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あなたの知識と行動が社会的孤立を救う 〜社会的処方を読んで〜

書籍「社会的処方」を購入した。先週初めて社会的処方に関する記事を見つけ、自分でもネットで調べてまとめ記事にしたくらいだ。個人的にとても気になるワードである。

医療をめぐる様々な問題の根本には「社会的孤立」が隠されていると言われて久しい。社会的孤立を解消するために、地域のつながり(コミュニティー)を処方箋として提示する。これから迎える高齢化社会において、重要な役割を果たすであろう取り組みである。

実際に読んでみて、前の記事の復習になったし、日本における事例がたくさん書かれていて、日本でも少しずつ社会的処方が広まりつつあることを実感した。

今回は読書感想文として、社会的処方に関する実例や成り立ちなど、さらに深掘りしてみた。前に社会的処方について書いた記事はこちら。

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社会的孤立という病を治したい

社会的処方とは、患者の日医療的ニーズに目を向け、地域における多様な活動や文化サークルなどマッチングさせることにより、患者が自律的に生きていけるように支援するとともに、ケアの持続性を高める仕組みです(書籍より引用)。

はじまりはひとりの婦人の相談から(書籍の中では「はじまりの婦人」と呼ばれている)。夫の認知症が進行したことで、自身も介護で引きこもりがちになり、精神的に追い詰められているとのこと。

対応した医師が話を聞いてくれたことで、婦人は一旦満足した。その一方で、医師は「本当に医師として何もできることはなかったのか?」と思い立ち、その後に社会的処方という取り組みを知ることになる。

薬を処方するという普通のやり方では、この婦人の本質的な解決にならない。この夫婦が社会的孤立の状態であることが真の問題で、それを解決できる手段を医師が示すことができたら。これが社会的処方の根本にある考え方である。

イギリスでは、既存の枠組みとして高齢者の社会的孤立を解決するための仕組みがある。イギリスのやり方をモデルケースとして、日本の環境に適合するように社会的処方を広げていけたら。はじまりはそんな取り組みからスタートした。

ちなみに、イギリスでは「孤独担当大臣」という要職もあるほど。とても重要視している。社会的孤立が寿命を縮めると言うと、驚かれるかもしれないが、実際に実験で判明していることでもあるのだ。

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リンクワーカーという要の存在

リンクワーカーとは、社会的処方をしたい医療者からの依頼を受けて、患者さんや家族に面会し、社会的処方を受ける市域活動とマッチングさせるのが仕事です(書籍より引用)

発祥のイギリスでは、医療技術やカウンセリングスキルなど、必要なことを習得させるための養成コースがあるそう。一方で、日本ではそのまま輸入せず、制度ではなく文化としていく方針で決めた。

一人ひとりの知識が誰かの貴重な宝になるという思想のもと、誰もがリンクワーカーとして活躍できるという考え方をしている。

もちろんスキルは必要で、次の4つで規定している。

 ・聴く:「おばちゃん力」で入りこむ
 ・宝にする:どんな経験も誰かの「オモロ」になる
 ・笑わせる:嬉しい・楽しい・ふるえる
 ・つなげる:おせっかいは大切に

まだ日本には本格的に普及していないものの、既に取り組んでいる団体もある。

子どもの孤立を社会的なつながりで解決するために、子どものリンクワーカーである「コミュニティーユースワーカー」の育成に取り組んできた団体「PIECES」の話が書いてあった。

子どもたちと信頼関係を築きながら、地域につないでいける専門家「コミュニティーユースワーカー」の育成に努めているそうだ。

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愛煙家座談会と愛煙家登山

他の社会的処方の取り組み事例を紹介したい。

タバコが健康を害するのは間違い無いけど、医者が説得しただけでは患者はなかなか禁煙に切り替えない。彼らは彼らでタバコが人生に必要なことだと考えていたりする。そこで出てきたコンテンツが、愛煙家で座談会を行うというもの。福井県高浜町での取り組みである。

タバコというひとつの切り口で、社会的なつながりを用意した。そして、この座談会で生まれたのが「愛煙家登山」とのこと。

実際にこの取り組みで、喫煙か禁煙ではなく、自分が自分らしく生きるためにという視点でタバコを考えることができるようになったそうだ。

最終的には禁煙を自ら言いだすまでに状況が変化。無理矢理ではなく、地域とのつながりを通じて自分を見つめ直し、自然な形で禁煙を促した、まさに成功事例と言えるだろう。

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おわりに

社会的処方の目的は、ただ単に人を健康にすることではない。

WHOが示している健康の定義として「健康とは、完全に、身体、精神、および社会的によい状態であることを意味し、単に病気ではないとか、虚弱ではないということではない」という文言がある。単に見た目の健康だけでなく、心身共に健やかになることが、あるべき姿だということ。

本の内容をかいつまんで紹介したが、ぜひ社会的処方の意義を知ってもらい、職業ではないにせよ、リンクワーカーに近づけた存在として、何かしらの形で貢献できたら素敵だと思う。

あなたの知識が誰かの宝になる。そう信じて。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。なるべく毎日更新する気持ちで取り組んでいきます。あなたの人生の新たな1ページに添えたら嬉しいです。何卒よろしくお願いいたします。

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