読書感想文(372)岡潔『夜雨の声』(山折哲雄編)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
2024年最初の一冊は岡潔のエッセイです。
この数学者の言っていることは難解なのですが、何とか理解できるようになりたいと思っています。これから何年もかけて何度も読み返し、理解したいです。

感想

この本の文章は大半が既に読んだことがある文章でした。
しかし、かといって理解できるわけではありません笑
平等性智や妙観察智、無差別智など、用語はかなり身近になってきたものの、その意味するところの本質は未だに掴みきれていません。
多分、こういうのを一発で理解できるのが頭の良い人なのだろうなと思ってしまいますが、自分にはそれができないのだから嘆いても仕方がありません。理解できるようになるために様々に思考しながら繰り返し読むだけです。

「価値判断」が古人と明治以後の私たちとでは百八十度違うのである。一、二例をあげると、古人のものは、
「四季それぞれよい」「時雨のよさがよくわかる」
である。これに対応する私たちのものは、
「夏は愉快だが冬は陰惨である」「青い空は美しい」
である。特性を一、二あげると、私たちの評価法は、他を悪いとしなければ一つをよいとできない。刺激をだんだん強くしてゆかなければ、同じ印象を受けない。これに対し古人の価値判断は、それぞれみなよい。種類が多ければ多いほど、どれもみなますますよい。聞けば聞くほど、だんだん時雨のよさがよくわかってきて、深さに限りがない。こういったふうである。芭蕉一門はこの古人の評価法に全生涯をかけていたのであった。
この古人的評価の対象となり得るものが情緒なのである。

P13,14

今回一番印象に残ったのはここかなと思います。一言で言えば、放課後ティータイムが言うところの「いちばんいっぱい」です。それをさらに深めてゆく。
こういった考え方は大事だと思います。

その他、岡潔の著書を読んでいていつも思うのが、真我というものを心底理解して、そうありたいということです。
自分とは何か、と考えた時、仏教の因縁的な考え方を用いれば、自分即ち世界であることは理解できます。しかし、頭で何となくわかっていても、心の底からそう思うことがまだできていないように思います。
岡潔の文章を何度も読み返したくなるのは、ここが大きいかもしれません。
これができた時、自分がいかなる花であるかを理解し、自分の花をただ精一杯咲かせることができるようになるのではないかと私は思います。

おわりに

岡潔のエッセイは、他にいくつも読んできました。『紫の火花』や対談集など読んだことがないものは、今年読みたいと思っています。
今のところ、特に読み応えがあって良かったのは森田真生編『数学する人生』と小林秀雄との対談集である『人間の建設』です。これらもまた読み返したいです。
ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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