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私は、こんなホテルや旅館をつくりたい
旅行と言えば、「非日常を味わう」ために行くことが多いと思うが、そこでいう「非日常」っていったい何なのだろう。
10年ほどホテルや旅館で働いてきたものとしては、常に「非日常感の演出」や「非日常の世界観づくり」に奔走してきたが、この「非日常」という見えそうで見えないゴールを追い続けることは簡単ではなかった。
ただ、最近になってこういうことなのではないかと少しだけ見えてきたものがある。
それは、未来も過去も忘れて、「いま、楽しいなぁ」「いま、幸せだなぁ」「いま、豊かだなぁ」と思えるようなひとときなのではないかということだ。
日常は、あらゆる情報で頭の中がいっぱいで、なんとか時間を無駄にしないようにと効率化やタイパばかりを追い求め、そして本当の気持ちかどうかわからない承認ばかりを欲しがる。過去に捕らわれ、未来を憂う、そんなことばかりが頭の中をぐるぐるしている。いま、という時間を生きているとは決して言えない。
このような日常を離れるために人は旅行にいくのではないだろうか。
そして、ホテルや旅館の役割は、そのようなごちゃごちゃした日常からほんのひとときではあるが、少し離れてもらい、今、目の前のもの(温泉、食事、体験など)に集中することで、頭の中の過去や未来を忘れさせることなのではないだろうか。
今、目の前のものに集中すると、食事やお酒はよりおいしく感じられ、微かな香りや音に敏感になり、手触りや肌触りをしっかりと感じることができる。つまり、消費するのではなく、自ら受け取ることができるのだ。
そして、しっかりと自ら受け取ることができるからこそ、それに対して心が動いたり、感情が湧いてきたりするのだと思う。「あぁ、幸せだなぁ」「あぁ、楽しいなぁ」「あぁ、豊かさってこういうことなんだなぁ」と心から思えるのだと考える。
さらには、消費するのではなく受け取ることで、日常では当たり前に思っていたことが「有り難く」感じ、自然と何かへの、誰かへの感謝の想いがこみ上げてくる。これもまた非日常なのではないだろうか。
未来も過去も忘れて、「いま、楽しいなぁ」「いま、幸せだなぁ」「いま、豊かだなぁ」と思えるようなひとときを何度も味わえるようなホテルや旅館
私はこんなホテルや旅館をつくりたいと思う。