追いかけて行った先で
大学時代付き合っていた彼はワタシよりふたつ年上だった。
サークルの先輩であり、学科の先輩でもあったその人が就職したのは大阪の会社。だから遠距離なんて縁がないものだと思っていたのも束の間、彼の会社は合併し、そして彼は東京に転勤になった。
東京に向かう彼を見送るため、新大阪のホームに向かったあの日のことはまったくもってこれっぽっちも覚えてはいない。
なんでだろう。なんでかな?
涙涙の感動的な別れだったと思うんだけどおかしいなぁ。
と、一旦それは置いといて。
月日が流れ、ワタシは関東のとある会社に就職が決まった。
卒論発表も終わり、無事卒業が決まって引越しの準備もせずに遊び呆けているワタシに「あんた!この時期は引っ越し屋さん混むからはよせな知らんで!」とガチギレマジギレしつつも業者の手続きをしてくれたオカン。あなたのおかげで、向こうに到着後無事にすぐ荷物を受け取ることができました。
あなたがいなければ、何もない部屋で次の休みの日まで辛い日々を過ごしていたことでしょう。本当に感謝しています。娘より。
とまぁ、色々ありつつも無事に関東暮らしを始めたワタシ。そして数年後。ワタシは晴れてめでたく結婚することとなった。
そして手続きのなんやかんやの為に人事課に報告に行った時のこと。
「結婚することになりましてー。」
そう口にしたワタシにふたつ上の人事の先輩はニヤニヤしながらこう言った。
「おをー。おめでとう〜。(ワタシ旧姓)さん、結婚するんですね。実は僕、(ワタシ旧姓)さんの彼、知ってますよ!僕と同い年ですよね!」
ワタシの所属していた会社と彼の所属していた会社は系列会社。なので色々な研修なんかでそれぞれの会社の人間が出会う機会も多い。そういった繋がりからか彼と人事の先輩には共通の知り合いがいて、ワタシとお付き合いしていたことをワタシが入社した頃から知っていたそうだ。
いやいや。そんな事知られてるなんて恥ずかしすぎるんですが……。
が、しかし。
その情報は間違ってはいないけれど、正解でもなかった。
なぜなら、ワタシが結婚するお相手はその人ではないのだから。
「あ、残念です。ハズレですね。相手はその人ちゃいますよ」
そう言った瞬間の先輩の顔は今でもハッキリと思い出すことができる。先輩。親しみやすい人ではあったけど、まさかあんな反応をしてくれるだなんて思ってもみませんでした。
「何もかもお見通し!」っていう見せ場をぶち壊してごめんなさい。と思いつつも、こちらとしてはもっと前段階の、もっと若い時分の雑談ででも彼を知っているということを言っといて欲しかったと思わずにはいられない。なんか恥ずかしいですやん?
と、まあ、そんな経緯があったワタシの人生。あの時、関東の会社に就職しなければ今の旦那とは出会う事はなかったし、今の子供と会うこともなく全く違った人生を歩んでいたんだろうなあ。
人生において「if」の分岐点は山のようにあるけれど、思い出を遡って辿って行くと全ての分岐はそうなるように、初めからこう流れるように出来ていたかのように思えるから不思議だ。
渦中にいる時は先なんかまったく見えないし、周りは敵ばかりなように感じるけれど、振り返ってみれば全部必要なことだったのだと感じられる。
何も考えず思いつきで行動したことさえも、未来に立ち振り返ってみれば、そうするべきことだったと思えるのだろう。
深く考えられず、思いつきだけで生きている自分が時々どうしようもなく嫌になるけれど、でも、ワタシがこうあるのが未来のワタシにとっての必要条件なのだろう。
だからこれからも、自分の選んだことを信じてやっていこう。頑張れワタシ。