不妊症#24 移植周期のこと
やっぱり残しておきたくて、書くことにした。
標準のことは一通り書けたと思うので、体験レポートとしては、これで一旦最後のつもり。
うまく行っても行かなくても、有耶無耶な感想や意味不明なオタ記事ばかり書くつもりです!
ミッション1:排卵日を捕捉せよ
いわゆる自然周期か、ホルモン周期か、好きな方を選べた。選べと言われましても…と思いながら、人工授精の頃の排卵と内膜の5回分の記録とにらめっこして、いけると踏んだ。
わたしたちは自然の排卵周期を選んだ。
人工授精したのも丸々無駄じゃなかった。
やる気あるんだかないんだかの自分の態度も、
通院再開すると、すぐにエンジン再稼働した。
こうして、受診3回で無事排卵日を見つけられた。内容は概ね採血とエコーと診察だけ。そこまで時間は食わないし、日数的にも、今更そんなに苦痛でもなかった。
びっくりしたこと
自然周期というくらいだから観察だけかと思っていたら、1回目の受診時にホルモン値が足りず、HMG注射があったこと。へぇ〜。
値的には移植キャンセルもあり得ると。夫に報告したかったのに、その日は残業帰りで「明日にして」と言われたこと。しばいた。
2回目採血で、数値爆上がりしていたこと。絶対注射のおかげや。自前のホルモンある?
3回目エコーでまだデカ卵胞はあったが、排卵のホルモンが基準値をクリアしていたので排卵とみなされたこと。へぇ〜!
とにかく「関門クリアですね」と言われて嬉しかった。いよいよ胚移植だ。やっと、この先の明るい未来をリアルに感じても良いような気がしてきていた。ふ〜!フライング嬉しいが溢れた。
ミッション2:SEET液を注射せよ
さらに翌日、SEET法。(初回の移植で使用。)
人工授精の、液体だけが差し代わったような感じで、気づいたら終わっていた。医師ともカーテン越しに喋っただけで、これまでの病院滞在時間最短記録を更新。諭吉と栄一とお別れしながら、費用対効果くれと願った。
ちなみに、デカ卵胞は無事消えていた。
ミッション3:投薬せよ
これもびっくりはしたのだが、自然な排卵周期を選んでも、排卵後の投薬はガッツリだった。3回目の受診後に高価な薬を買って帰り、妊娠判定日まで使用することになった。
ウトロゲスタン膣錠
進研ゼミで見たことあるやつ①。
「薬は頑張って奥の方まで」
「ひまわりの油の皮が出る。おりものシートを」
との説明に、率直に、え、きもいな…と思ってしまった。わたしの眉間の皺がすごかったのだろう、看護師さんの共感能力が最大限に発揮された、懇切丁寧な素晴らしい説明を聞くことができた。
噂に聞いたような注意点は網羅された見事な説明で、子ができるまでもう貴院に着いていきまーす!!となった。
使うと、オイリーなのに油取り禁止な肌みたいになった。生活には支障ないけど、ベタベタする。投薬毎30分程安静のため、朝早起きして、昼は職場のトイレで投薬してと、タスク管理の面でも、投薬方法の不快さの面でも、ストレスの根源だった。
エストラーナテープ
進研ゼミで見たことあるやつ②。
剥がれやすいのもそうだが、とにかく気になる。剥がれてないかしらと何回も確認してしまう。
移植日初めて貼ったら、秒でよれていた。もういいやとそのままで手術台に乗ったので、看護師さんにもテープのシワは見られたはずだけど、何にも言われなかった。多少のことは気にしないでいいか。
アトピー歴があるので心配したが、痒みは全くなし。ただし、剥がした跡ははっきりと赤く、何日もかけて戻るといった具合。
ミッション4:トイレを我慢せよ
移植当日。腹部エコーのため、トイレを2-3時間我慢するよう指導された。
当日の仕事は朝から休んだ。完璧な時間割で過ごせていたはずなのに、1時間前になって、こらいかん!尊厳優先!とトイレに行ってしまった。
我慢できん年頃か…とやや悲しくなる。
周到な通院先からは、あらかじめ「我慢しきれなかったときは、お水をたくさん飲んでね」と指示されていた。病院へ向かいながら、やべぇやべぇと水と麦茶をたくさん、1リットル近く飲んだ。
幸か不幸か、到着した頃にはもう再び我慢状態になっており、ハム太郎がちーぷるする映像で頭がいっぱいだった。
最終的に、先生から「わぁ、頑張って溜めてくれましたね。お陰でエコーで綺麗に見えました」と、謎のお褒めの言葉をいただけた。
「ほら見てこれが溜まったものだよ」とか、いいから。笑かさんでくれ(漏れる)。
ミッション5:胚盤胞を移植されよ
子宮鏡時大変痛く、人工授精でも時々チューブが入りにくかった。今回も前処置を恐れていたが、難なくいったようで心底安心した(尿意的に)。
医師が良い位置を探して、培養士さんがデッカイ声で何度も胚と患者名を照合して吸い出して、看護師さんが優しくわたしの両肩を押さえながら、
わたしは綺麗に融解された胚が映し出されたのを見ていた。
自力で産めないこの一人の患者のために、この瞬間他の患者を差し置いて5人も動員してもらって、有難いことだな。
呑気に感動してしまった。うまくいきたいな。
特に安静時間はなく、
そのままトイレに行ってから帰宅した。
ミッション6:しばし待たれよ
判定は10日後。短いような長いような。普段通り過ごしてねと言われながら、落ち着かず、ヨーグルトやたんぱく質を多めに食べてみたりはした。
淡々と投薬を続けることが最善だと思った。
段々と投薬時の感覚に違いを覚えながら、時々眠気に襲われながら、
これはただの経時変化なのか、疲れなのか、カフェインを控えてるからなのか、あるいは…と、そわそわしていた。妊娠ガイドブックなんかにも手を出した。
良好な胚だったから、期待せずにはいられなかった。だけど、もう既に1年以上裏切られ続きなので、警戒もやめられなかった。
この間会社の健診があり、妊娠はまだ可能性だと何度も伝えているのに、何週目かと何度も聞かれて、さすがに腹が立った。逆に教えてくれや。
ミッション完遂:その先の未来は
そして遂に、判定日を迎えた。
採血での判定で、1時間ほどで結果が出た。
「残念ながら、妊娠していません。
綺麗な胚だったので、期待したのですが…」
あー、ほらね。そんな気がした。
想定はしてたけど、すぐに切り替えられるかと言われれば、そうでもなかった。
医師は厳かな雰囲気を作って、丁寧に、今回の経過と、胚と母体側に考えられる原因と検査、次回の方針を説明してくれ、わたしは同意した。
そして、夫に伝えた。
中二の感性で読んでいた言葉を思い出す。
今の感性だとまた違う味になる。
わたしの人間の定義は何だろうな。
怪我で細胞が潰れてかわいそうだとか思わないのと同じように、さすがに胚を人間とはまだ思えない。
だけど、
ここまでの経過で一度も、微塵も妊娠反応を得られなかったわたしにとっては、
この胚は
初めて感じられた赤ちゃんの種で、
もう既に愛しい存在ではあった。
もし原因がわたしにあるのだとしたら、
わたしが健康なら、会えた子だったのかな。
もう、いないんだ。
*
ま、でもさいみんじゅつ外すなんて山のごとし。当たらないならもう一度打てばいいし、
それでダメなら先にHP削る戦略に変えても良い。
戦闘放棄して逃げだすには、まだ早すぎる。
リスキーダイスを使っているわけでもないのだから、他人の幸せを恐れる必要もない。
ただうまくいかなかった。それだけ。
だから、もう一度。
いくつかの助けを借りて、まだ行ける。
その次があるならどこまで?わからない。
目の前が真っ暗でも、手を繋げば大丈夫。
きっと。