【北イタリアひとり旅:第1章】Ep.7/14-b『そしてまた目を瞑る』
寝ても寝ても、この飛行機はいっこうに目的地に着く気配がありません。乱気流で機体が揺れるたびに目を覚まし、機内モニターで現在どのあたりを飛んでいるのか確認しようと思っても、そうでした、このモニター、なぜか壊れているのでした。
そしてまた目を瞑る。その繰り返し。
ひとつ良かったことは、機内食がとても美味しかったことです。名前の知らない韓国料理を食べましたが、焼肉をさまざまな葉っぱに包んで食べる料理はもちろん美味しいのですが、小袋に入ったコチュジャンの辛さはびっくりするほどで、その辛さは、機内食の提供にあわせていただいた水じゃあ打ち消しそうにないほど。どの国の上空を飛んでいるかはやはり定かではありませんが、地上に営み生きる方々も、まさか上空約10,00メートル先で、コチュジャンの辛さに悶えているひとりの日本人がいることなど、知る由もないでしょう。
わたしも、彼ら彼女らの営みなど知り得ません。互いに知っているのは、窓の向こうのあの雲が、不気味なまでに美しい形をしていることだけ。ただそれだけです。
旅日記を書いていたら、飛行機が到着地へ近づいていることを知らせるアナウンスが流れました。机をしまって、リクライニングを元の角度に戻しなさい、とも。次にこの日記帳を開くのは、イタリアの首都ローマ。ここまでより幾分かは、字も綺麗になることでしょう。揺れていないところで書くのですから。
北イタリアひとり旅日記より
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