本棚:『名古屋駅西 喫茶ユトリロ 龍くんは引っ張りだこ』
名古屋駅西にある喫茶ユトリロは常連客に支えられて長く愛されているお店。ユトリロを営む祖父母宅に下宿中の龍くんは医学部を休学中の身。今は何がやりたいのか、わからなくてずっと考え中…。
名古屋めしがたくさん登場する本シリーズ。第四弾の本書が出ていたとは知らず(しかも2023年4月発行!)、図書館で見つけたとき、心の中で「ぎゃー」と叫びました。
主人公の龍くんは、医学部に通うために東京から名古屋にやって来て、大学に入って勉強してみて、自分は医者になりたいんじゃないのかもって思いはじめて、でも、だからといって何になりたいのかわからなくて。医者になることも諦めきれずに休学中。
傍から見たら、「せっかく医学部に入ったのにもったいない!」と思うかもしれないけれど、本人にとっては深い悩みなんだろうなと思います。違和感を感じても、そのままやり過ごしてしまう人の方が多いと思うので、ちゃんと立ち止まれる龍くんは偉いなと思いました。そして、それを見守っている祖父母と常連さんたちも。
一度きりの人生、後悔のないようにありたいものですが、まったく悔いのない人生なんて、なかなかないだろうなぁ。本当にやりたいことに、なりたいものに、全力投球できたらいいのにと思いますけど、それがずっと同じとは限らないでしょうし、やりたいことはどんどん変わってもいいんだろうなと思います。そして、これまでやってきたことにこだわって、違うと思いながらも方向転換できなくても、それでもいいんだと思います。若い時ほど、何者かにならねばと思うかもしれませんが、何者にもならなくても、その他大勢でも、それでいいじゃないと最近は思うようになりました。