読書感想文(192)山極寿一『ゴリラからの警告;「人間社会、ここがおかしい」』
はじめに
こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。
今回読んだのは元京都大学総長の霊長類学者・山極寿一氏の著書です。
山極氏は実際にゴリラの群れで生活して、物事をゴリラ目線で見れるようなので、まさに「ゴリラからの警告」というわけです。
この本を知ったのは、一年以上前の読書会で紹介された時です。
タイトルの時点で「面白そうだな」と思い、印象に残っていました。
感想
面白かったです。
ゴリラからの警告はたくさんあったので、まとめるのは難しいのですが、人間の当たり前を見直すという点で、わかりやすかったです。
この本はゴリラ、チンパンジー、サルなどの社会と人間社会を比較し、その特徴を浮かび上がらせて問題点を指摘したり、ゴリラの社会に学ぶべきことを提示したりしています。
近年ホットな話題としては、「ゴリラ型イクメンが社会を利己的にする」という節が面白かったです。
これは父親の役割、母親の役割といったものについて考えるものです。
私は生物的に男女の身体の作りが異なる時点で完全に同じ役割があるとは思っていないのですが(ただし、様々な選択肢はあるべきだと思っています)、ゴリラの社会を見てもそれは言えるようです。
ゴリラ型イクメンとは、簡潔に言えば妻と子どもに認められる父親、というものだと思います。
一方で、人間は社会的にもそう見られ、支えられることで能力を発揮すること、また地域で子育てをすることが大切であることが書かれています。
ただ、今書きながら、自分がよくわかっていないこともわかりました笑。
もう少し掘り下げてみます。
つまり、幸福を考える時、その範囲が家族に限られてしまうと、利己的な社会が加速するので、もっと大きな集団で助け合うコミュニティを作るべきだ、ということでしょうか。
論理的に完全に賛同はしかねるのですが、利己的な考え、個人の幸福の追求は問題視するべきことなのではないかと私も思っています。ただこれって明治時代から言われているので、今後改善していくのかどうかはさっぱりわかりません。
そういえば、この本を読んでいて思ったのが、良いことを言っているのですが、その根拠が曖昧であることです。
論理の進め方が、どうも納得できない所がありました。「〇〇だから××だ」という時、それ以外の可能性を考えないといけないように思います。もちろん研究書ではないし、私の知識不足も大いにあるのですが、今の私では納得しきれませんでした。
例えば、著者は地方創生の為の具体策を提案しているのですが、どうも見通しが甘いように思いました。ゴリラにはお金が無いもんなぁ、と思いました笑。
でもこういう具体策を提示するのはとても大切なことだと思います。むしろ、完璧でない考えを提示することへの抵抗が蔓延する社会だと新しい考えがなかなか出てこないので、良くないと思います。
これはつい先日読んだ東野圭吾『沈黙のパレード』でも書かれていました。
面白かった話が細々とたくさんあるので、箇条書きで挙げようと思います。
本題と関係ないことも多いですが、気になったので少しでも頭に残るように書いておきました。
おわりに
今回、感想文を書きながら、自分の中でまだ上手く消化しきれていないなぁと思いました。
その理由の一つが、物事を歴史的に捉えるのが苦手なことだと思います。
高校生の頃、日本史の勉強をサボったツケです。どうやって克服したもんかなぁと思っていますが、とりあえず今のところは絵画史に一番興味があるので、その辺りかなぁと思っています。
ということで、最後読んでくださってありがとうございました。