出会い18~懺悔

森には朝もやがかかり、木々が鬱蒼としていた。ここのところあまり眠れていないので、日差しのないのが、かえって有り難かった。

とぼとぼと歩く道のり、目の前を歩く村長(むらおさ)の姿を見掛けた。社に向かうのか?普段とあまりに違う荒んだ姿に目を疑う

遠目にも、髪も着物も荒れ放題なのが、わかる。余程辛かったのかと、心中察して余りある。

行先は同じの様だが、足を早める気にはなれなかった。

社には白兎とあの八枝の角を持つ鹿が待っていた。藁が敷かれ私達は順に座った。まだ、来るのか、靄を抜けてきた人に驚いた。

異母弟様だった。驚き眼を丸くしていると、察して、兄上の代わりじゃとポツリと言った。

最初は村長の懺悔から、始まった・・・私は隣村のお舘様と同い年、産まれた時から比べられてきた。

占い婆は、かの御仁は幼少より勉学武術、馬術において右に出る者は出ない。そして、未来はもっと輝かしいものと成るだろうと

あんまりだった。神々の森を守る小さな村と常に戦に負けることのない隣村。

人徳、名声を欲しいままにしたかの御仁はこの世の者とは思えぬ美しい娘と結婚すると言う。

我慢の限界だった。

比較され、至らぬ自分に勝手に腹をたて、善からぬ企みを考えた。

それが戦で混乱している最中に娘を連れ去ること。占い婆は、かの女性は神の子を宿す奪ってこいと唆した。

最初は聞く耳も持たなかったが次第にチャンスさえあれば、私も神の子の父になれるのではと錯覚した。

白兎はなにも言わない。懺悔は続いた。

そして、今回権蔵を死に至らしめたのは自分である。

卑屈な私の心をあの子は写し取った。権力と知恵さえあれば、戦などせずとも出世出来ると信じ、戦地においては死体に隠れ生き延びる卑怯者となった。

そして、今回熊が権蔵を連れ去ったのは、彼が熊の肝を持っていたから、強くなりたいと熊の胆をさらしに隠し食べていたのだ。

だから、連れていかれた。熊にしてみれば連れていかれた子に会えたと思ったのだろう。まだ、死んだ権蔵を抱えているやもしれない

これがすべてである。誰かの思惑が様々な人の人生をここまで狂わせたといえるかもしれない。

ここまで聞いて初めて、うさぎは重い口を開いた。








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