マガジンのカバー画像

3
運営しているクリエイター

#詩

◯◯

◯◯

ざらざらを舐めるのが
仕事なもんで

舐める

絨毯を
網戸を
次女の習字バッグを

◯◯ですか
いえ、私、もう出るところなんで

ええ、そうです
スイッチみたいなものです
時空が歪むんです

繊維の
奥にあるんです
土星の輪っかのその先の
入り口につながる小さな入り口が

光を
匂いを
音を
すーっと引き連れて

この場所から出ていきます
時間が
ここにあった時間が

そうして誕生日になります

もっとみる

消失

もう卵を産みつけるのはやめてほしいのに
レモンの木の周りを飛んでいる

息切れした
犬のような夏は
お終いです

もう、秋なんです
育たなくていいイチジクが
のびのびになって
木の幹も
なんか太くなって

冷房の効いた部屋で
天津飯をたべてても
夏は終わるんです

当てずっぽうの言葉を
ちぎって投げたような夏が
秋の足首を引っ掴んで
井戸にひき摺り込もうとしています

何も始まらない
はずかしくな

もっとみる