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実施ルポ:国立西洋美術館さん「ゆったり BABY DAY」

9月24日(火)30日(月)に、国立西洋美術館さんで「ゆったり BABY DAY」が開催されました。休館日に常設展を鑑賞するという、未就学児連れの皆様のために開かれた2日間です。約500名の方が来館されました。

育児真っ最中の職員さんから、「音楽コンサートでは赤ちゃんも楽しめるような司会進行があって、親子ともに助かるなぁと感じます。そのような働きかけが美術館でもできたらいいなと思いまして」と、1日4回計8回のミニレクチャーのご要望を頂きました。
それは素敵です!と大いに共感し、担当させていただきました。

ご提示いただいたのは、飲食できるスペースで、休憩しながら気軽に聞いていただくという設定。
それも素敵です。リラックスして過ごせる環境は、話を聴く人する人、双方にとって助かります。
とはいえ小さい子と一緒に30分、大人向けのレクチャーを聴いていただくには工夫が必要です。現地打ち合わせの帰りの電車で浮かんだのは、お芝居のようなレクチャー。テンポよく、楽器と歌付きで楽しく! たくさん作品が展示されている広い館内で、疲れず楽しく安心して美術館で過ごしていただけるように、ポイントをガイドするという趣向です。

国立西洋美術館の成り立ちとコレクションの特徴、世界遺産でもある建築、お子さんが楽しく作品に興味を向けられるような働きかけ方、安全のための留意点などを、コンパクトにまとめました。
展示されている作品の中から、赤ちゃんや幼児が関心を持つであろう作品をセレクトし、ご紹介しました。お子さんがぐずったら、それらの作品のところへ行ってみると変化する可能性があります。

ご紹介する作品にちなんで歌を何曲か作りました
モニター前には出番を待つマラカスやタンバリンが🎵
どこでも持っていけるハープは相棒

展示室の数か所で、当会の鑑賞サポーターが待機していることもお伝えしました。家族以外の人との交流は、鑑賞の助けになることが多々あります。鑑賞サポーターの皆様も、自然な親しみを持ってご家族やお子さんと話してくださって、あたたかい空気に満ちていました。本当にありがたいです。

赤ちゃんがご機嫌な時間に鑑賞できます

国立西洋美術館さんでは、イベントによっては看視さんが私服でお仕事をすることがあります。それがまたやわらかい雰囲気を生んでいて素敵なんです。看視さん方が、乳幼児連れの方々をあたたかい気持ちで迎えていらっしゃることがストレートに伝わります。
作品を守るという重要なお仕事、優しさと厳しさのバランスが必要で、大変なことと思います。今回、サポーターさんと一緒に看視の皆様と連携して展示室で対応する中、職務の大切さとその姿勢に、あらためて敬意を持ちました。

レクチャーのインターバルの時間にたくさんの方とお話しさせていただきました。子育てのこと、美術館が好きだけど子連れでは来られなかったという方、三世代で来た方、子どもを産む前にしていた仕事のこと、これから仕事を再開するかどうか、再開する仕事先で美術を活かしたいという方。みなさん人生の様々な歩みの中にいて、今日、出会えたことが嬉しい。

鑑賞の思い出を書き込めるステキなリーフレットが配布されました
このように写真を貼ることもできます

当日の様子については、独立行政法人国立美術館のサイト「おでかけ国立美術館」に詳しくレポートされています。文字通り「ゆったり」美術館で過ごしていらっしゃるご家族の姿が、思い出されます。どうぞご覧ください!
https://odekake.artmuseums.go.jp/reports/nmwa_20240924-30/

私事ですが・・・
国立西洋美術館には個人的な思い出があります。
小学4~6年生の頃、祖母と上野の美術館を訪れるのが定例になっていました。
祖母は女学校時代まで上野に住んでいました。戦争で焼け出された上野には、様々な思いがあったはずです。孫と美術館を訪れることが祖母にとってどのような意味を持っていたか。戦禍の記憶が幸せな時間に少しでも置き換わっていたことを願うばかりです。

10歳頃だったか、国立西洋美術館で所蔵されているカロリュス=デュラン『母と子(フェドー夫人と子供たち)』(1897)を観た私は「この女の人って幸せなのかしら」と言いました。上流家庭と思しき豪華なドレスを纏った美しい婦人が、幼い娘と息子とともに描かれています。小学生の私には、その親子の様子に「描かれるために作られた雰囲気」が感じられたのです。
親だったら「子どもが何をませたこと言ってるの」と言われそうな感想を、祖母は目を丸くして「めぐちゃんは絵をそういうふうに観るのねぇ」と、私の言葉を反芻している様子でした。
大人になって、思い出のある美術館でこのような活動に関わらせていただけたことに、ご縁の不思議を感じます。祖母は今、施設に入所しています。「国立西洋美術館でお仕事させてもらったよ」と話しましたが、認知機能が低下していて理解できない様子でした。おばあちゃん、もう少し早く私の活動が展開していたら一緒に喜びあえたね、ごめんね。そして…ありがとう!

・・・
所蔵作品は、国立西洋美術館のサイトで確認することができます。このデータベース自体、日本の宝! ぜひご覧ください。
https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

(この記事は国立西洋美術館さんに確認いただいて掲載しております)
(美術館から当会へご共有くださった写真を掲載しています)


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