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<小学生探究レポート①>見えているものだけが全てではない
この度、一般社団法人ありかたとして、鳴門教育大学附属小学校5年1組の総合的な学習の時間のカリキュラムプランナーとして、授業設計をお手伝いさせていただくご縁をいただきました。
総合的な学習(探究)の時間:
総合的な学習(探究)の時間は、変化の激しい社会に対応して、探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標にしていることから、これからの時代においてますます重要な役割を果たすものである。
学びのはじまり
附属小5年生の今年の総合学習のテーマは『徳島の魅力を発信しよう!』ということで、様々な徳島の特産品や工芸品の中から、自分達がこの1年をかけてその魅力について学び、発信してゆくものを選びました。
今回、授業に関わらせていただける5年1組は、徳島の木工製品に着目し、『木材を徳島の魅力として発信していく』という課題設定のもと、学習に取り組んでいくとのこと。
この流れで、担任の先生から「木に関することを教えてほしい」とご相談をいただきました。
『徳島の木』を題材として、どのように子ども達主体の、探究的な学びを進めてゆくのか。夏休み明け9月から、来年の3月まで伴走していきます!
第1回目出前授業:
観て、作って、使って、知る。
9月20日は出前授業スタイルで行いました。
子ども達が「まずは木で何かつくりたい!」というモチベーションになっているという先生の情報から、まずは『実際に木をよく観て、作って、使って、知る』ことからはじめようと考え、授業に入らせていただきました。
【今回の授業内容】
モノづくりに使われる木材となる前の素材としての「木」を生産してきた、代々山を守ってきた人の想いに触れる
徳島のかっこいいモノづくりについて知る
作って、使ってみる
そして、上記の内容を成立させるために、今回、こちらの超豪華なゲスト陣にご協力いただきました!
【ゲストティーチャー】
◆指物師 富永康介さん
徳島県阿波のヤングマイスター認定や、職業訓練指導員で木育集団wood action徳島として木育活動を推進。最近ではCOOL JAPAN AWARD2019アウトバウンド部門受賞。2023年度徳島県卓越技能者表彰受賞(阿波の名工)受賞。
◆宮大工 山口寿輝さん
一級建築大工技能士 一級優秀技能士知事表彰 2016年、台湾にて徳島の木材と大工技術を輸出して完成させたAIzomeの建築に携わる。2019年、1級技能士を取得。2020年、ヤングマイスターを取得。2023年には技術交流でドイツへ留学。
◆林業家 岡田育大さん
那賀町(旧木頭村)出身の19代目林業家。公認会計士・税理士。 地球環境の未来のため、林業を主軸に環境エネルギー事業に取り組む。株式会社フォレストバンク代表。環境エネルギー会計事務所代表。
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木になる体操
授業開始。図工室の黒板の前には知らない大人が4人。「職人さんが来て、何かを作れる」という情報だけでこの日を迎えてた子ども達は、キラキラした眼差しで迎えてくれました。この日、最も好奇の目を向けられていた岡田社長。
まずは、子ども達の頭と心をほぐそうと、ウォーミングアップとして「木になる体操」を行います。このミッションのために、岡田社長はなんとご自分が木になってくれました!
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木の年齢あてクイズ
体操の後は、今度はちょっとした頭の体操。
机に置かれた丸太の年齢をあてるクイズです。大きさから推定したり、年輪の数を数えたり、グループごとに様々な方法で木の年齢を考えていました。
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千年前も、千年後もあるもの
クイズの後は、ぐっと思考する時間。
「千年前もあって、千年後もあるものは何だろう?」
岡田さんからの問いかけに、子ども達は一瞬沈黙・・・その後に「木!」という声が。しかし、問いはそれだけでは終わりません。
「では、それはなぜ?(木は千年前も、千年後もあるの?)」
この問いに、子ども達の手はなかなか挙がりません。
正解に固執しなくてもよいのですが、少し難しい模様。グループで話し合い、そこで出た考えを共有し合いました。
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作る。使う。
からだと頭が温まったところで(頭は温まりすぎて、少し湯気が上がっていたような気もしますが)、ここからは子ども達お待ちかねの、制作の時間です!職人のお二人のレクチャーのもと、今回作るのは、富永さん考案のオリジナル木製ゲーム『モッケイ』のラケットです。
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モッケイは、木球を相手エリアから落とした方が勝ち、というシンプルな遊び。ルールも自分達でアップデートするのもOKです◎
今回は、このモッケイで使うラケットを一人ひとりオリジナルでデザインします。
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子ども達は、モッケイで試打しながらデザインを考え、糸鋸で切り出していきます。
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制作中、「ここに穴を空けたい」「形が複雑すぎて(糸鋸だと)難しい」という声がちらほら。
そんな時こそ、プロの富永さん、山口さんの手を借り、子ども達は自分の理想とするラケットを追求していきます!
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知る。誇れる徳島の職人技
『知る』パートでは、富永さん、山口さんが実際に手掛けた建具や空間、
お二人も所属する職人集団『屋雲万次郎』の取り組みについて紹介させていただきました。
屋雲万次郎:
職人やクリエイターがそれぞれの専門分野で
徳島の魅力をもっと世界の人に知ってもらう集団。
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おまけ:削り華
鉋(かんな)で削った後に出る、鉋くず。その中でも薄削りで出る削り屑を「削り華」と呼びます。
削り華:
透き通るような薄い削り屑を出すためには、4マイクロメートル、5マイクロメートルといった削り屑を出す必要がある。
鉋による薄削りを競技化し、その薄さと削った木材の仕上がりの美しさを競う大会(削ろう会)もある。職人技の結晶のようなもの。
富永さんがモッケイの台を作製した際、鉋掛けで出た削り華を持ってきてくださいました!
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子ども達が興味を持った『徳島の木材製品』を作っている職人、そして木材を生み出す山を守る林業家から、実際に話を聞いたり、取り組みについてを知る機会となりました。
時間の都合上、当日リフレクションの時間までとることが難しかったので、そこから先生にバトンをお渡しします。今回の体験から子ども達からどのような問いが生まれたのかを汲み取っていただき、次の探究プランに繋げていきます。
探究のゴール
実は、今回関わらせていただくにあたり、プランナーとして裏テーマを持って臨んでいます。総合学習として設定された課題は「徳島の木材の魅力を発信する」ですが、探究的な学びとしては「見えているものだけが全てではない」という概念の獲得をゴールに置いています。
『概念の獲得』と書くと小難しい印象を与えてしまうかもしれないのですが・・・知識やスキルの獲得にとどまらず、課題(物事)に関わる概念を形成することです。
※探究活動における概念形成について、市川力さんの記事 が参考になるのでお時間のある方はぜひご一読ください。
物事を「概念」で捉えることから探究が始まる。 探究学習の生みの親・市川力さんが提唱する「ジェネレーター」とは?
「見えているものが全てではない」
子ども達に伴走することはもちろんですが、大前提、現場で日々子ども達と向き合っている先生の力になれるよう、これから約半年間、わたし自身も探究していこうと思います。