⑥『深い河』と知性について
NHKのお正月特番「100de宗教論」がおもしろかった!
そのなかで『おもいがけず利他』の著者中島岳志さんがとりあげていたのが
遠藤周作著の『深い河』。
学生のころ、遠藤作品に馴染みがあった記憶と、この作品が群像劇だったことで興味がわき読んでみました。
登場人物ひとりひとりを丁寧に描写したものが好きなのです。
宇多田ヒカルの『DEEP RIVER』はこの『深い河』にインスパイアされて10代の頃に作ったそうですが、命や生きることに目をむけるのは年齢ではなく、生きざまなんだなあと感じ入りました。
この作品の読書感想を一言でいうのはとてもむずかしい。「おもしろかった」とか「考えさせられた」とかそういうのではなくて。
どーんと思い球を投げ込まれ、ずしんと受け取る感じが嫌じゃなかった。
神さまや信仰、愛、生と死についてはそれこそ白黒つけるものではなく、生き続ける限りそれぞれのかたちで存在するものだと思うので、日本やインド、登場人物たちの人生を通していろいろな考え方、世界をみることができたのがその理由だと思います。
一方で、1980年代の日本が舞台なのですが、夫婦とは、男とは、あたりの違和感がすごい(笑)
当時は魂やスピリチュアルなんて、インチキくさい以外の何物でもなく、許容範囲がひろがった今を考えると、社会のなかの良し悪しは、なんて水物なんだろうとそっちがやけに感慨深かったり。
『悲しみよこんにちは』の著者サガンの言葉です。
生だけでなく、死にもたくさんの捉え方がある。インドという国のカオス、エネルギーに埋没させられた作品でした。
変な言い方だけど「本読んだ!」ってすごく思って、ちょっと脱力(笑)
知性という能力が鍛えられたよき読書でした。