漫画『まいまいまいごえん』~子供達の「心の闇」と王道パニック・サスペンスが錯綜する群像劇~
「公式が狂気な漫画」と紹介されてたので、試しに読んでみたら驚くほど黒いサスペンスだった。「まどマギのようだ」の評もある通りダークファンタジーという言葉が似合う。
ピューロランドへ遠足に来た16人の子どもたちと2人の保育士が、ひょんなことから迷い込んだ謎の遊園地「ゆぅろぴあ」で繰り広げる人間ドラマだが、この16人の子どもたちが一癖も二癖もあるうえに、中には相当ませているガキンチョもいたりする。最初の方こそ主人公の大人(=保育士)がガキンチョに振り回されてしまう様子に同情してしまうが、彼等が「ゆぅろぴあ」に迷い込んだ後「ここは普通ではない」と気付き始めてから空気が一変する。
かの『バトル・ロワイアル』のごとく一人の子供がゲームオーバーになった途端「心の成長痛」……登場人物にとって「痛い」部分を突いてくる物語と化する。
例えば園内にあるアトラクション「キラキララビリンス」は一面鏡の迷路だが、ただの鏡ではなく普段の自分の裏返し=「深層心理」を映し出されてしまう。16人のガキンチョの中でも、ヒーローに憧れいつでもリーダーぶっているシンタや、クールで一匹狼的な存在のハヤテといった目立つ登場人物ですらその「深層心理」を露わにされ、あまりの心の痛みに打ちのめされてしまう。挙句の果てには1巻の時点で精神的にぶっ壊れてしまうキャラクターまで出てくる。誰とは書けないが、あまりにも責任感が強すぎた結果なのだろう。
それゆえ心の成長痛どころかえぐりに来ているので、読んでいるこちらも痛くなってくる。だが心理描写については先に書いた「一癖も二癖もあり中にはませている」部分が生きており、物語の序盤でガキンチョ達が小生意気に見えれば見えるほどより痛く感じられるのだ。
かと思うと、性格的に掴みどころのないガキンチョが非常事態と思える状況下で予想外の活躍をしたりと、ちゃんと群像劇の様相になっている。しかもその性格ゆえにその判断を下せたうえ、事態解決への情報を読み取れたりするのが心憎い。この非常時におけるサバイバル要素はあたかも王道のパニック映画のようであり、そんな点でもこの漫画には好感が持てる。
かくしてガキンチョと大人は、ときに心をえぐられながらも互いに協力し合い、この「ゆぅろぴあ」から脱出しようと必死に戦う。しかし1巻の最後では(即電子版を購入)さらに登場人物の心が折れそうな展開も待ち受けており、加えて遊園地そのものにも裏がある様子が描かれ、それでいて『バトル・ロワイアル』のようなサバイバル風味もある。16人分のドラマはまだ完全に描かれていないので、今後の展開も気になる。なかなかの漫画だ。
可愛らしいのに話はダーク、もはやブラックファンタジーと呼んでもいいが、これでサンリオ公式なのは驚くばかり。いや、かつてダークな絵本『チリンの鈴』(原作:やなせたかし)をアニメ化したサンリオである。決しておかしくはない。これは
「夢や想像は必ずしも楽なものではない」
というメッセージなのだろう。きっとそうに違いない。