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本棚:『小さいおうち』

昭和の初め、東京のサラリーマン家庭で、若くて美しい奥様を慕い、女中として働いたタキ。赤い三角屋根の文化住宅の中にあてがわれた小さな部屋を終の棲家と思い定めたほどの思い入れがあったが、時代は戦争へと向かっていき。
タキが過去をつづる形式で物語は進みますが、所々でタキの甥の次男が登場し、このタキのノートを読んで、嘘を書いちゃいけない、などと言います。私も読みながら「この時代って、もっと暗いんじゃないの?」とか思いました。でも、あくまで歴史の授業でちょっと習った程度で、なおかつ、私は歴史が苦手。実際の人々の暮らしは教科書にはあまり描かれないし、今みたいに世界中のニュースが即時にわかるわけではないし、そうだったのかもしれないなと思いました。また戦前、東京での人々の買い物の仕方が今とあまり変わらなかったのかもしれないなと思いました。
戦争がひどくなるにつれて「早く終わってくれ!」と思いながら読み進めましたが、この物語では戦争が終わっても、地球上から戦争がなくなることはないんだろうなとも思います。物語は戦争もようやく終わって、再びあのよき日々が戻ってくるのかと思いきや、最終章はちょっと違っていまして。何か時代というものを一歩引いて見る形といいますか。小さいおうちとそこでの日々。確かにあったはずのそれらはどこへ行ったのだろう。そっとしておくのかいいのかな。


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