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香り立ち…花揺れて…


ちぎれた雲に意識を乗せて

瞳を閉じて五感澄ませば

季節に咲く花見えないままに

風立つ香に尽くす命の

ただたまゆらの風に触れ

満ちゆく命の儚さとて

哀れる心は持たぬまま

花は己の美を知らぬもの…

誉めて美を見て香を楽しむ

花への礼儀はそこにあり…


そぼ降る雨の灰色雲の

下に漂うちぎれ雲を

目で追い視線を落としてみれば

初秋の雨に打たれつつ

歩道の端で慎ましく

佇む小さな秋桜を見た…





秋桜の花が静かに揺れてるのを見て


あの日旅支度をした貴女が


揺らしているように思えた…




長い長い終わりのない旅

彼岸花が記す道を

迷わずにいてと呟いた日を

ふと思い出した雨の朝…


貴女が好きな秋桜を見つめながら


片付けられなかった感情は

いつの間にか温かい想い出に変わって

貴女の残した片付けられない荷物には

想い出がたくさん見えてくる…


桜の花びらのおまじない

水をすくった手のひらの黄昏や

夕立に濡れた夏の日

水着の日焼けをなぞる指

彼岸花にあの日を見て

舞い散る紅葉を追いかけて

白い世界に凍えながらも

貴女の深い心に温もりを感じていた冬…


残した後悔に虚しく責めた想い出の

感情が雨とともに流れたあの日も

ちぎれ雲が灰色の雲の下を漂っていた…



ちぎれ雲と秋桜を見たそんな朝は

生きている私の日常のひとこま…


ちぎれ雲生まれ消えゆく儚さを一期一会に花と重ねて

      
    安桜芙美乃



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