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【第1回】「英国総選挙とは① 政権交代はなぜ起きたか」
英国で7月4日、総選挙が開かれ14年ぶりの政権交代が実現しました。下院定数650議席のうち、野党であった労働党が412議席を獲得する歴史的な大勝となりました。英国の政治制度は二院制の議院内閣制の代表例としてたびたび社会科の教科書にも登場しますが、日本での総選挙への注目度はそれほど高くないのが実情です。どんな人物が英国のリーダーとなり、労働党政権が何を目指すのか? そして、政権交代の裏側で起きていることなどについて解説します。初回は「英国の総選挙」です。
政権交代はなぜ起きたか
7月4日、英国で総選挙が開かれました。労働党が政権を取るのは2010年以来となり、新たな首相には、労働党党首で元検察トップのキア・スターマー氏が任命されました。保守党政府では任期途中の交代劇が相次ぎ14年間で5人の首相を出す混迷が続いていました。
英メディアの報道で、今回の政権交代の要因として挙げられるのは、保守党政権による相次ぐスキャンダルによる支持率低下です。
英国のトランプ氏と呼ばれたボリス・ジョンソン氏の首相時代(2019~2022年)、コロナ禍で多人数での会合を制限している期間中に、複数回にわたる首相官邸パーティによる不祥事「パーティゲート」事件が明るみに出ました。これが支持率逆転の転機となりました。後任のリズ・トラス政権(2022年)では、打ち出した経済政策が市場の信用を得られず国債・通貨の下落「トラスショック」を招きました。
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実際、パーティゲートが報じられ始めた2021年12月以降、労働党の支持率が一貫して保守党を上回っています。スキャンダル後の支持率差は10%未満でしたが、トラスショック直後には一時40%弱まで支持率が開きました。直近のリシ・スナク首相が就任してからも支持率は回復せず総選挙までの約2年間は野党であった労働党に20%前後のリードを許しました。
こうした状況から、今回は選挙前から政権交代が確実視されていました。保守党の大敗を予想し、選挙への不出馬を表明する議員も相次ぎ、元首相のテリーザ・メイ氏も立候補しませんでした。選挙中も元首相のトラス氏やジェイコブ・ウィリアム・リース=モグといった保守党の大物議員や閣僚経験者らが落選。労働党は650議席の過半数を大きく上回る412議席を獲得しました。
英メディアでは労働党の「圧勝」「歴史的勝利」「地すべり的な勝ち」などの見出しが躍りましたが、労働党への期待よりも保守党への不信感といった雰囲気が強く、英国内に高揚感は感じられません。保守党が251議席を減らした一方、労働党が増やした議席は211。二大政党以外で大きく議席を伸ばした政党や独立候補の当選もあり、保守・労働という既存の枠組み対する反発も高まっています。