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【欧州ひとり旅】閑散期のマドモアゼル

 チェックインを済ませたわたしは、2階にある自身の部屋にたどり着くまでずっと、まんまると、目を輝かせていました。予約する時は気づかなかったのですが、このホテルは、明らかにリゾートホテルです。広い廊下に、高い天井。至るところに植物が植えられていて、廊下の窓からは、そよ風に乗ることりの群れと、薪に使えそうな、木々の束。

 部屋に着いても、わたしは驚いてばかりでした。それほどお金も持っていませんから、ひとり旅では決して贅沢をできません。このホテルの予約だって、安かったから予約したのですが、閑散期だからといっても、急に心配になってくるわたし。だって、ベッドの上にバラが乗っているなんて、初めての経験なのですから。

 大きなバルコニーが付いていたので、外に出てみようと思いました。バルコニーへどでる扉を少し開けると、午後3時40分すぎの光が、少し強く差し込んできます。

 バルコニーのイスに座っていたら、ひとりの少女の声が聴こえてきました。どうやら隣の部屋のお客さんのようです。白のワンピースに、麦わら帽子をかぶっています。隣には、お父さんらしき人もいました。その様子を見て、とっさに隠れるわたし、バルコニーを陽気に走り回る、少女。

 この対比に、ちょっとだけ笑っている自分がいました。だってそうでしょう。ヨレたTシャツに、パサついた髪の毛、日焼け止めはきちんと塗っていますが、それでもほんのり焼けた肌。そんなわたしと少女との対比が、面白いのです。

 フランス語が聴こえてきたので、フランスから観光にでも訪れたのでしょうか。いずれにせよ、マドモアゼル、わたしはあなたがうらやましです。こんな素敵なホテルに、家族と来ることができるなんて。この広い部屋やホテルをどれだけ満喫したとしても、わたしはひとり、ひとりなのです。

欧州ひとり旅日記より抜粋
in Hohenschwangau, Germany Oct.2023

バルコニーへの出入口

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