『妖星ゴラス』と『海底軍艦』について少し書く。
『妖星ゴラス』(1962)
黒色矮星・ゴラス。質量は地球の6000倍という恐るべき星が、その地球めがけて飛来してくる。人類はこの危機を回避すべく、あらゆる叡智を結集し、なんと地球の進路を変えるという一大作戦を敢行した。その行方は……
中国だと『流転の地球(流浪地球)』というSF小説がベストセラーになってて、滅びゆく太陽から逃れるため地球を別の恒星系へと移動させる、というお話。2019年には映画化もされて大ヒット、昨年にはその前日譚にあたる作品も封切られたとか。ゴラスの上映も、まるでそれを見越したかのようなラインナップとなりました。
とはいえ本作(ゴラス)公開当時は冷戦の真っ只中であり、前年には『世界大戦争』で核戦争による人類滅亡が描かれたほど。そんな状況下で作られた、世界人類が一致団結し、平和的に原子力を使用して地球の危機を救うという壮大な夢。果てしなく遠い理想郷のような物語ですが「こうだったらいいなぁ」を突き詰めるとココまで辿り着くんです。こんなご時世だからこそ、こういう映画も良いと思います。
それを本編及び特撮の両面で、堂々の絵面を持ってして描く。『地球防衛軍』のド派手な一大科学ガチバトルとはまた違う「空想科学」を描いた一本です。
『海底軍艦』(1963)
海底人・ムウ帝国による地上侵略が始まった。遥かに優れた科学力を持つこの一大勢力を前に、人類は為す術もない。これに対抗し得るのは、かつて旧日本海軍が建造計画を立てた海底軍艦「轟天」だけだ。そして轟天は、南海の孤島で終戦を知らない者たちによって密かに建造されていた……
ゴラスの翌年にこれです。この時期の東宝特撮は大忙しで、ゴラスの同年には『キングコング対ゴジラ』、そしてこの年は『太平洋の翼』『青島要塞爆撃命令』『マタンゴ』と来て、さらに64年の正月映画で『士魂魔道 大龍巻』と本作です。休む暇がありません。それでも作ってしまうのは、よほど特撮に賭けてたとしか。ちなみに64年は辰年だったため、東宝が出したお正月映画ラインナップ紹介の年賀状には、海底軍艦とともにムウ帝国の怪竜マンダがしっかりと描かれてました。ただ「映画祭」での公開は2025年なので、これでは巳年になってしまいます。ちょっと残念ですね。
それにしても「終戦を知らない男たち」というと、何か『ゴジラ ー1.0』を思い起こさせます。もちろん「終戦を知らない」のと「俺の戦争がまだ終わってない」とでは全く別物ですが、『海底軍艦』で轟天号を造り上げた男たちからすると、本当の意味でまだ戦争が終わっておらず、例え日本が負けていようとこれで世界を変えられる、と信じているわけです。
最終的には「かの戦争で自分たちが出来なかったことを、ムウ帝国撃滅という任務で果たす」というカタルシスに繋がるのですが、初見時はそこに至るまでの「溜め」な要素がもっとあってもいいかな、という印象でした。再見するとまた違って見えるでしょうか? 気になります。