『ランウェイで笑って』

マンガです。今14巻まで出てます。テレビ放映もやってます。

千雪みたいな情緒豊かで、一本筋が通ってて勝気な女性が好きです。

実はキャリアのスタートはアパレルでした。オーダースーツの販売員。接客して採寸して納める。フィッター的な。路面店のないOEMのイージーオーダーとパターンオーダーの会社だったけど。

別に服が好きで、お金があったら大半を服に注ぎ込むような服好きではない。仕事にしたからなのかわからないけどスーツ、ドレスに関わるものは好き。

服の面白いところって服そのものに絶対的な力がないというところ。ある人によっては人生を変えるほどの力があったりするのに、ある人によっては視界にも入らないレベルで不要だったりする。場合によっては最高のパフォーマンスをしてくれるのに、違う場所ではヒンシュクを買うこともある。ずっと嫌いだったのに、何かのきっかけである日突然好きに、よく思えたりする服もある。服そのものは何も変わっていないのに、着る人、着るシチュエーション、着るタイミングで全然評価が変わるもの。そういうところに服の面白さを感じる。

TPO的なことも大事だけど、このマンガを読んでという意味であれば、やっぱり服にはチカラがあるということ。

もうこれは出会えたかどうかで感覚が180度違うのだけど、やっぱり人生を変える力がある服というのは存在する。万人の人生を180度変えるという意味ではなく、その人が、そのタイミングで、その時であったから、180度変えることができるっていう、すごい微妙なバランスの上でしか成り立たない力。だからピンとこない人が多い。もしかしたら一生出会わずに終わる人もいると思う。

でもお店でラックにかかった服を手に取った瞬間、試着室で着替えてちょっと恥ずかしかった瞬間、買った後絶対明日着たい!と思った瞬間、初めて着て出かけた日に誰かにそれいいじゃんと言われた瞬間、だぶんきっと一回くらいは感じたことがあると思う。あってほしいと思う。それのもっと強烈なもの。どっかの瞬間でこれを着たら自分は変われると思えるような。そう思わせるだけの力が服にはある。嘘ばっかりと思うのであれば、それはきっとそういう服に出会ってないだけ。

そういう服に出会えた人は、信じられないくらい自分に自信がつくし、他の誰よりもその服を着こなす。着た人も引き立つし、服そのものの引き立つ。そうなればもう敵なし。無敵。

なんというか、非常に理解できるのだけど、なんとなく服を買うときって、ありきたりでつまんないか、気後れするかのどっちかだと思っていて。完全に日常の一部で、着た自分も想像できて、別に買っても買わなくてもどっちでもいいような服。生きてくためには必要だけど。そういう服は確かに買っててつまらない。消耗品だから。
逆にこんなの買ってどうするの?と思っちゃう服。お店に入るのも躊躇する服、手に取るのもビビる服、試着してみたものの試着室から出る勇気が出ない服。そういうのもある。そういうのは気後れが勝ってる。

そうじゃなくて、ちょっと怖い、不安、でも着てみたい、着た自分を想像したらなんだかワクワクする、そういう期待半分不安半分の服というのが絶対ある。見た瞬間、着た瞬間にこれ!と思うこともある。そんな服絶対ないって思うかもしれない。でも絶対ある。でも見つからない。その人の生活状況、その日の気分で見え方が全然違うから。たいていの人は服探しに人生を賭けたりしないから、ほしいなと思ったシーズン中に見つかることはほとんどないと思う。たいていはまあこれでいいやと妥協で買う。そしてシーズンが変わればラインナップも自分も変わるから前シーズンに探していたものがあったとしてもそのシーズンほしいとは思わない。

そのくらい服を見つけるというのは難しいことだと思っている。だからこそ販売員はその仲介人として必要だと思う。販売員上がりだからかもしれないけど。確かにお似合いですよとしか言わない販売員もいるけど、ちょっと背伸びをしたお店に行けばもっと真摯な販売員がいる。いないときもあるけど。

服は誰かに媚びるために着るわけじゃない。

自分が自分で在るために着る。
自分が何者であるかと知らしめるために着る。

踏み出せなかった一歩を、言えなかった一言を、服は前に進むための力をくれる。決して背中は押してくれない。力をくれるだけ。

読んでいてそんなことを思ったり、思い出したり、やっぱり服が好きというか、ちゃんと選びたいな、妥協で買いたくないなと思ったマンガ。新刊が出たら買う。


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