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人は如何にして体制翼賛へとなるか -宇ロ戦争の論壇から考える

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ウクライナ・ロシア戦争によって表面化した事が多くありました。 とりわけ、西側のジャーナリズムや学術・言論の著しい劣化だけではなく、現実を直視しないで空理空論で突き進む政治や社会…
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人は如何にして体制翼賛へとなるか: 『加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら』執筆にあたっての覚書 - 二度と過ちを繰り返さない・騙されない。

 今回は、少し趣向を変えて、今やってるシリーズ『加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら』をなぜやってるか。ということについて少し書いておきましょう。  私のはてなダイヤリーやnoteを長いこと読まれてる方々には新しいことはないかもしれませんが。 ※2024-11-23: 本連載を読む上で参考になりそうな、2つの文章について、今月いっぱいをめどに全文無料でも読めるように致します。 お値段は付けておきますので、よろしければご購入などお願いいたします。 最大の思いは

¥198〜
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ロシアの侵攻は強権外交の失敗例なのか?

ロシアの侵攻は強権外交の失敗例なのか? JAMES SIEBENS 2022年3月31日 従来の常識はすぐに変わるものである。かつて多くのオピニオンメーカーが、ロシアのプーチン大統領の脅しはハッタリに過ぎないと考えていたのに対し、ロシア軍がウクライナに(再び)侵攻した後、従来の常識は、プーチンは最初からウクライナ侵攻を計画しており、侵攻に先立つモスクワの外交努力は西側を惑わし分裂させるための単なる粉飾にすぎないとする新しい立場に落ち着きました。しかし、逆に、モスクワは強圧

人は如何にして体制翼賛へとなるか:「かけはし」紙なる情報操作や感情動員の結節点の存在、そして、「殺すな!」という言葉の重要さ。 - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(結2)

 この文章は、前半(”人は如何にして体制翼賛へとなるか:視野の歪み、認知の歪みは如何にして「左翼」にもたらされていったか - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(結1)”)からの続きです。 連載は、こちらから: ※今回は、長くなったので、2分割しました。当面、両方とも全文無料で読めるようにはしますが、じきに一部についてご購入をお願いすることにします。  全文を読まなくても後半だけでも話が通じるようには努力しましたが、前半もお読みいただいた上で、出来ました

¥162〜
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人は如何にして体制翼賛へとなるか:視野の歪み、認知の歪みは如何にして「左翼」にもたらされていったか - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(結1)

さて、文章を半月ほど書くどころではないくらいに弱っていましたが、再開しましょう。 終盤三章(第八章〜終章)に関しては、既に出尽くしてる論点の焼き直し以上の物がないので、まずは結んでしまいましょう。 実はこの間、「人は如何にして体制翼賛へとなるか」シリーズに関して、非常に構成に迷っていました。 連載は、こちらから:  というのも、私が批判してきた、加藤直樹くんの『ウクライナ進攻を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房,2024 4月)なのですが、残り3章・残り約10

¥162〜
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『ウクライナ戦争は起こらなかった』

フランスの現代思想家だったボードリヤールに、『湾岸戦争は起こらなかった』という有名な本がある。原著も訳書も1991年に出ているが、お得意のシミュラークル(いま風に言えばバーチャル・リアリティ)の概念を使って、同年に起きたばかりの戦争を論じたものだ。 ボードリヤールは当初、「戦争になるかもよ?」というブラフの応酬に留まって本当の戦争にはなるまいと予想して、外した。しかし、その後に生じたのも「本来こうあるべきだった戦争」とはだいぶ違う、別物ではなかったか? その意味で、(彼が定

人は如何にして体制翼賛へとなるか:ウクライナ・ロシア戦争の2年半の間に日本にもたらされた、最悪の置き土産とは? - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(7)

 さて、一ヶ月以上経ってしまいました。  本シリーズに至っては、2ヶ月近くあいてしまいました。  この間、知り合いから「つまらなくなった」「同じところをぐるぐる廻ってる」などと厳しいツッコミが入って、「確かにそうなんだよなぁ…どういうふうにすればいいものか」とエラく悩んでおりました。正直、今も、特にこのシリーズの残りについてどう書いたものか結論が出てないですが、加藤直樹『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房)を読み解くことで、日本の言論、とりわけ左派

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【論考】星野智幸氏寄稿「正義に依存するリベラル」を鼓舞する魔法の言葉

作家・星野智幸氏の寄稿文が注目 27日に朝日新聞に掲載された作家、星野智幸氏の論考「言葉を消費されて 「正義」に依存し個を捨てるリベラル」が話題になっています。星野氏はいわゆる左派リベラルの属性の文化人。メディアの取材に応じる場合、保守派、右翼的言説、伝統主義への批判が主です。ご本人には申し訳ありませんが、朝日新聞など左派メディアの御用文化人という色が強い人物でした。 ところが今回の論考では現状のリベラルに対しても危惧した内容です。 現在、左派は「人権・環境・反戦」など

東野篤子氏と「ウクライナ応援ブーム」は何に敗れ去るのか

東野篤子氏とその周囲によるネットリンチの被害者だった羽藤由美氏が、経緯を克明にブログで公表された。1回目から通読してほしいが、東野氏の出た番組に批判的な感想を呟いただけで、同氏に煽られた無数の面々から事実をねじ曲げて誹謗される様子(3回目)は、私自身も同じ動画を批判したことがあるだけに、血の凍る思いがする。 研究者どうしのSNS利用が、どうしてこうした事態に至ってしまったのか。手がかりは、今年2月19日に東野氏が行った以下のツイートにある。 これは、ネット用語で「犬笛を吹

ウクライナとガザのさなかに、8月15日をどう迎えるか

年に一度の「戦争を振り返るシーズン」も、実に79回目。不幸なことに、ウクライナとガザの双方で、続く戦争が進行する中で迎える夏である。 昨秋から気にかけてきたが、ウクライナはついにロシア領内へ侵攻する冒険的な賭けに出た。またイランがイスラエルへの大規模報復に踏み切れば、文字どおりの「第五次中東戦争」となろう。 しかし、多くの人の関心は低い。誰も頼んでないのに、青黄のウクライナ旗や赤黒白緑のパレスチナ旗をSNSのプロフィールに掲げ、「参戦」気分だったアカウントの数も、少なくな

戦時に誤りを発信した専門家に「軍法会議」はないのか

8月15日の終戦記念日にあわせて、前回の記事を書いた。実際には兵站が破綻しているのに「あるふり」で自国の戦争を続けさせたかつての軍人たちと、本当は(信頼に足る)情報なんて入ってないのに「あるふり」で他国の戦争を煽り続ける専門家たちは、同類だというのが論旨である。 とはいえまさか、ここまで即座に「そのもの」の事例が飛び込んでくるとは思わなかった。元の報道は14日付の米国紙WSJだが、以下の読売新聞の記事が概略を押さえている。 ポイントは、 ということである。むろん逮捕状が

79回目の終戦記念日を前に、あるドキュメンタリー番組を見て「自分が歯向かい続けてること」の意味と理由を書こうと思ったので、書いてみる。

 79年前、日本が敗戦した「終戦記念日」が近づいてきました。  今朝(2024年8月11日)の早朝に、NHK Eテレで再放送された、中沢啓治の「はだしのゲン」を中国語版に翻訳した坂東弘美氏を取材したドキュメンタリーの再放送を録画したのを今見ていますが、それを途中まで見て、衝動的にこの文章を書いています。  これの最初の25分くらいを見て、ウクライナとロシアの戦争に対して、私がここまでこだわって「歯向かってる」のか。ということについて、書くべきだと思ったからです。 ※この

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人は如何にして体制翼賛へとなるか:客観と主観の葛藤、そして、主観主導で歪んでいく、認知 - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(6)

 もうすぐ7月も終わりますが、シリーズの続きを書き始めましょう。  さて、加藤直樹『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて』(あけび書房)を読み解くことで、日本の言論、とりわけ左派が如何にして無責任になり劣化してるか。ということを漁っていくシリーズ、章が深まるにつれてどんどんと個人的にはいやーな気持ちになっていくような、なんというか、こんな軽い物事の見方をしてて良いのだろうか?と言う風に、加藤くんだけではなく加藤くんと同じ様な考えや世界観で動いてる左右の人達全般に対

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人は如何にして体制翼賛へとなるか:アメリカやネオコンのナラティブを内面化することの、悲喜劇 - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(5)

 ちょっと間があいてしまいました。  この間に、ウクライナが戦争を終わらせる方向に微妙に舵を切りはじめました。 ※2024-12-03: 12月20日か12月いっぱいくらいまで、本シリーズの(1)〜(5)を全文無料で読めるように致します。 どうかみなさま、この機会に切り要られた文章などへの「サポート」「投げ銭購入」でのご支援をよろしくお願い申し上げます!! まえがき:停戦/終戦に向かう世界と、あらわになってきた「隠された現実」。  数日前にも、ハンガリーのオルバン首相が

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人は如何にして体制翼賛へとなるか:「英雄願望」のもたらす知的頽廃 - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(4)

 少し間が明いてしまいましたが、再開していきましょう。  この一ヶ月ほどで、ロシア・ウクライナ戦争も大きく動きました。とうとう、ロシアが、ウクライナ国内の発電所やガス貯蔵施設を全面的に攻撃するという最悪の状況になってきてる。ハリコフにせよその他の前線にせよ、ウクライナ側の兵隊が時間稼ぎだけのためにすり潰されるような「肉の盾」にされてしまうことが、目立つようにもなってきました。ウクライナ側での「肉の盾」自体は、2022年の末くらいから行われ始めていたのですが…。 ウクライナ

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