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【最終章1-3】「意外とピュアだよな」|Arcanamusica
MAIN STORY【Chapter2】Arcanamusica —My song, Your song—
著:衣南 かのん
イラスト:ユタカ
#1-③
ファミレスから出た途端、生ぬるい熱気に包まれる。夜と言えど、都会の夏は暑さから解放してくれはしない。
夏休みのせいか、街にはいつもよりも人が多いように感じた。人というよりも、若者だろうか。湿気混じりの夏っぽい匂いを感じながら、川和は思いきり伸びをした。
「はー、うまかったな」
「はい! あんなコーンフレークがたくさん入ったパフェ、初めて食べました!」
伊調のその感想に、川和は彼が食べていたパフェを思い出す。
たしかに、もりもりに盛られたクリームの下にはグラスの三分の一ほどを埋め尽くすようなコーンフレークが入っていた。
(そういえば、高いパフェってあまりコーンフレーク入ってないよなあ)
川和も実際に食べたことはない、SNSやらテレビやらで見たことがあるだけだが、いわゆるパフェ専門店のパフェは質の良さそうなクリームとフルーツで埋め尽くされていて、コーンフレーク的なものはあまり見ないような気がする。
けれど、伊調にとっては今日のパフェが特別だったのだろう。ならばそれでいい。
「ごちそうさまでした、静さん。ていうか、ごちそうしてもらっちゃってすみません。僕の方が呼び出したのに」
「どういたしまして。俺の方も、おいしそうなチョコもらったし」
おそらく、親元にあるとはいえ財布事情は彼の方がいいのだろうが、さすがの川和も高校生と会って割り勘、というのは憚られる。ましてや今日は立派なお土産ももらっているのだから、それくらいは見栄を張らせてもらいたい。
「あ、僕、今日地下鉄の方で帰るのでここ渡りますね」
「ああ、気を付けてな」
そう言って、交差点を渡る伊調に別れを告げた瞬間——。
聴き馴染みのある——ありすぎる、自分の歌声が聴こえてきて川和は思わず顔を上げた。
To be continued…