読書感想文(107)星新一『未来いそっぷ』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回は星新一のショートショートです。
この本には全部で33篇収められています。
タイトルにもある「いそっぷ」物語が星新一らしい改変を加えられているものが7篇あります。
感想
今回も思っていた通り面白かったのですが、この本の特徴はやっぱりいそっぷ物語の改変でしょう。
しかも面白いのが、1作目の「アリとキリギリス」の後にこんな風に書かれているのです。
今、感想を書きながらここを読み返して、思わず吹き出してしまいました。
いやいやどの口が言っとんねん、と。
改作「アリとキリギリス」は社会の繁栄によって社会が変ったという話になっているのですが、そこをメタに結びつけてくるとは……。
星新一の面白さってこういう、思わない所を結びつけてくるところがあると思うのですが、そう思う度に和歌を詠むの上手そうだなぁと思います。
と、余談は置いておいて、この「教訓」が全部面白いんですよね。気になる方は是非読んでみてください。
「ある夜の物語」はクリスマスのお話です。気の毒な人の所に一つ望みを叶えてくれるサンタクロースがやってきますが、望みを訊かれた人は「自分よりもっと気の毒な人がいるからそちらに行ってあげてほしい」と言います。そして次の人もやはり同じように他の人の所に行ってほしい、と。私の書き方が下手ですが、これは決して気の毒な自分を認めていないわけでも、もっと気の毒な人を哀れむふりをして優越感に浸っているわけでもありません。ただ、自分はまだ現状に耐えられるから、他の人に良い事があってほしいと思う純粋な優しさを感じられます。
その中で、登場人物達は皆、こんな自分の事を気にかけてくれる人もいるのだという事に気づきます。それだけで自分は十分だから、と言って、自分が逆に気にかける立場になる事にも気づかずに、次の人へサンタクロースに行ってもらいます。なんて優しい世界。
意外と気づいていないけれど、色んな人に支えられているし、逆に支えてもいるというのは現実でも同じことです。こういう事も忘れずに生きていきたいなと思います。
その他、いくつか覚えている話があって懐かしかったです。
「頭の大きなロボット」は、昔読んだシリーズではタイトルにもなっていたので話をよく覚えていました。
あとは「おカバさま」もなんとなく覚えていましたが、こちらはオチまで覚えていなかったので面白かったです。
おわりに
星新一のショートショートはやっぱり面白いです。
一つ一つのお話が短いので、読書に慣れていない人や小さい子どもにもオススメできます。
私は小学生の頃に学校の図書室で読んでいたのですが、今読んでいると流石に小学生では漢字が読めない気がします。違う出版社から出ているシリーズだったので、ふりがなが振ってあったのでしょうか。真相はわかりませんが、星新一のショートショートは将来子供にも是非読んでほしいなと思います。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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