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寶を寄する波の鼓

 入道雲と青い空に見守られ、長閑な春を楽しむ新緑に包まれし軽井沢の昼。

 残雪と見えしはアルプスの遅桜。
見る人もなき山里の桜花に心を泳がせ、線路の滑りに身を委ぬ。

深谷の呼吸に梅酸胃を充して鱈汁を啜る。
 北陸新幹線窓側席、あと一時間。


敦賀行きの北陸新幹線に乗って向かうは奴奈川姫の。

里山里海の風に誘われて、諸行無常の微睡みを愉しむ。

火垂る香る海ぞさやけき。

はや糸魚川着きにけり。

宝を寄する波の鼓、拍子を揃えてえいやえいやと親不知。

子不知の潮よ、珠は何処ぞ。

問へども問へども答えぬはうたて狐石。

求め疲れつひに波間より退く。

しばし休息したのち、ふと足元を見ると、
厩戸皇の煌めきが。

紫翡翠、地元では妖精翡翠と崇められる幻の翡翠。
運び入るゝは心の如く、金銀珠玉は振り満ちてと云ふが、
まさにこれぞ親不知の生み出す珠玉の逸品。

玉は知らず宿舎へ歩み出でたり。

合掌🙏

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