読書感想文(407)レイ・ブラッドベリ『火星年代記』(小笠原豊樹訳)
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回は以前から読みたいと思っていた作品です。
プレゼントでもらったので読むことができました。
ブラッドベリの作品は『華氏451度』を読んだことがあります。
感想
とても面白かったです。
全体的な感想としては、物語としての物語というか、作者の存在があまり感じられなかったのが良かったです。
小説をずっと読んでいると、物語世界に浸りながらも「泣かせにきてるな」とか「伏線張るの上手いな」とか、心のどこかで感じてしまうことが多くなってきます。
しかしこの物語はこの物語として存在するというか、メタなことをあまり考えずに読むことができました。
SFとしては最高の読み方ができたなあと思います。
特に印象に残っているのはスペンダーの話です。
私はスペンダーのように行動を起こす勇気は持っていないように思えますが、一番共感できたのがスペンダーでした。
しかし、今思い出してみて思ったのは、スペンダーはなぜ隊長と協力できなかったのだろうか、と思います。
スペンダーは自分の信念を貫きました。それは素晴らしい。そして、後の話でわかるように、隊長に対して確かに影響を与えており、彼の死は決して無駄ではありませんでした。
しかし、本当に自分の目的を遂行する気があるなら、もっと上手くやる方法があったのではないか、と思ってしまいました。
隊長以外の隊員の様子を見るに、包囲された時点で和解というのは既に難しい選択だったと思います。ならばもっと前に戻って、自分がきちんと生き残るように、或いはせめて全員を道連れにして火星の情報を地球に渡さないようにするべきだったのではないでしょうか。どうせ自分の死を覚悟しているなら、やすやすと倒れるべきではなかったように思えます。
でもまあ、これは後から見た人間が言える感想に過ぎませんね。実際、人を殺めてしまう衝動も、殺めてしまった後の心情も私にはわかりません。
でもこの辺り、もう一度丁寧に読み返して解釈したいです。
死を以て信念を示す以外の方法は本当になかったのか。或いは、スペンダーの本当の(心の奥底の)望みは何だったのか。
おわりに
そういえば、この作品でエドガー・アラン・ポー『アッシャー家の崩壊』の話が出てきました。
一度も読んだことがなかったので、これを機に買ってみました。
近いうちに読みたいと思います。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。