募集要項 によれば、考古学と隣接する分野に関するテ-マについて、複数の論者がそのあるべき姿と研究の最前線を論じ、多様な意見や考えの相違を明確化することを目的とする企画だという。 第1章から7章まで大きく7分野で合わせて60のテーマを設定し、それぞれのテーマに関して公募分も含め2〜3名による論文で構成する計画だそうだ。各章の内訳を要約すると概ね以下の通りである(なお、要約にあたっては、 せっかくの機会だから今話題になっている ChatGPT3に手伝ってもらったことを付記しておく)
第1章 考古学と現代社会 -博物館学・教育学・観光学- 考古学は過去を研究するだけでなく、現代社会にも重要である。この章では、日本の考古学と埋蔵文化財行政の歴史と将来を探り、研究成果の公開について博物館学や教育学との連携を考え、会員から良質な事例を募集する。今後の展望についても述べて欲しい。 【設定テーマ】 「日本」考古学の特質・埋蔵文化財行政と考古学・考古学と博物館・考古学と学校教育・考古学と地域コミュニティ・考古学とマスメディア・「陵墓」問題と考古学・世界遺産と考古学・考古学と遺跡保存・考古学と刊行物・広報・データベース
第2章 日本と世界の考古学 本章では、日本を除く世界各地域の考古学的な様相と研究動向について論文を募集し、日本の考古学に関する提言も求める。対象地域には、東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、太平洋諸島、極北・東北アジア、西アジア、アメリカ大陸、欧州が含まれる。他の地域については、エントリーシートに地域名を記すこと。 【設定テーマ】 東アジア世界からの視点・東南アジア考古学からの視点・南アジア考古学からの視点・中央アジア考古学からの視点・太平洋諸島からの視点・極北・東北アジア世界からの視点・西アジア考古学からの視点・北米大陸の考古学からの視点・中南米大陸の考古学からの視点・欧州考古学からの視点
第3章 考古学と民族学・民俗学・地理学・ジェンダ-研究 人間が創造する文化は、地域や時間によって多様であり、それに対処する方法も各集団によって異なる。この章では、考古学と民族学、民俗学、地理学、ジェンダー研究との協力による研究成果とその到達点についての論文を募集する。 【設定テーマ】 旧石器時代・縄文時代と民族学・考古学と民俗学・考古学と地理学・景観学・考古学と神話学・考古学とジェンダー研究
第4章 考古学と歴史学・美術史学 考古学は、文献史学や美術史学と密接に関連しており、人類史や過去の文化を再構築する上で重要である。これらの学問が協力することで多くの成果が得られており、今後も研究を進める上で関係性を探求する必要がある。なお時代の端境期に注目する場合は、エントリーシートにその旨記してほしい。 【設定テーマ】 弥生時代における考古学と文献史・古墳時代における考古学と文献史・飛鳥時代における考古学と文献史・奈良・平安時代における考古学と文献史・中世における考古学と文献史・近世における考古学と文献史・近現代における考古学と保存問題・考古学と美術史学
第5章 考古学と理学・分析科学 自然科学的分析は、考古学に新しい学問領域をもたらし、暦年代論や原材料の産地同定、製作流通などの分野で貢献している。この分野における手法、成果、そして現在の課題について、論文を募集する。なお、他の遺物についての分析科学の論文も歓迎する。 【設定テーマ】 放射性炭素年代測定・分析科学(金属 青銅器)・分析科学(金属 鉄器)・分析科学(胎土)・分析化学(玉類)・分析化学(石材)・分析化学(繊維)・分析化学(顔料)・分析化学(アスファルト)・三次元計測
第6章 考古学と環境学(地球科学) 考古学は本来学際的な学問であり、隣接分野との連携によって新たな成果が得られる可能性がある。特に、環境と考古学に関わる分野では新たな分析法の開発が進み、注目を集めている。この章では、そうした隣接分野からの期待や考古学側からの要望について論じる。 【設定テーマ】 考古学と古気候変動・考古学と感染症学・考古学と災害・考古学と森林科学・考古学と海洋学
第7章 考古学と自然人類学 考古学は学際的な学問であり、隣接する分野と連携することで新たな発展が期待できる。現在の課題を踏まえ、各テーマについての意見を募集する。 【設定テーマ】 形質人類学的研究1・形質人類学的研究2・DNA分析からみた考古学・考古学からみたDNA分析・考古学と植物学1(植物遺存体からみた生活環境)・考古学と植物学2(植物圧痕からみた生活環境・考古学と動物学1(動物遺存体からみた海産資源利用)・考古学と動物学2(動物遺存体からみた陸産資源利用)・植物の(考古)生化学からみた食環境・動物の(考古)生化学からみた食環境
さて、どのテーマにエントリーしたかというと、実はいくつか書きたい話題があったのだが(キーワードでいうと例えば、戦争と平和、そしてそれに関連して人やその集団のレジリエンスの問題、統計学とくにベイジアン統計の考古学への適用をめぐる問題、さらに今まさに話題のAIの考古学への活用の問題などなど)、困ったことにどれ一つとして設定された60のテーマに納まらない問題ばかりであった。 話題にしたい問題をそれぞれ全部、 どれかのテーマに無理やりエントリしてしまおかうとも思ったけれども、それもはた迷惑な仕業であろう。というわけで、「第3章 考古学と民族学・民俗学・地理学・ジェンダ-研究」の「ジェンダ-研究」というテーマ枠で、海外では近年注目されつつある「子どもの考古学」について、 「ジェンダー視点」から「日本考古学におけるその意味と展望」を考えたい、ということでエントリーしてみた。
だいたいですね、第3章で考古学と民族学、民俗学、地理学と並んで、取ってつけたように「ジェンダ-研究」というテーマが立てているところからして、まさにいわゆる「ジェンダーのゲットー化」というやつなのではないだろうか。 ジェンダーも入れとかないと、なんだからさ・・・ って感じで項目を立てた? まあ逆に、日本考古学の輪郭がよく見える章立て、と言えなくもないかもしれない(こんな憎まれ口を書いていると却下されちゃうかも)。 それはそれとして、いずれにしても、「子どもの考古学」の旗を立てる場所としては、他に適当なテーマが見つからなかったのである。まさに、かのKamp先生のいう、『子どもたちはみんなどこへ行った? 』(Kathryn A. Kamp 2001, Where Have All the Children Gone?: The Archaeology of Childhood)なのである(いずれ紹介できればと思います)。
つづく