5books|牧野健太郎『浮世絵の解剖図鑑』(エクスナレッジ、2020年)
日本が世界に誇る浮世絵。そこには江戸時代の暮らしが反映され、つくり手たちによる構図や摺りの工夫、絵解き・謎解きが盛り込まれています。
とはいえ、正直良さも見方もわからない! 江戸の風俗なんてわからない!
そんな時は、『浮世絵の解剖図鑑』にお任せあれ!
建築系の出版社エクスナレッジが刊行している「解剖図鑑」は、建築をはじめ美術や神話、ファッション、スポーツといった多彩なジャンルを、イラストを使って隅々まで解説する人気シリーズ。
本書は約60点の浮世絵作品のみどころを、イラストと解説、コラムで紹介しています。
明快なイラストと豊富な解説
全ページにイラストが掲載されていながら、誌面の隅々まで情報が満載!
すべての作品をイラストに起こしているので、細部に描かれたモチーフも見やすく、作品の構造もわかりやすい。文章もやわらかく、現代で言うところの〇〇のような言い方もされているので、非常に読みやすいです。
作品を余すところなく堪能
注目すべきポイントは5〜6点以上取り上げられ、マップやコラム、小口の余白(ページ端の縦の余白)には、一歩踏み込んだうんちくが盛り込まれています。
例えば、葛飾北斎《冨嶽三十六計 神奈川沖浪裏》では、どこからみた風景か、画中に描かれた船が何に使われていたのか、どうやって漕いでいたのか、北斎のいつごろの作か、印象派を驚かせた波の表現、色彩について、さまざまな角度から見どころを解説しています。
他にも、こんな注目ポイントがあります。
特に浮世絵には、手前のモチーフを過剰に大きく描くことで遠近感を強調するダイナミックな構図や、家紋や布の模様、小道具の種類で人物の名前や身分を推測させる表現が多く見受けられます。
浮世絵や江戸文化に造詣がなければ、これだけのポイントに気付くのは不可能に近いでしょう。(西洋美術でも歴史画や神話画、宗教画などは、聖書や古典の教養がある王侯貴族にしかわからないものでした。それは現代においても、美術へのとっつきにくさにつながっています。)
本書の知識を丸々覚えて鑑賞に生かすのは難しいですが、なんとなく眺めずに各モチーフをじっくり見ていくようにすれば、何かしらに気づけるようになるかもしれません。
ざっくり感想
今年から友人たちと読書会を始めました!こんな感じで、かなりフランクに感想を書いて、月一で共有しています。(当初は文通にするアイディアだったので便箋に書いている)
今年は読書量を増やして、たくさん本を紹介していけたらと思います!
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