読書感想文(216)吉田篤弘『おやすみ、東京』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は初めて吉田篤弘さんの小説を読みました。
クリスマスプレゼントで本を交換することになり、プレゼントしてもらったのがこの本です。
ちなみに、全く別の人から同じ著者の『流星シネマ』をオススメしてもらったので、そのうち読みたいと思っています。

感想

面白かったです。
この小説は作者曰く「連作短編の交差点」とのことで、複数の連作短編が合わさった構成になっています。
もう少しわかりやすく言えば、連作短編の中で様々な人物が登場し、それぞれのストーリーが展開していくということです。
確かに、読んでいると、モチーフや伏線の配置など、作者の作為が随所に見られたので、何か仕組まれているな、実験しているなという感じがありました。

内容としては、初めは映画の小道具を探す人物が主人公で、なんだか小川洋子の『薬指の標本』を想起せられました。
ただ、これは後に出てくる古道具屋の方が近いかもしれません。
そして緩やかに登場人物のストーリーが繋がっていく、どこかほっこりしたストーリーは、青山美智子『木曜日にはココアを』を思い出しました。
しかし読み進めるうちに思っていた以上に人間関係が複雑に絡み合い、恩田陸『ドミノ』を思い出しました。
しかし、作者のあとがきを読むと、確かに「連作短編の交差点」であり、すなわち物語の筋が沢山あって、それぞれの連作短編が重なっているというのが、この小説の独自の特徴だなと思いました。
また、『ドミノ』のように全てがカチッと合わさるのではなく、どこか途切れ途切れのような不完全さがあります。それがフィクションらしい『ドミノ』と異なり、人生っぽいなと思いました。
この本で何度も言及される縁、不思議な繋がりについては、私は何度も経験しています。しかし、人生はやはりよく出来たフィクションのように箱に上手く収まらないものです。というか、縁というのは無数にあって、たまたま繋がったものを後から認識するのだと思います。

ただ、私は記憶力が良くないので、一読しただけでは恐らく沢山の情報が頭から抜け落ちています。
また読み返してみたら、新しい発見があるだろうと思うと、楽しみです。

最後に、このお話のタイトルについて、「東京」が人口が多く、忙しく、騒がしいイメージがあり、それが「おやすみ」する夜の物語、ということかなと思いました。それは普段の東京とは違う一面を見せていて、当たり前なんだけど、だからこそ自然とお話の世界に入り込めるということもあります。
夜って不思議ですよね。存在は認識しているけど、普段の景色とはまるで違います。だから、いざ夜のお話が始まると、お話の世界の神秘性を感じつつ、確かに世界はこういう一面もあるかもしれないと自然と納得できる気がします。
恩田陸『夜のピクニック』もまた読みたいなぁと思いました。

おわりに

吉田篤弘さんの小説は初めてでしたが、すらすら読むことができました。
ただ、時々セリフの話し手がわからなくなることがあったので、やはり新しい作家は慣れないこともあるなぁと思いました。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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