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世界唯一の牧場の旅【1日目】

私は今、
日本で唯一、いや世界中探してもここだけにしか存在しないと言われている牧場に取材に来ています。
その牧場の名前は【想いやりファーム】。
なぜ私がここにいるのか(はじまりのお話はコチラ)

想いやりファームは、〝生乳〟という牛の乳を、非加熱そして無殺菌の状態で販売を許された、唯一の牧場です。

想いやりファームは、北海道の帯広駅から車で40分ほど離れた場所に位置します。帯広の市街地を抜けると、信号も分かれ道もない、ただひたすら直線だけの道が続きます。その直線道路の長さは、まるでハリウッド映画のワンシーンです。
(道中は広大な畑、牛舎、畑、の連続。途中でガソリンがなくなったら大変です。北海道の皆さんは車移動の際にガス欠にならないように、こまめなチェックが重要だそうです。私は常にギリギリでガソリンを入れるタイプなので、北海道でガス欠を起こして、大迷惑をかける自信があるな、と思いながら車窓からの景色を眺めていました。)

どこまでも続く長い直線。もしこれを徒歩で歩かなければ…と思うと、気が遠くなりますね(汗)

私が到着した日は、10月下旬。峠では雪が観測されたそうで、最低気温がマイナスを表示していました。「北海道は寒いですよ。準備してくださいね。」と、会長から伺っていたので、覚悟はしていましたが、強風も加わって想像を超える寒さ。すぐさまダウン。急いでユニクロに駆け込んで、帽子や重ね着のズボンを購入しました。12月でも半袖でみかんの収穫をしている浜松人には信じられない寒さです。

会長に運転していただいてファームに向かう途中。帯広市街を抜けてから、車と何台すれ違ったでしょうか。静かな道路の横には、coco-Rinがいつもお世話になっている甜菜糖の畑が。収穫の最後の時期を迎えているそうで、大きなトラクターが畑の向こうで忙しそうに動いているのが見えます。収穫が終わると、畑は雪に覆われ、さらに人の気配がなくなるそうです。

これらの広大な畑は、先人達が開拓して今に至ります。まさに、ドラマや映画、漫画で知るストーリー。
北海道開拓史について詳しく載っているサイトがありました。
※本州の名前と同じ名前の地名が北海道にあるのは、開拓した移民の人達の出身地から来ているのですね!

向こうが…遠すぎて見えない…


そして長谷川会長ご自身も、34歳の時に本州神戸から中札内村という地に足を踏み入れ、想いやりファームという牧場を一から創り上げたのですから、、、。会長と先人達の熱い想い、そして何かをやり遂げようと挑んだ情熱を想像して胸が熱くなりました。

今回、私の息子も取材に同席していました。あちこちに牛舎や牧場の看板を見かけます。それくらい乳牛が盛んなことがわかります。「牛だ!」「牛だ!」と最初のうちは2人でテンション高く声に出していましたが、本当にあちこちに牧場があるので、途中からは声も出す必要もなく…その分、これから出会う想いやりファームの牛達への対面に、ワクワクとドキドキの気持ちを高めるのでした。

高まる気持ちを抑えているうちに、ファームに到着しました!

入口には可愛いピンクの看板。
※関係者以外立入禁止です

無事に牛達と出会えるのでしょうか!?

ふわふわの◯◯!?

あれ?牛達がいない。
誰もいない!牛達はどこへ!?広い牧草地。敷地は、外周を見回るだけで1時間かかるそうです。

到着したのはお昼2時ごろ。この時間は牛達は搾乳室にいるそうで、広い牧草地には誰もいません。ご対面は、もう少し先になりそうです。

ですが、この牧草地を見るだけでも非常に面白いのです。見渡す限りふわふわの草が生えているのがわかります。これが想いやりファームの牧場の象徴だそうです。
今は冬前なので、少し枯れてしまった色も混ざっていますが、春になると黄色い花が一面に咲いて、それはそれはとてもとても美しいそうです。春から夏場は一斉に草が生え、人間の腰以上の高さの草になります。
子牛だとすっぽり隠れる高さ。

以前、会長から牧場の話を聞いてイラストを描いたことがあります。

実際は私の想像をはるかに超えた、美しい牧草地でした。

牛達はこのふわふわの草を食べて生活します。牛達はこの草と水飲み場の水、そして塩(ミネラルを欲するため、牛達が自由に舐められるように、塩を置いている)だけを食べて生きているそうです。

こちらが本社と生乳の工場。白い色に優しいピンク色が可愛いですね。

よく見ると牛柄になっています。遊び心を感じます。
事務所には現社長がデザインして作った素敵な切り絵や、貴重な写真が飾られています。


草を食べる音を聞く

午後2時30分ごろ。搾乳を終えた牛達が、牧草地に戻ってきました。普段は和装の会長も、緑色のつなぎに衣装チェンジして、牛の刺繍が入った可愛い帽子を被り、牧場の中に入っていきます。

会長は歩きながら、ファーム隅々の環境を
注意深く観察しているようです。


牛達のお食事タイムがスタートです。
ふわふわの牧草を、むしゃむしゃと食べ続けるのです。取材をしていると、牛と何度も目が合うのですが
その目は会長と同じように、とても優しく、それでいて全て見通しているような目をしています。

草を食べている牛達のそばで、会長はただ、牛達を見守ります。

声をかけるのでもなく、ただ、そこに寄り添うように。

会長は、そうして牛を見ているだけで、健康状態を把握しています。そして話さなくても目や気配で牛達と会話もできるようです。

お腹を空かせた牛達は、
ふわふわの草をむしゃむしゃ食べ続けます。

子牛達のエリアに行くと、
「お母さんが来たー!」っと、嬉しそうに会長に駆け寄ります。

子牛達はとても嬉しそう。

想いやりファームの牧場では、牛達の鳴き声は聞こえません。ただ、ただ牛達が草を食べる音と、牧草地を通り抜ける風の音が聞こえます。

会長を見ていると、「風の谷のナウシカ」を思い出します。会長はナウシカかもしれません。
虫達の声を聞き、虫達と心を通わせるために待つナウシカ。共に自然と生きるために何ができるか考え、強い意志でその道を切り開いていく。

会長が牧草地を歩く姿を見て
ナウシカのラストシーンと重ね合わせてしまうのは
このファームの空間が特別だからなのでしょう。

まるで映画「風の谷のナウシカ」のラストシーン。
金色の絨毯のような美しい空間。
なんて美しいのでしょうか。
午後4時ごろ。日高山脈に太陽が沈みます。

静かな牧場はさらに静けさを増して、一日の活動を終えたようです。お腹いっぱいになった牛達も、ふかふかの草の上で眠りにつきます。

続く…

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