世界は積読に溢れている 9

 前回は読んだ本について書いてしまいました。今回こそ積読している本について書こうと思います。

 村上春樹著、『街とその不確かな壁』を、発売以来1年間、机の上に乗せたままにして、いつか開く日を待っています。
 『1Q84』あたりから始まった村上春樹著作限定の、能動的に積読するルーティーンなのですが。
 新作長編が出れば、必ず発売日に書店に行って買う。そして読まないまま常に見えるところに置き、年単位で熟成する。たまに手に取って埃を払うが、まだ読まない。そして丁度良い期間を経て、ある日おもむろにページを開き、その後は一気呵成に読み終える。

 読み終わっちゃうのがもったいないからかもしれないし、実は単に気が乗らないのかもしれないし、あの濃密な世界に潜るには、たいてい気力体力が足りていないからかもしれない。
 いずれにせよ機が熟すのを待ってから読むことになっていて、しかし機が熟すとはどういうことなのかは、自分でもわからない。
 今もキーボードの横に置いてあるのだけれど、まだその時は来ていないようなので、しばらくはこのまま、机の上でその表紙を閉じて眠っていてもらうことになりそうだ。
 帯に「村上春樹が、長く封印してきた”物語”の扉が、いま開かれるー」とあるけれど、この部屋に設えられた扉は未だ開く気配がありません。
 世界は無自覚な積読に溢れていて、自宅も積読に溢れてはいるのだが、この1点に関しては、確信を持って積読は続く。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?