「我が業は、我が為すにあらず」 〜板極道(棟方志功著)〜
私が棟方氏を初めて知ったのは約40数年前に見たNHKの特番だった
と記憶しています。日本人として初のグランプリ
👉 ヴェネチア・ビエンナーレ国際版画大賞という快挙を成し遂げた
とのことでした。当時はこの出来事がどれ程の偉業であったかなど
知る由も無かったのです。視力がほとんど無く、(左目は失明、右目も極度の
近眼)分厚いメガネを木板スレスレに近づけ、只々ひたすらに彫られている姿が
とても印象的でした。
ここ数年、氏のことを知れば知るほどとても人間的に魅力を感じます。
ご本人そして作品群から「天真爛漫」「豪放磊落」「自然児」といった
イメージを個人的には抱いています。
私自身出身地は島根(松江市)です。地元の老舗和菓子屋さんの看板の字体
・包装紙は棟方氏ご本人によるもの。そして氏の師匠に当たる方は同じく
松江出身の平塚運一氏。当時民藝派の一員として活躍された河井寛次郎氏
(島根県安来市出身の陶芸家)と親交が深かったこと等々。
私自身がここ数年銅版画を作成したり、
木刀を一部使用し制作(現代アート)したりしていましたので
余計に親近感を覚えました。
本著の最終章・・・「わたくしの板極道」の中の文面を一部抜粋します。
ー自分で、今日はいい仕事をしようとか、世界から念願かけて、美というものの
在り方に近づいていく世界、いわゆる念願を融通されている世界、他人が個のため
に美を衆にかけている、他力によって融和されている願望というものこそ本当じゃ
ないか、というような思いが、この短い十年で、からだにはいってきたような気が
するのです。ー
また何気なく見たYoutubeの中でご本人が残された言葉を知り得ました。
👉 「我が業は、我が為すにあらず」
すなわち「自分の残したこの仕事は、自分が成し遂げた仕事ではない。
「大いなる何かが成し遂げた仕事だ」と堂々と言われる。
素晴らしい生き方ですね。
「謙虚さ」と共に人智を超えた世界に絶対的な「信」を置かれている(田坂広志氏
によるコメント)
現在、世界レベルでパンデミックによる緊急事態が続いています。
自分自身とかく眼前の出来事に翻弄され、右往左往しがちですが、少しでもいい
ので棟方氏の様な生き方が出来ればと思います。
#読書の秋2021
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