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花かんむりの魔女 物語集

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架空の島、エルデ島北東岸の小さな町で暮らす、 花かんむりの魔女とその周囲の人々のお話。
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2021年5月の記事一覧

薔薇色曹達水

薔薇色曹達水

 吹く風がふわりとあたたかく、甘やかな花の香気を含む季節。

 紅茶店『マーシュマロウ』で、昨秋から働き始めたマリは、一番下の妹と、硝子でできたドリンクサーバーをテーブルに運ぶ。

 冷やした鉱泉水と氷、それから薔薇の花が踊る、淡いピンクの曹達水。
 注いだグラスにも、ひとひらの花弁が浮かべられ、淡い香りを漂わせていた。

「おじいちゃんの薔薇、今年も綺麗に咲かせたね」
 曹達水の中で揺れる花を眺

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春の戴冠

春の戴冠

「ねえ、マリ。春のお祭りの衣装はできた?」
 幼馴染がテーブル越しに身を乗り出した。
もうここ最近、女の子たちの話題といったら、自分達の着るお祭り衣装のことと、男の子たちとのダンス。
それから今年の『春の精』に選ばれる女の子はどんなに美しい衣装を着るのだろうってことだ。

 『春の精』は、春祭りの主役で、街の女の子たちの中から選ばれる。一人の時もあるし、複数人の時もある。
 特別な白い衣装を身につ

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