中小企業経営者に聞いた女性活躍について/中小企業ワークスタイル研究会のこれまで②
今から10年以上前の2013年12月19日、「中小企業ワークスタイル研究会」のプレオープン講座、「中小企業経営者に聞きたい!正直女性社員活用ってどうですか?!」が開催されました。その当時のイベントレポートを今ふりかえりながら、これまでの変遷を辿っていきます。
1.中小企業ワークライフバランス経営について
トークセッションに入る前に、企業や個人における「働くこと」に関して現実と課題とにスポットをあてる時間を共有しました。
今後、個人と企業の間に何が必要になってくるのか、双方にどのような視点が必要になってくるのか、社会の変化と共に掘り下げていきました。
キーワードとして「中小企業ワークライフバランス経営」という言葉をかかげ、「仕事と生活の調和」を企業として、今後は経営戦略にあてるべき要素に変化していることをシェアしました。
2.経営者のトークセッション
インプットの時間から、実際の中小企業経営者の方々が、企業において女性の働き方にどのようなフォーカスをあてているのかや「課題は何か」などを掘り下げていく時間に移っていきました。
スピーカー経営者の皆様は神奈川県横浜市を中心として活躍している4名、写真左から
株式会社協進印刷(現:株式会社ココラボ)代表取締役社長 江森克治様
株式会社キクシマ 代表取締役社長 菊嶋秀生様
株式会社神奈川ナブコ 代表取締役社長 原信治様
株式会社フェアリーランド 兼 社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表 菊地加奈子様
①株式会社協進印刷(現:株式会社ココラボ)について
印刷物をお客様の問題解決のソリューションの一部と捉えて印刷事業を展開する株式会社協進印刷では、当時、印刷を手掛けていくデザイナーの多くに女性社員が働いておりました。
中でも優秀な女性社員のデザイナーが出産を経て戻ってきたあと、仕事と育児の両立に悩み、辞めてしまった過去があったと触れられました。
そのような状況を経て試行錯誤する中、子育てと仕事が両立ができるよう、シェアオフィスなどを借りて子どもを預けながら働くことができる場所があるといいのではないか、と今後の展望を述べられました。
子育てと仕事の両立支援は企業ごとに違いますが、そのような柔軟性がみえることは、個人にとって働きながら子育てを両立できるだけではなく、企業にとっても出産・子育てなどライフイベントを経ても「仕事を辞める」という選択肢以外の提示ができる活路となりそうです。
②株式会社キクシマについて
「建設業」という男社会が根強いと言われている業界にある株式会社キクシマの中でも、「現場は男性社員、内勤は女性社員」という形が当たり前のような風土があったという過去を振り返ってもらいました。
しかし、新しい取り組みとして、男性社員がおこなっていた現場業務の中で、お客様と建築家とをつなぐコミュニケーション役の業務を切り出し、そこを女性社員に任せてみたところ、適任な女性たちがこの業務で活躍している現状につながっていると教えていただきました。
「クライアントパートナー」という新しい職種を作った菊嶋社長は、今後はこれまで主婦だった女性を増やしチーム制にしていくことでもっと発展できるのではないか、と構想しているとのことでした。
また、主軸の建設業だけではなく地域との連携、地域への貢献事業も展開しています。本社ビル屋上で養蜂事業を展開し、事業・地域・社員・子どもがつながるような活動もされており、そのような地域に根ざす活動において、ある女性社員が自分の能力を発揮してプロモーションを担当し活躍している様子を伝えてくださいました。
③株式会社神奈川ナブコについて
「うちの会社が一番女性の働き方については進んでいないのかもしれません」と、冒頭言葉に出しておられた原社長でした。
主に全国にある自動ドアやステンレス建材の販売、保守などをおこなっており、支店のほとんどは少数精鋭のため男性社員が主に現場を担当、女性社員は内勤が中心の構成である様子。
しかし、原社長の考えを変えるきっかけになった女性社員の存在を明かしてくれました。チームや組織に対して能動的な働き方をしている一人の女性社員を見て、彼女がこのように全体を見る目を持ってくれていることをとても嬉しく思っていた原社長。どうしてそのような目線になっているのかをご本人に尋ねたところ、「私がこの業務のことを詳しく知っていたら、もっとお客様に対して迅速に対応できるから」と答えてくれたそうです。
企業にとって、お客様にとって、同じ目線で高い貢献を目指して働いていることに変わりはなく、意識を変えるきっかけになったと明かしてくれました。
原社長ご自身が4人のお子さんの父親でもあり、子どもを産み育てることに寛容で、子育て手当の制度を厚く設計していたことも伝えてくれました。
④株式会社フェアリーランド 兼 社労士法人ワーク・イノベーションの場合
育児と仕事を両立する女性のひとりであると同時に、同じように両立する女性を雇用する側でもある菊地社長から見た視点を語っていただきました。
菊地社長自身も、4人のお子さんの母であり、スピーカー当時には5人目を妊娠されておりました。専業主婦期間を経て、再び働き始めるにあたり社会保険労務士の資格を取得、現在は社労士として企業にも関わっています。また、株式会社フェアリーランドの代表をつとめ、認可外保育施設をつくり、子育てしながら働きたい女性の子どもを預かる場所も運営されています。
ご自身もお持ちであった「子育てしながら働きたい」という女性の意思や、実際に働く女性において扶養に関しての意見の相違など、組織との接点で課題にあがりそうな点を、多様な視点からお伝えいただきました。
「私のように、仕事を100%、子育ても100%、やりたい人もいると思っています。このような人が子育てしながら働き続けることができる環境を、私自身も作っていきたいです」
女性の働く選択肢を創る、強いメッセージをいただきました。
3.ワークショップ
「女性社員が活躍できないとされる理由は何か」会場に参加した皆さんと共に、課題を言語化して書き出しグルーピングしたあと、その課題を解決するために阻害している固定観念とは何かをディスカッションし合いました。
課題の軸が「働き方」「組織」「社会」のそれぞれに理由があることが可視化されてきて、次にその課題をどう飛び越えていくかについても、参加者同士で話し合っていきました。
言葉にして共有していくことでさらにそれぞれの思考が深まっていく中で、3つのグループそれぞれのディスカッションが多いに盛り上がり、数多くのキーワードが飛び交っていました。
4.中小企業ワークスタイル研究会の存在とは?
最後に当法人ファウンダー堀江より、「これからのワーク・ライフ・バランス」とは「既存の制度・業務に留まらず固定観念をはずして企業ごとの新しい戦略をつくる」「企業・個人それぞれ今ある枠を飛び越えること」をつくっていくことだと提示し、中小企業ワークスタイル研究会は互いの知見や学びを培っていくものにしていきたい、という形で会を終了していきました。
当時の場にご参加いただきました皆さん、ゲストである江森社長、菊嶋社長、原社長、そしてファシリテーターとして菊地社長、後援をいただきました横浜市経済局の皆様、場所をご提供いただきました横浜商工会議所様、本当にありがとうございました。
5.2024年の今、ふりかえってみて
2013年12月。その当時はまだ女性活躍推進法も働き方改革関連法も施行されておらず、ワークライフバランスや女性の活躍(当時は「活用」という組織目線の言葉も使われていました)という言葉が生まれてはいるものの、
「それは一部の大企業の話」という風潮は高く、中小企業の中では目指す企業とそうではない企業のギャップが少しずつ見えてきている印象でした。
この場に集まっていた人たちは、必要性・重要性を感じている個人や組織が集まり、課題感の認識やその実践を対話し合える時間がありました。
ひとり一人、一社一社の試行錯誤や模索や挑戦から、「働き方の変化が生まれている」という実感を感じた場でもありました。
【お知らせ】
働き方の変化を生み出したい、創りたい....!そんな社会の変化が起こっていた最中から年数を経た今、「小さな組織の働き方を学び合うコミュニティ」として場を再構築していきます。皆さんと共に小さな組織の多様な働き方を、その挑戦や模索や継続を学び合える場所を創っていきたいと思います。
小さな組織の働き方を学び合うコミュニティ CAMPFIREコミュニティ (camp-fire.jp)