理系でもない四十半ばのオッサンが乙四の資格を獲るまで
まず、自分は何故にこの資格所得を目指したか?
ズバリ、当時の会社に不満を抱いていたからです。
動機は実に不純だった
昨年秋頃のこと。
会社から「通信講座のおしらせ」なる冊子が配布されました。パソコン関連や英会話等々を、会社の補助を受けて学べる、と。もっともこれは毎年のように配られてて、つまりは
「仕事にも役立つようなスキルを身に着けて、能力向上を目指そう!」
という、よくある啓蒙活動だよなと。
それでも冊子をパラパラ捲ってみると、なるほどこんなコトが出来れば良かろうなぁ、とは思えどそれ以上の意欲は沸かず。ただ我が家から古紙のゴミが少し増えるだけでした。
しかし、なぜか昨年秋は違いました。
当時は交代勤務で、時に早朝、その翌週は深夜までと不規則な生活が続いてました。それで特に褒められもせず、貰えるモノが多少増えたところでほんの数万違うくらい。こんな形でしか報われない生活にとにかく嫌気が差し、毎日どこかで必ずイライラしてました。
そこへ例の冊子です。これで学んで、何か変わるもんかねぇ……
と、目に飛び込んできたのが「危険物乙四種」でした。
「この資格を持ってれば、食いっぱぐれることはない」
そんな噂をどこぞで聴いたのを思い出しました。でも具体的にこれで何が出来るわけ? ネットで検索。
……ほほう、工場の危険物取扱者、ガソリンスタンド店員……
「タンクローリー運転手」
え、これも乗れるの?
俺、大型免許持ってるよ? いけるじゃん!
そう、当時の自分は
「もしもこの資格が獲れたら、こんな会社辞めてやろう」くらいの気持ちでいました。
もちろん両者の免許を所持してるからといって、未経験者のオッサンが即採用されて今よりずっと稼げる、なんて保証はどこにもありません。でも獲りたかったのです。
そもそも「報われないこと」への不平不満やイライラを抱えていたのは、ひとえに「嫌気が差したその衝動で辞めても、その先に何も無い(選択肢が少ない)」からじゃないかと。
なら、やってしまえ。45歳の手習いだと。
ただ、かつて自分は進路で文系を選び、長らく理系とは無縁のトコにいました。大学も「得意科目が地理だから」と某大学の地理学科に進んだものの、思いのほか理系要素(特に数学)が多くあると後になってから気付き悔やむ日々、からの挫折。何とも苦い思い出です。
なので、乙四の場合ははたしてどんな勉強をすればいいのか? 全く未知の分野へ飛び込むようなものでした。
実際「乙四の講座を受けます」と上司に伝えたところ、えらく驚かれました。そりゃそうでしょう、勤め初めて十数年、今まで一度もそんな講座を受けてないのですから。
我ながら、動機は不純で何とも単純すぎます。こんな感じで挑戦は始まりました。
とにかくいろんな勉強を試してみた
勉強のスタートは今年の初めとし、目標を「6月の試験」と設定しました……なぜここまで長く期間を置いたかというと、最初に受け取った某通信講座のテキストがとんでもない情報量だったからです。
このテキストを最初に読んだ印象は
「これを全部頭に入れておかないとダメなの?!」
でしたから。
直近の試験は同年度内にあったものの、二、三ヶ月の勉強で太刀打ちできる内容とは思えませんでした。なので「半年後」としたのです。
また基本情報として、乙四の試験は
「法令」15問
「物理化学」10問
「物質の性質及び燃焼と消火」10問
この3分野に関する知識が問われるうえ、合格ラインは「全ての分野で正解率が6割以上であること」。
なので、3分野の中で2分野が100点満点だったとしても、残り1つが正解率5割だったらその時点で不合格。必要な知識を万遍なく押さえていないといけないのです。
おまけに、聞くところによれば合格率は3〜4割程度だ、とも。そんなに難しいのかよ? と。
「万遍なく、か……」
勉強用のノートまで揃えて自分その気にさせておいた分、やるしかあるまい。と腹をくくりました。
当初は「渡されたテキストを元にして、自分が納得出来るようにノートにまとめる」てなやり方でした。進行は一日数ページくらい。しかしそれを一ヶ月も続けて、ようやく100ページくらいは進められました。
ただ、この方法は本当に進行が遅いです。千里の道も一歩から、とはいうものの千里までが長い!
なにせここまでやって「物理化学」を終えてようやく「物質の性質及び消火」に入ったトコ。法令にはいつ手を付けられるやら。
……いや、それ以前に通信講座のテキストがお硬いのです。そのせいには出来ないけど、上手く整理するだけでも一苦労。もっと分かりやすいのが欲しい!
そう思ってネットで検索をかけると「この二冊を合わせて使うのがオススメ」との情報が。
10日で、というのは流石にオーバーですが、フルカラーの図説付きで基礎となる情報はほぼ押さえてあるため「分かり易さ」で勝負してるテキストですね。入門書的なポジションと言えます。付属の「丸暗記ノート」はその基礎情報だけを抜粋して収録。「これだけで受かる!」てのもやはりオーバーですが、法令の基本はかなり覚えられたかな。
分野別に細かく実践問題を収録。見開きで左ページに問題、右ページに答え・解説の構成はとても見やすく、問題文のニュアンスや問われ方を頭に刷り込むには丁度いいかも。模擬試験も含めて、これをリピートしながらどんどん解いてくのが良いと思う。途中に収録されてる「分野別まとめて要点チェックのまとめ」はかなり役立つのでオススメ。
さらにこの一冊も。
たまたま観たショート動画「試験勉強は過去問に始まり過去問に終わる」の一言を受けて購入。そのものズバリ過去問を収録してるが、とにかく「収録する」にこだわった本で、ゆえに少々答え合わせのしづらい構成なのが難点か。なれど問題はモノホンで「これ、他の本でも出てきたな?」→それだけ頻出だ、と分かったこともしばしば。
で、こうなると最初手にした某通信講座のテキストは出番が無くなったようにみえますが、問題を解き続けていると
「こんな知識、どこに載ってたっけ?」
となることがしばしば。で、よーく読んでみると先の2冊には無かったけど某通信講座のやつにはあったとか。どれだけ枝葉末節まで載せてんだと思いましたが、それだけにこの某通信講座テキストは入門書として実に不向きという印象しかなく、補完的に使うのがいいのかもしれません。
書籍はこんなトコでしょうか。
解説動画は「ながら聴き」
さらにはYouTubeも活用。解説系はいろいろあったものの、一番聴きやすかったのはココでした。
とりわけ「耳で覚える」シリーズは何かをしながらラジオ感覚で聴けるので、車の運転中はひたすらリピート。「『あ、エサ』とグッピーが言った」「精一杯、外・内・外タンク」「リアカー無きK村、動力馬力するも暮れない葛藤」。何のこっちゃでしょうがコレ全部語呂合わせで、何度も聴きつつ問題集をリピートしてると、不意にこれが浮かんできて解けるようになってましたね。
車通勤の時間を上手いこと勉強にも充当出来たのはここのおかげです。あと「精一杯、外・内・外タンク」は法令関連の語呂合わせですが、かなり応用が利くので暗記の際は助かりました。
これらを交えて半年間……といいたいところですが、4月〜GW頃まではいろいろ予定が入ったためゆっくりモードに。明けてから勉強を再開させ、6月は完全に追込モード。なおウマ娘を始めたのがそのゆっくりモードな時期だったため、遊びたいという誘惑にかられながらも
「このページまでやってから!」「◯◯時までは勉強!あとはプレイ!」
と言い聞かせながらの生活をしてました。忙しいのか暇なのか。
そこから「アウトプット」してみる
これで100%仕上げた……といいたいところですが、さらに一歩突っ込んでみました。
勉強期間中のつぶやきで「説明する勉強法」について触れました。いわゆる「ファインマンテクニック」というやつです。
ある物事の理解度を確かめるには、
・誰かに説明するように語ってみる
・またはその物事について説明文を書いてみる
→足りない部分や間違ってる部分があったら、そこを復習して覚える
といった作業の繰り返しです。ここでは勉強当初に買ったものの、途中から使わなくなったノートが役立ちました。あとこれはパソコンやスマホに打ち込んじゃ駄目です。やっているうちに間違いなく勉強から脱線します。声に出すなり書くなりして、完全に別動作でやるのがいいかと。
法令や物質の性質を覚える際にこの方法はかなり使えます。物理化学も同様に、暗記が必要とされてるトコは押さえておく。ただ全て万遍なくカバーできたかと言われると、どうだろう? という感もありました。
もう悪足掻きはよそう、やれることはやったし、これでダメならよっほどどこかで勘違いしてたんだろう、と。試験一週間前はそんな気持ちでした。
そして試験当日……
あいにくの雨。しかも時々雨脚が強まります。
それでも試験会場には続々と人がやってきます。いざ部屋へ入ると番号100何番まで席がズラリ。着席して周りを見ると所々に歯抜けが。自分の隣も空席です。
他の方のnoteで読みましたが、申込みこそしたものの、試験当日に来る人は全体の8〜9割程度だとの話も。周りに薦められたけど、やっぱり無理だわ……ていう方、結構いるんでしょうね。まさか例の某通信講座テキストを読んで匙を投げちゃった人とかいたりして。だとしたら今日来れただけでも偉いよな、うん。
試験内容は書いた通りで、時間は120分。確か開始40分後から途中退席可だったはず。
で、手応えとしては……
・法令
・性質と消火
どちらも自信アリが8割程。あとは消去法で「これは違う……これも……だとするとコレか?」で答えを絞り、とにかく運任せにならないよう考えた。勉強後半のファインマンテクニックが効いた感強し。
・物理化学
これが一番の懸念事項だった。自信アリが5割で、他があやふや。というかテキストにこんなの載ってたか? 予想問題集でこんなの問われたっけ? そう来るか、という印象。それでも、今までの勉強で得た知識&情報を総動員して必死に解きました。苦労しましたが、自分にとっては1つだけラッキー問題があった。あれは助かった。
アレコレ考えて90分。気が付けば、既に会場では半分以上の方が退出済み。最後にマークシートを見直して、
(……うん、もうこれ以上は考えようがない!)
試験終了となりました。
駐車場の車中。
物理化学であやふやだった部分が、とにかく気になってしょうがない。しかし確認するのも何か怖い。それでも、恐る恐る参考書とネットで確認してみると……
(……どうやら合ってる、のか?)
これなら何とかなるかも、という気分に。全て満点取る気でいたけど、もし落ちるとしたら原因は物理化学だろう、と予想。
後は発表を待つだけに。当日は正午、消防試験センターのサイトに合格者の番号が公示されます。その後改めて全員に合格・不合格問わず通知が来るとのこと。緊張こそしませんでしたが、しばらくの間はほんの少しだけソワソワしてましたな。
そして、結果発表
迎えたその日。
公示のページを覗いてみます。俺の番号はあるのか……?
あった! 一発合格!!
そして後日届いた通知にビックリ。2科目が満点! うっかり一問くらい落としてるかと思ったら完璧でした。
そして物理化学は8割。懸念してた通りでしたが、ボーダーを十分上回る成績なのでヨシ。当日考えに考え抜いたかいがありました。
今までほぼ手を付けたことのない分野の資格に挑み、一発でパス出来た。
一つ自信が付いた気分です。
じゃあ、最初に書いたように資格取れたから今の会社辞めるの? とはならないんですね。イライラしていた昨年秋頃とはちょっと状況が変わり、幾分かマシになってます。なので「今辞めるのは得策じゃない」よな、と。
ただ、辞めてもその先に何も無い……てなことはなくなった、と思えるようになりました。
動機こそ不純でしたが、そもそも自分は7年前に「マニュアル車に乗りたくなった」ことがあり、その理由が転職先でMT車があった時に困らないようにするためでした。それが今ではすっかりMT車にハマってます。
きっかけはなんだっていいんですよ。自分の身に付くもの、役立つものであれば何だって。この資格がいつ活かせるは分かりません。しかし、獲ったおかげで、普段見慣れた光景がちょっと違って見えてくるようになったのは確かです。
とりあえず、乙四合格の件は会社に報告しておかないと。きっかけはここを通じて始めた通信講座ですからね。どんな顔されるやら。
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