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利己的な遺伝子(40周年記念版)

「利己的な遺伝子 The Selfish Gene」(リチャード・ドーキンス 著)

第1章 人はなぜいるのか
第2章 自己複製子
第3章 不滅のコイル
第4章 遺伝子機械
第5章 攻撃 〜安定性と利己的機械
第6章 遺伝子道
第7章 家族計画
第8章 世代間の争い
第9章 雄と雌の争い
第10章 ぼくの背中を搔いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう
第11章 ミーム 〜新たな自己複製子
第12章 気のいい奴が一番になる
第13章 遺伝子の長い腕

はじめに

進化:地球の生物は30億年かけてある個体が他の個体よりも長く生き残る子孫を残し、遺伝的因子(遺伝子)の繁殖に成功した。これを自然淘汰による進化という。

遺伝子:自然淘汰の単位として機能するのに十分な期間維持される染色体の任意の部分。個体は遺伝子の乗り物。遺伝子群が自然選択で選ばれていく。

利他主義の進化:動物たちは自分の子供だけでなく遺伝的に繋がりのある親戚も世話をする。個体としては損であるが、集団としては有利な行動。利他的な行動は、自分が生き残ることだけを考えている利己的な遺伝子による指令、個体の利己主義。

利己的な遺伝子:私たちやあらゆる動物は、遺伝子によって作り出された機械である。成功した遺伝子の特質は利己主義。

ミトコンドリアと系譜:ミトコンドリアからh血縁関係を見ることができる(全ての生物に含まれるミトコンドリアは母親だけから伝達されるため系譜がわかる)

ミーム:文化の進化において、遺伝子に対して文化的伝達の因子をミームと名付けた。

第1章 人はなぜいるのか

遺伝子は個体の行動における利己主義を生み出すが、利他主義を助長することによって自分自身の利己的な目標を達成するような状況もある。しかし人間はあらゆる動物の中で唯一文化によって学習され伝承される。動物の利他的行動で顕著なものは母親の子に対する行動。

第2章 自己複製子

自己をコピーする自己複製子(遺伝子)。重要な特性として、
1 長時間の存続
2 複製の速度(多産製)
3 コピーの正確さ

第3章 不滅のコイル

遺伝子は人体を作り上げるのを間接的に支配しているが、一方通行であり、獲得形質は遺伝しない(どれだけ知識や知恵を得ようとも遺伝では伝わらない)。新しい世代はゼロから始めなければならない。
一つの乗り物に、何千もの遺伝子を含んでいる複雑な協働事業になっている。遺伝子は次から次へと何世代も体を操り乗り移っていく不滅なものである。

第4章 遺伝子機械

遺伝子の乗り物。遺伝子はタンパク質合成を制御することで動く。杯を作るには数ヶ月かかるが、体の行動は数秒単位で働くことができる。次に何をするかを一瞬一瞬で決定していくのは神経系であり、遺伝子は方針の決定者、脳は実行者。

第5章 攻撃(安定性と利己的機械)

攻撃の話題は誤解が多い。動物たちがライバルを殺すことに尽力するわけではないのはなぜか。それは利益と同時に損失もある。時間とエネルギーだけでなく、一体のライバルを倒しても別のライバルの生存に一躍を買う可能性もある。

第6章 遺伝子道

群淘汰(群れの生存)、個体淘汰(個体の生存)と区別して血縁淘汰が家族内利他主義の原因とされる。血縁が濃ければ濃いほど淘汰が働く。平均寿命が長い子供の方が利他的に扱われやすい。

第7章 家族計画

生存機械(個体)は子作りと子育てという2種類の決断を下さなければならない。何人子供を産むかではなく、何歳の時に出産するかによって人口増加は影響を受ける。時には出生率と死亡率が釣り合い個体群が無限に増えるわけではなく一定に保たれることもある。大繁殖と減少が交互に起こり個体群が変動することもある。野生動物は老衰で死ぬことはほとんどない。その前に飢えや病気、捕食され死ぬ。
親動物は家族計画を実行するがそれは自己の産子数の最適化のため。最終的に生き残る自分の子供の数を最大化させようとしている。そのため多すぎても少なすぎても良くない。

第8章 世代間の争い

生物は、遺伝子のコピーを増殖させるべくあらゆる努力を払うようにプログラムされている。しかし、母親が子供に対してはより不公平に資源を費やす。男性は女性ほど子供に対して大きく投資することはない。また、兄弟間の争いや親子の争いとして、野生の動物の中には家族の内部に詐欺行為や利己的行為が見られる場合もある。

第9章 雄と雌の争い

遺伝子の50%を共有し合っている親子にも利害の対立があるのなら、血縁関係のない配偶者間はどうなるのか。種にとってオスは消耗品的な存在でメスは一層貴重な存在と見立てられる。オスは精子と卵子の大きさ及び数に見られる違いから一般に乱婚と子供の保護の欠如の傾向がある。これに対して、メスにはたくましいオスを選ぶ戦略と家庭第一のオスを選ぶ戦略が見られる。
恥じらい型のメスが数を増して集団を制すると、尻軽型のメスを相手に良い思いをしてきた浮気型のオスは、メスが長くて熱烈な求愛を要求されるため窮地になる。そこに誠実型のオスが出現すると恥じらい型のメスと交尾するようになる。その結果誠実型のオスの遺伝子が増加し始める。(5分の6が恥じらい型のメス、5分の8が誠実型のオスからなる集団が進化的には安定するとう結果がある)。自然淘汰はうまく見抜く能力を身につけたメスに有利になるようにも働く。

第10章 僕の背中を搔いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう

動物の相互関係には親子など意外にはっきりしない領域がある。シマウマがヌーと群を作り、鳥は複数種の混群が見られる。利己的な個体が群で生活する利益はさまざまな点が示唆されている。多くの理由は捕食者に食われるのを逃れることと関連する。
働きバチは自分の子作りはしない。子供ではなく近縁者を世話することに全力を注いで自らの遺伝子を保存しようとする。
また他者を騙す能力や詐欺を見破る能力を強化する方向に働いた自然淘汰が人間に備わる妬みや罪悪感などを形成したと言われるほど。一見恩返しをしているようで少なめのお返ししかしていないケースもある。

第11章 ミーム(新たな自己複製子)

人間に関していうと、文化という特異性がある。文化的伝達は遺伝的伝達と類似している。言語は非遺伝的な進化で、その速度は遺伝的進化よりも速い。人間以外にも鳥のさえずりにも見られる。
文化は、食べ物の様式、習慣、芸術、建築、工芸など。遺伝子の特性は自己複製であり、文化的な複製的進化をミームと呼ぶ。広義の意味での模倣がミームの自己複製を可能にする。この地球上で私たちが唯一、利己的な自己複製子に反逆することができる。

第12章 気のいい奴が一番になる

自らが犠牲になって彼らの遺伝子を次世代に伝えるような個体。反復がある囚人のジレンマの場合、やられたらやり返す戦略が最適。(最初の勝負は協力しで始め、それ以降は前の回に相手が出した手を真似するだけ)。やられたらやり返す方法において、決して自分からは裏切らない方法が最適。またやられた際に2回に1回だけ返すという寛容な方法もさらに最適な結果に。

第13章 遺伝子の長い腕

もし一つの遺伝子にとっては善だが、体の中の他の遺伝子にとっては悪だという場合はどうなのか。突然変異遺伝子はどうなのか。遺伝子が現実に影響を及ぼせるのはタンパク質だけであり、神経系はに間接的な影響に過ぎない。遺伝子と生物個体(体)は互いに補い合う役割。ある自己複製子がこの世で成功するかどうかは、それがどういう世界(既存の条件)にかかっている。また生物進化のどこかの時点で共存可能な自己複製子どうしの集結が多細胞体の創造という形をとった。宇宙のどんな場所であれ生命が存在し続けなければならなかった唯一の実体は自己複製子だった。