。

いつまでも、未来永劫に続いて欲しいと願ってやみません。

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イタリアのモノづくり | ようこ
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