Yonaha Jun

與那覇潤です。2023年11月に『危機のいま古典をよむ』と『ボードゲームで社会が変わる』(共著)を出すのに合わせて、始めることにしました。基本は、掲載・出演情報を「おまけ」を添えて上げていくつもりです。

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    なんていうか、自分がどんな人かがいちばんよく「抽出されている」記事だけを足していきます。なるべくPRものや、他のマガジンとの重複は避けます。エッセンスを手短に読みたい方はこちらを。

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    與那覇潤が寄稿した論考や、出演するイベントの告知記事です。なるべく「〇〇に出ます」以外にも、おまけをつけるよう努力しています。ご予約の参考や、ビブリオグラフィー代わりにどうぞ。

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2024総選挙評: なにが「保革伯仲」を再来させたか

10月27日の総選挙は、予想外に劇的なものとなった。自民党は200議席を切り、公明党も大敗して、与党は過半数割れ(18議席の不足)。何度やっても似た結果だった平成末期と異なって、久しぶりに歴史に残る選挙になったと言ってよい。 野党第一党の立憲民主党と、自民党との差も、いまや50を下回る。しかし、議席を4倍増で28に伸ばした国民民主党により注目が集まるなど、平成期なら必ず言われた「二大政党制へ!」という空気はあまり感じない。 この結果をどう見るべきか。選挙戦の最中、目を惹い

    • 疑惑の兵庫県知事を再選させた「見えない敗戦」

      11月17日の兵庫県知事選が、再選をめざした前職の「ゼロ打ち当確」に終わり、世相が騒然としている。むろん、当選した斎藤元彦氏がパワハラ疑惑の渦中の人だからである。 刑事被告人のまま米国大統領選に勝利した「トランプを思わせる」とか、斎藤バッシングが主流だったマスコミを「ネットメディアが覆した」とか、様々に言われているが、個人的には違う視点が気にかかる。 疑惑の発端となった告発文書が、収賄罪(パーティ券の見返り)や横領罪(キックバック)につながる可能性のある指摘と、具体性を欠

      • ウクライナ政治の悲劇: 民主化への道はどう「戦争に」開かれたか

        あまり知られていないが、ヘッダーの左の本の著者は私の指導教員である。専門が明治維新史なので、実は私も博士論文は「実証的」な明治史だった(笑)。かつ琉球処分という「領土の併合」を国際関係史の立場で研究したので、ウクライナでいま起きている問題にも関心を持ってきた。 開戦から2か月強の時点で、「はっきり勝ち負けをつける」形で戦争を終えようとする姿勢に懸念を呈したのは、(いちいち書かなかったけど)当時の研究成果を踏まえてのことである。だが絶版になった私のデビュー作なんて、どうせ誰も

        • ダブスタを嫌悪した果てに、「シングル・スタンダード」の戦争が始まる

          選挙直後から囁かれたとおり、米国は大統領・上院・下院をすべて共和党が押さえるトリプルレッドが決まった。2016年と異なり、トランプがハリスを総得票数で上回るのもほぼ確実で、実質4冠。非の打ちどころのない一方的な全面勝利である。 過疎地に住む人種偏見の強い白人といった、従来イメージされた「トランプ支持者」だけで、こうした結果が出せないことは明白だ。むしろ今回、共和党候補への白人の支持は微減しており、そこに希望を見出す議論もある。 圧勝の鍵を握ったのは、マイノリティの動向だ。

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          日本のメディアの国際報道は、どこで世界とズレているのか

          想定を超えるトランプの圧勝以来、例によってネットでは「予想を外した」マスコミへの冷笑が盛り上がっている。 嗤われても仕方ない面はあって、そもそも対立候補が弱々しいバイデンだった時期、日本のメディアは「ほぼトラ」「確トラ」などと言って遊んでいた。ところが7月に候補が替わるや「ハリス推し」が始まり、彼女が次第に勢いを失っても「ほぼトラ」表記は復活させず、せいぜいが接戦だとしてお茶を濁す報道に終始した。 とはいえ、結果が出てから「マスゴミガー!」と勝ち誇るだけでは、ただの後出し

          日本のメディアの国際報道は、どこで世界とズレているのか

          道化師たちの日米選挙: なにが「チンドン屋のお祭り」を民主主義にするのか

          大接戦で勝者の確定に時間がかかる、と目されてきたアメリカの大統領選挙は、あっさりとトランプの当選が決まってしまった。「2016年の雰囲気に似てきた」とする先月の不吉な予感が、遺憾にも当たった形である。 とはいえ、ぼくもまたもう少しは接戦になると思って、勝敗不明のあいだに「つなぎ」の記事を出そうと準備していたから、どうよ俺の予測が的中だぜ! みたく威張れた柄じゃない(汗)。だけど読み直したら、書いていた内容自体は悪くなかったと思うので、以下、手直しして公開する。 ご存じのと

          道化師たちの日米選挙: なにが「チンドン屋のお祭り」を民主主義にするのか

          東野篤子氏が誹謗中傷問題について「語っていない」こと

          率直に言って、私の主たるテーマではなく、もうあまり関わりたくないのだが、インターネットで流布する言論が粗雑にすぎるので、手短に。 11月5日に、文春オンラインが「東野篤子氏をX上で中傷した警察官が、略式起訴され罰金刑になった」旨で、以下の記事を出した。ヘッダー写真のとおり「Webオリジナル」の表記があり、書類送検時には紙媒体(『週刊文春』本年6月27日号)でも報道されたのに比べると、扱いは軽い。 報道を受けて翌6日に、東野氏がnoteで背景を説明した。一方で、彼女からX上

          東野篤子氏が誹謗中傷問題について「語っていない」こと

          『ウクライナ戦争は起こらなかった』

          フランスの現代思想家だったボードリヤールに、『湾岸戦争は起こらなかった』という有名な本がある。原著も訳書も1991年に出ているが、お得意のシミュラークル(いま風に言えばバーチャル・リアリティ)の概念を使って、同年に起きたばかりの戦争を論じたものだ。 ボードリヤールは当初、「戦争になるかもよ?」というブラフの応酬に留まって本当の戦争にはなるまいと予想して、外した。しかし、その後に生じたのも「本来こうあるべきだった戦争」とはだいぶ違う、別物ではなかったか? その意味で、(彼が定

          『ウクライナ戦争は起こらなかった』

          「自由民主主義的な全体主義」の予見者・西尾幹二氏を偲んで

          独文学者(ニーチェ研究)で保守の論客としても知られた、西尾幹二氏が亡くなった。1935年生で、享年89歳。ご冥福をお祈りする。 平成が青春だったぼく(79年生)の世代にとって、西尾さんはなんと言っても「新しい歴史教科書をつくる会」(97年結成)の初代会長である。実は、つくる会的なネオ・ナショナリズムには批判的なリベラル派にも、ちゃんと人文的な教養を持っている人には、隠れ西尾ファンが結構多い。 まぁまさにぼくがそうで、他にもいっぱい知ってるんだけど、名前を出すとぼくはともか

          「自由民主主義的な全体主義」の予見者・西尾幹二氏を偲んで

          御礼: 米光一成『人生が変わるゲームのつくりかた』に拙著が掲載!

          7月に順天堂大学のイベントでお目にかかった、ゲームデザイナーの米光一成さんに、新著『人生が変わるゲームのつくりかた』をご恵投いただきました。末尾の「次に読んでほしい本」のコーナーで、私と小野卓也さんの共著『ボードゲームで社会が変わる』を挙げてくださっています。 そもそも同書の刊行後まもなく、米光さんにはサブスク番組の形で採り上げていただいたこともありました。改めて、御礼申し上げます。 お返しにご新著の紹介をと思うのですが、この『人生が変わるゲームのつくりかた』、なんといっ

          御礼: 米光一成『人生が変わるゲームのつくりかた』に拙著が掲載!

          「読み書き」するほど賢くなくなる人は、どこが問題なのか

          ぼくも隔月で載せていただいている『文藝春秋』の書評欄で、平山周吉さんが、その月でイチ推しの新書を紹介するコラムを持っている。 もうすぐ次の号が出ちゃうのだが、11月号では「大げさに言えば、「国民必携の新書」」として、佐藤卓己先生の『あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ』を挙げていた。民主党への政権交代が起きた2009年以降、震災からコロナまで激動だった15年間の時評を集めつつ、専門のメディア史の観点から位置づけた本だ。 で、読書家の人ほど、サブタイトルを見て

          「読み書き」するほど賢くなくなる人は、どこが問題なのか

          政党か、人物か?: 投票前に想い出す過去

          いよいよ久々の衆院選の投票日が来るけど、こんなに妙な選挙は有権者として、記憶がない。 どこの政党も「脛に傷あり」の状態なので、投票する意欲は盛り上がらないけど、その分結果がどこまで行くかが見えないので、予想の当てっこはむしろ盛り上がる。政党という単位で見れば、勝ちに行くというより「少なく負けるレース」で、全党が競いあっている感さえある。 なので選挙戦中、いちばん印象に残ったのは、日本維新の会を追い出される形で今回「不出馬」となった、足立康史前議員の発言だった。 ……うー

          政党か、人物か?: 投票前に想い出す過去

          大学への進学率は、ぶっちゃけ何%が社会にとって「適正な水準」なのか?

          先週刊行の『表現者クライテリオン』11月号にも、連載「在野の「知」を歩く」が掲載です! 以前もご案内した、コンサルタントの勅使川原真衣さんとの対談の後半部。 自分で言うのもなんですが、前半よりもなお一層、幅広い話題をがっつり詰め込んでお届けしています。ぜひ書店で、手に取ってみてください。 さてその紹介ですが、なかでも極めつけの読みどころは、ここかなと。 いやぁ、耳が痛い……っていうか、もっと痛くなるべき面々が大学教員しながらTwitterとかやってる気がしますが、おーい

          大学への進学率は、ぶっちゃけ何%が社会にとって「適正な水準」なのか?

          資料室: 明治維新と日本の競争社会の「それから」

          今月10日の先崎彰容さんとのイベントは、オンラインでの視聴も含めると70名超が参加して盛り上がった。終了後も、筆ペンで丁寧にサインする先崎さんに長蛇の列ができて、散会したのはなんと1時間後である。 唯一の心残りは戦後日本論が弾みすぎて、『批評回帰宣言』でいちばん好きな漱石を論じる章を、話題にし損ねたことくらいか。採り上げられているのは『門』(1910年連載)だけど、せっかくだと思い、その後いわゆる「三部作」を遡る形で読んでいったら、気づいたことがあるのでメモ。 『それから

          資料室: 明治維新と日本の競争社会の「それから」

          オープンレター前史: それは「鍵をかけた」ことで始まった

          昨日の記事に対しては、おそらく見えないところで(いや、公然とかな?)揶揄する人が出てくると思うので、あらかじめ釘を刺しておく。 2021年の3月に、鍵をかけたアカウント(フォロワーは4000人前後で、9万3000人の東野篤子氏よりだいぶ少ない)の内側での発言がきっかけで、大炎上を起こした学者がいる。私まで巻き込まれて、ずいぶんな迷惑を被ったことは、このnoteを読む方はほぼご存じだろう。 実は、その呉座勇一氏はもともと、とくに鍵はかけずにTwitterを使っていた。当時す

          オープンレター前史: それは「鍵をかけた」ことで始まった

          大学が「アカウントに鍵をかけた学者」を雇用するリスクについて

          Twitterでネットリンチの被害にあった羽藤由美氏が、その中心にいた東野篤子氏のnoteの記事に、怒っている。 入試の実施にあたり誰が責任者を務めているかは、試験問題を誰が作ったかと同様に、大学で最高レベルの秘匿事項である。私も准教授時代に何度も担当したが、辞めるまでは一切、その体験については文字にしなかった。 勤務先の機密を平気で公開する教員が、近日まで国防やインテリジェンスを論じていたのも不安になるが、東野氏の当該のnoteについて、私は別の点がいっそう気にかかる。

          大学が「アカウントに鍵をかけた学者」を雇用するリスクについて